5/31
3-1-1
秋風が吹く。2年なんて歳月は本当にはやく過ぎる。
この過ぎ去っていく一秒一秒が、とてつもないくらいに短い。
『今日、誕生日だよね。何かほしい?』
『何かくれるの?』
『僕からあげれるものは少ないけど』
瑠維は檜を見る。
『じゃあさ、一緒に行きたい所があるから、夜の予定は明けといて。寝たりすんなよ。ちゃんと、それなりの時間に帰って来るから』
『わかった』
檜は今日で25歳。大学を卒業し、今は大学院生。
瑠維は12歳。夏生まれ。
やっと小学校の最高学年。まだ義務教育は終わらないけれど、確実に大人への階段を駆けあがっている。
『だから、今日は早めに帰ってくる。』
『初めてだね。君が、僕と外に出ようって言ったの。』
『そうだな』
檜は小さく笑って、靴を履く。
『行ってくる。ちゃんと、学校に行けよ。』
『わかってるよ。大体、僕が学校をさぼった事なんて一度も無いだろ?』
『ははっ、そうだったな。じゃあ、いってきます。』
『……いってらっしゃい。』
パタン、と静かに扉が閉められた。
ただ今の時刻、午前七時。