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『そうか。』
冷静に答えてはいるが、檜は一瞬自分の耳を疑った。
携帯電話越しに伝えられた言葉は予想していたものだったけれど。
なぜか、瑠維の声が遠く聴こえる。
『・・・どうしたいんだ。』
平日の昼間、昼休み。
檜も研究や授業で、決して暇ではない。
『俺は、瑠維の言葉が知りたいんだ。俺は瑠維の答えを否定しねえし、突き放すつもりもない。』
電話の向こうでは、すすり泣く声が聴こえる。
しかし、これは、俺が答えを与えても良いものではない。
『瑠維の決定が正しいんだ。正しいと思うようにすればいい。俺はサポートするから。』
ありがとう、と聴こえてきた。その声はもう、すでに何かを決心した様な様子。
『構わねえよ。瑠維・・・』
俺の呼びかけに瑠維は、何、と聞き返してくる。
その声さえも愛おしいなんて言えば、今周囲に居る同輩には笑われてしまうが。
『愛してる。』
そして、俺は一方的に通話を終了した。
『妊娠、したみたいなんだ』