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最近、夢を見る。
夢を見ると云うことは瑠維にとって久しぶりのことだった。
過去に見てきた夢は全て良い思いのものではなく、彼と出会う前の嫌な思い出。
しかし、最近よく見るそれは違った。
どうしてかは全く分からなかったが、幸せを噛みしめていた。
目の前に居る誰かが瑠維に向かって微笑み、そして言ったのだ。
「 」
その言葉に瑠維は笑い返し、返事をしようとする。
そこで目が覚めた。
目の前には何時もと違う風景。
それもそのはず、ここは俊介が経営する店。
瑠維は泣き疲れ、いつの間にか眠ってしまっていたようだ。
「起きた?」
「・・・」
まだ覚醒しきれない頭で状況を整理し終えた瑠維は真っ赤になって俊介を見た。
「お客さんはもう皆帰った後だから気にしなくていいよ。」
そう言って、俊介は店の奥へと消えて行った。
瑠維の肩には俊介がかけてくれたのであろう毛布。
一人っきりになった店内で、瑠維は夢を思い出す。
誰かに何かを言われ、それに何か言おうとする。
毎回同じ所で夢から覚め、言われた言葉は毎回覚えていない。
「誰・・・」
無意識に触っていた彼からの最後の贈り物を開けようとして再び手を止めた。
そして手紙をもう一度見る。
よく見るとそこにはもう一枚紙が入っていた。
取り出してよく見るとそれは、
「馬鹿な男・・・」
彼の名前と判子が押されたそれは、瑠維とかつてこの場で約束したもの。
そうなれば、この小さな箱のほうは嫌でも中身が想像がつく。
実は、それを見るまでに、何なのかは想像がついていた。だから泣いてしまったのだ。でも、でも。
この感情は瑠維の勝手気ままな我が儘なのか。それとも、
私はあなたを愛しています。
あなたは私を愛していますか、今でも。