4話
開いて頂いてありがとうございます。
カーラ イグナイデット。
彼女名前はユーリウス大陸の中でも知らない人はいない程有名である。「烈火の騎士」という二つ名で呼ばれており、彼女が本気を出し、戦闘を行ったらそこは焦土と化すとも言われる。そして、大陸で11体しか確認されていない真騎士の契約者でもある。
そもそもシンナイト、ナイトとはなんなのか。魂で契約する武器であり、其々に意思が宿っている。そしてそのナイトに認められたものだけがその力を発現することが可能だ。ナイト、シンナイトは共に発現させると体を覆う装甲となり、全長7メートル程の大きな騎士となる。そしてそれで戦うのである。ナイトは世界で200体ほど確認されており、各国が競ってその確保を行っている。ナイト一体で一騎当千であるからだ。
そして、ナイトの中でも高位のナイト、それがシンナイトである。シンナイト一体あれば国を滅ぼすことも可能といわれているぐらいだ。そしてそれは大陸で11体しか確認されていない。
私の名はカーラ イグナイデット。巷では烈火の騎士呼ばれている。私はシンナイトの契約者であるので、当然騎士学校の騎士科担当の臨時講師をしている。主に戦闘だが。
入学式の日、私は毎年やっているように入学式後に行われる実力試験を見学にきた。そして騎士科の新入生について観察するのである。
何人かの試験を眺めていたあと、ある青年が試験場に入ってきた。太陽の光を反射する銀髪が目立つ青年だ。そこで、私は思いあたる。彼は、かのスターレイン伯爵の息子ではないかと。どこかで聞いたことがある。彼は貴族社会を嫌い、剣が大好きであると。その特徴は銀髪であると聞いていた。
彼をじっくりと観察してみる。この年にしてはかなり研ぎ澄まされた気を放っているな。そして何より、目が良い。表には出していないが激しい闘争心がその奥底に見える。心の中で燃え上がっているような炎が見えるように。
そして、私は声をかけた。
俺は今、喜びのあまり小躍りしそうな気持ちだ。騎士学校に入学して強い剣士の方と剣を交えたいと思っていたが、さっそくその機会が訪れるとは。しかもその相手は
カーラ イグナイデット
王国最強と言われる騎士であった。
心が震える。日頃抑えて生きている闘争心がメラメラと心の中で燻る。体が、脳が、自然と戦闘態勢に入り、神経が研ぎ澄まされていく。
剣を構えたとき、俺を尋常ではない圧力が襲った。その場に俺を押しつぶすと錯覚する程の圧力。これは、カーラ様の殺気だ。殺気で人を殺せるというが、これは本当だと実感した。一般人がこの殺気を浴びたら少なくとも失神するだろう。
俺は崩れ落ちそうな体に気合を入れた。今は、戦いのことだけを考える。カーラ様と戦うことだけを考えるんだ。
俺は間合いを詰め、カーラ様との距離を詰める。カーラ様に先に攻撃されるとおそらく相手のペースに完全に持っていかれてしまうので先手を取った。
全力で、自分が持てる力を込めた一撃がカーラ様にぶつける。右肩を狙った一撃はカーラ様の足さばきだけで回避される。これは予想済みだ。腰まで下がった剣を相手の足を刈るように横に振りぬく。しかし、カーラ様は既に上空に回避しており、しかもその勢いでこちらの頭を狙い、垂直に剣を振り下ろしてきた。咄嗟に体を戻し、ガードする。
ガードした瞬間ものすごい衝撃が発生した。いや、衝撃波というべきか。俺は思わず膝をついてしまい、決定的な好きが出来てしまう。そして俺は悪寒を感じ、後ろに飛び退くように回避する。その瞬間、わずか一瞬前に俺がいたところをカーラ様の剣が通りすぎる。
(くそ、前髪を少しもってかれたか。どうしたらいい)
そのままカーラ様は俺を攻め続ける。一瞬のスキもない。まるで、暴風のようだ。カーラ様の剣が振ってくる。もう回避一方だ。
苦し紛れに横切りを放ち、一旦カーラ様との距離を取る。
「お前、なかなかやるな。本気ではないといえ、私の攻撃を裁いている。並みのものではあの最初の一撃で終わったいたぞ」
「お褒めに預かりどうも!」
今度は下段から切り上げ、途中で目的を付きに変える。
(斬る速度がだめなら、ならば突きだ!)
完全に防御体制に入っていたカーラ様。さすがにこれは!
そのとき、カーラ様がニヤリと笑みを浮かべた。そしてその突きをなんなくかわすと、伸びきった俺の剣を支えとして体を入れなおし、一気に俺の間合いに入ってくるそしてその勢いを使って袈裟切りを放ってくる。
(くそ!防御が間に合わない!今の態勢でカーラ様の一撃を防ぎきれない!どうすれば…)
そのとき、先ほどのフォルスの戦いを思い出す。ええい、賭けだ!
俺は咄嗟に剣を斜めにし、体の向きをカーラ様の剣と対して平行に向け、掲げた。
ガキン!!!
鈍い音がして俺の剣が跳ね飛ばされ、剣を失う。しかし、カーラ様の剣は俺の頭からわずかにそれていた。
「それまで!」
審判の合図を聞きながら俺はその場に崩れ落ちてしまった。膝が震えている。立てない…。
これが、王国最強か…。手も足も出ないな…。もう少し耐えられると思っていたのだが。
「少年、名をなんという」
いつの間にか俺の前に来ていたカーラ様。
「俺は、シルベール スターレインです」
するとカーラ様は満足そうな顔して頷いた。
「シルベール、最後の防御は良かったぞ。仮に当たっていても致命傷にはならなかったであろう。それではな。ご苦労さん」
そういってカーラ様は背を向け歩き出したが、一旦止まって振り返った。
「シルベール、落胆するなよ。お前は強い。そして伸び代はまだまだある。しかし、上には上がいる。お前をその高みに上ってきたいのだろう?私はそこで待っているからな。いつでも挑戦は受けよう」
そういって今度こそ本当に去っていくカーラ様の背を見ながら、この学校でこれからすべきことに思いを馳せていた。
ナイト、シンナイトのイメージはガンダムの西洋鎧バージョンだと思っていただけると理解しやすいのではと思います。