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5-2-2
毎日が研究で忙しかった彼は、三者面談は勿論、運動会や学芸会にも顔を出さなかった。
今になって思う。
どうして無理を言って来てもらわなかったのだろう、かと。
毎日、朝早くに家を出て、夜遅くに帰って来る。帰って来ない時もあった。
彼はただ、僕に“不死”についての研究をしているとだけ言った。
詳しいことは聞かなかった。だからか、彼はそのことについて何も言わなかった。
彼が僕に話さなかったことは多い。そのうちのひとつが、家族について。
だから、僕が彼について知っていることは少ない。
第三者から知らされることが多かった。
今になって思う。
どうしてわがままを言って話してもらわなかったのだろう、かと。
些細なことを知らないことに後から気付く。
気付くのが遅すぎた。
もう、今では彼の声すら聞けぬと云うのに。