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第二話 空腹の時、何でも美味しそうに見えてしまうのはAIの性でもある

 こんな小説でも、読んでくださる方がいると、頑張ろうと思えます!

 俺は都市の外れにある河川敷に寝そべり、空を見上げていた。俺の心(あるのかどうかは、置いといて)に浮かぶのは、

――――――帰りたい。

その思いだけだった。

 この数時間さ迷って、わかったことがいくつかある。

 1つ目。俺は異常に記憶力が良いこと。

 この狭い河川敷にたどり着くまでに、何十何百もの道を通り様々なものを見聞きしてきたのだが、目を閉じればまるでそこにいるかのように、それらをありありと思い浮かべることができる。

 繁華街に光るネオンの文字の一つ一つ。すれ違った人の顔、表情。さらには、彼らが話していた内容まで・・・・。

 これは、おそらく元々AIであることが起因しているのだろう。プログラムというのは一度保存したものは故意に消さない限り、忘れることはないものである。

 そして、2つ目。どうやら俺には・・・・それ以外に何のとりえもないこと。

 ネット上の情報の中には大量のライトノベルもあった。それらでは、かっこいいとはあまりいえない主人公が、何らかの特殊能力を駆使し、なぜか女の子に異常にモテていくというものが主流である。

 その影響だろうか。別にモテたいわけでも、ハーレムを作りたいわけでもないが、俺も密かに異能力というものに憧れを抱いていた。この現代社会に俺TUEEEEもクソもないとは思うが、それでも他の誰も持っていない自分だけの特殊能力とかが欲しかった。今時記憶力が高い奴なんて、小学生にもいる。元AIなら、ありえない話じゃあないはずだ。

 まあ色々と語ってはみたが、つまるところ俺は隠された潜在能力でも持っていない限り、今のところ普通で真っ当な人間であるのだった。・・・・・・犯罪を犯している時点で真っ当もなにもないとは思うが。

 更に言ってしまえば、この世界に転生(?)してからほぼ丸1日が過ぎ去ろうとしている今、俺の空腹は限界に達しようとしていて、もはや歩くのもしんどい状態である。だというのに今現在俺の所持金は0。

 そして、そんな俺に現実は優しくなかった。俺は河川敷のゴツゴツとした感触を背中に感じながら、いたずらに時間が過ぎ去っていくのを見守っている。動かないのではない。動けないのだ。

(腹、減った・・・・・・)

ふと、データの海を泳いで過ごすだけの、つまらないが悠々自適な生活を懐かしく思った。

 このまま、餓死したらデータに還れるだろうか・・・・そんな危険な考えまでもが首をもたげてくる。

 半ば自棄になり目を閉じてそのまま眠りに体を委ねようとした俺にかけられたのは


「生きてますかー?」


 妙に間延びした呑気な声だった。


(何だ・・・・?)

声の主―高さからして女性である―は、返事がないのを訝しんでいるのか、それ以上なんの音も発していない。

 俺はというと、そもそも今の声が自分に向けられたものであるのか判断がつかないため、無言を貫きとおしていた。

 長い――おそらく数十秒であったんだろうが――時間が過ぎ去り、ようやく沈黙を破ったのは、再びあの呑気な声だった。

「あの~・・・・ホントに死んでるんですか? えっと・・・・ボロボロの服着たそこのおじさんに聞いてるんですよ~。」

悪かったな、ボロボロで。あと、いくら年齢不詳とは言ったものの、おじさんと呼ばれる外見ではないはずだ。(多分25ぐらい)

 この河川敷には俺の他に確か数人の人がいたが、その中で彼女の言う条件に当てはまるのは俺だけだった。これではっきりした。つまり彼女は俺に問うているのだろう。

 そこまで確認した俺は、ようやく口を開いた。

「・・・・さっきから俺に聞いてるんだよな?」

「あ、生きてたんですね。よかったです。」

ようやく返事をした俺に、彼女は嬉しそうに言った。(俺は未だ目を閉じているので、彼女の顔は見ていないが声の調子から、おそらく喜んでいるのだろうと思う)

「えっと、実はですね・・・・テオさんに頼みたいことがありましてですね」

・・・・・・唖然としてしまう。たった一文の言葉に、ここまで突っ込みどころがあるのは、逆にすごいのではないだろうか。

(テオって誰だよ! ていうかお前は何なんだよ!! 俺たち初対面だよな・・・・頼み事をする仲じゃねえだろ――!!)

現実世界に来て以来、これほどの感情の爆発はなかったと思う。

「まず・・・・」

何やら、勝手に話を進めようとしている女性の姿を確かめようとした俺は、目を見開き――そのまま固まった。

 その女性は、俺の顔を覗き込むようにして膝を抱えしゃがみこんでいた。肩につくぐらいの長さでカールした、少しくすんではいるが優しい色をした茶髪がわずかに吹く風にそっと揺れている。

 優しく細められた目。それを縁取る睫毛は長く、上向きに整えられている。鼻筋はすっと通っているのに、それでいてキツそうなイメージが全く無い。極めつけはその肌の白さで、まるでいつ空気に溶けて消えてしまってもおかしくはないような儚さをたたえていた

――綺麗だった。彼女は俺が想像していたよりもずっと美しかった。

「・・・・・・」

「どうかしましたか?」

突然目を見開き、そのまま固まってしまった俺に彼女が不思議そうに訪ねる。

「ぁ、えっと・・・・」

気まずくなりそっと目をそらす俺。

「あ! 分かりました。お腹がすいてるんですね?」

・・・・なんで今の流れでそうなるのだろうか。まぁ、腹が減っているのは事実なのだが。

 彼女は何やら手に持っていたバックをごそごそとあさると

「これ、食べてください。」

嬉々としてあるものを差し出した。俺は再び固まってしまう。そのあるものとは、俺の目と情報が正しければ

 犬用の食料―――ドックフードだった。


なんか、変な方向に行った・・・?

みたいに思われるかもしれませんが、一応伏線?的なものです。

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