8話
【そなたが我を呼び出した者か】
俺は混乱している。発現の詠唱を行ったあと、突然白い光に包まれ、数秒後に白い空間にいた。そして俺の目の前には銀色の光を発する光がある。そしてそこから声が聞こえてくるのだ。こんな話は聞いていない。俺の担当はなんとカーラ様だったが、カーラ様から聞いた説明ではそのようなことは言っていなかった。
その声は女性の声だった。そして非常に高貴な雰囲気を感じる。そして一番感じるのは…そう、圧倒的な存在感である。
「あなたは…?」
思わず俺は敬語になってしまう。この銀色の存在は非常に高位なモノ…。そう感じたので自然と敬語になっていた。
「そう畏まらなくともよい。なんせ私の主になる者であるからの。自己紹介といこうか。我は剣の覇王、グラディウス。すべての剣士の源流なり」
グラディウス?グラディウスってどこかで聞いたことある…。あ、俺が小さいころに両親に聞かされた神話ででできた勇者だ!
「俺の名前はシルベール スターレインです。お目にかかれて光栄です」
「うむ、良い名前じゃ。してシルベール。聞きたいことは沢山あろう。それはまた後に聞いてやる。我はそなたに問う。そなたにとって剣とは何か?」
その質問に俺は思わず黙ってしまう。剣とは何か?戦いの手段か?人殺しの道具か?それとも人を生かすための道具か…?
分からない。まだ、俺の中では剣とは何かという問いに対する答えは無い。何故剣を握っているのか。才能に恵まれたからか?戦うのが好きだからか…?分からない。
「ふむ。その顔はまだ分かっておらぬようじゃのう。まあよい。最初に紹介した通り我は剣の覇王。何人たりとも我に勝てぬ。かすりもさせんわ。しかし、まだそなたにその力を使いこなすことはできぬ。先ほど我が問いかけた問い。その答えを見つけたときに、そしてそれが我のと共鳴したとき、そなたは我の心の力を使いこなすことが可能となる」
心を読まれたか。思わず苦笑してしまう。
「俺はまだ、答えに辿りついていません。なんのために剣を振るのか…。なぜ、そんな俺のもとにあなたが?」
「それも教えてはやれぬ。いずれ、理解する日が来よう。それまでのお楽しみじゃ」
そういったグラディウスはぺろっと舌を出した。意外とグラディウスはお茶目なのかもしれない。
「そろそろ時間じゃの。一旦ナイトを発現せんと契約は完了せんから、また後での」
その瞬間、視界が薄れていく。俺の騎士、まだ何かも分からないけどこの先色々と大変になりそうだ。そして俺の意識はシャットアウトした。