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羨望。

 早朝、まだ誰もいない道のど真ん中を、ミキは大きくてを振って学校へと向かう。

口から吐く息がすっかり白くなり、まるで煙のように空へと消えて行くのをぼんやりと眺めつつ

タバコを吸う人の気持ちはこんなものかと、口元に指をやり。タバコを吸う真似をしてみる。

はっとして、誰かに見られてやしまいかと周りを見渡し、誰もいないことにホッとする。

こんなときでさえ、ミキは人の目を気にしてしまってした。


 教室、当然ながらミキが一番のりだ。自分の席に座り、そこから窓際の一番前の席へと目をやる

 彼は今日いつごろ登校してくるだろうか、そんなことを考えながら――。

 

「今日からこの学校に通うことになった、神坂くんだ」

「神坂コウスケです、よろしく」

 時期はずれの転校生に教室はざわめく、かっこいい、怖そう、各々意見を漏らしている。

――この時期に転校生なんて珍しい。親の事情か何かかな? てか髪の毛茶色だ。

「みんな静かに! 神坂、お前はそこの、窓際の一番前の席な。あーそれとその髪の毛

明日までに黒くしてくるように! いいな」

 少し不機嫌そうに、神坂は言われた自分の席に座った。

 しかし、その次の日も、そのまた次の日も、神坂は髪の色を戻してくることはなかった。


「神坂見た!? 今日も髪の毛のことで怒られに職員室だって!」

「マジで!? いい加減直してくればいいのに馬鹿な奴だね!」

「ギャハハ! ホントだよね!」

 昼休み、ミキの教室では、各々自分の友人と机を向かい合わせて昼食を食べる。

中でも一部の女子グループの千明の甲高い笑い声が教室全体に響いていた。

「俺がどうしたって?」

 声のした方に目をやると、職員室から帰ってきた神坂がいた。

 さっきまで散々嘲笑していた女子たちは神坂の姿を見るやいなやハッとして黙り込み、話に混ざっていた男子も気まずい表情でどこかに歩いていった。

「ねぇ? 俺がどうしたの? 言ってみてよ」

 1人取り残された千明は半泣きの表情を浮かべている。

真っ直ぐに千明の顔を見つめながら神坂は問いかけるが。

彼女は黙り込んだまま、何も答えなかった。

  

 そんな光景を見て、ミキは神坂が心底羨ましいと思った。




更新不定期と言いつつ一応今日も更新できました。

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