2-1-1
―――夜の街
其処ら中にカップルや夫婦が肩を組み、手をつないで歩いている。
そこに、この時間にこの場に居ることが異質な少女が一人。 漆黒の長い髪を背に流し、その肌は陶器のように白い。
『ねえ、お兄さん。今ヒマ?』
『…………。』
ベンチに一人座っている男に少女は声をかける。
『ワタシ、を、一晩だけ買わない?あ、それじゃあ、話し相手になるからさ。』
『金、困ってんの』
少女は何も言わず、男を見る。
そんな少女に、男は自分の横に座るよう促す。すると、案外大人しく少女は座った。
『……いくら欲しいの』
男は少女の肩に腕を回し、耳元で囁く。
『・・・君が払っても良いって、思った分だけ』
少女の肩に添えられていた手が、背を伝い腰へと下ろされる。少女はそれに、身を窄める。
『あのさ……』
『フジサキくーんっ!こんな所で会うなんて、もしかして運命!?』
何処からともなく現れた化粧の濃い女。近づいてくるたびに、香水のにおいが強くなる。
『だからさぁ~。私と付き合ってよ!』
『悪ぃけど、』
フジサキと呼ばれた男は、横に座らせた少女の腰を自分に引き寄せる。
『俺にはコイツがいるから。行くぞ。』
『えっ…うん』
男は少女を立たせる。
『こんな高校生のガキのどこが良いのよ!』
女は叫ぶ。
『こんな公共の場で出会う度に叫ぶような女はお断りだ、って毎回言ってんだろっ。』
そう言うと、男はタクシーを引き留め少女を押し込むように乗せる。
女はまだ何か言っているが、男は気にも留めずに乗り込み、タクシーは走って行った。