第一章~ハラハラな始まり~
校庭に咲く桜が、私達の入学式を歓迎しているかのように散っている。
季節は春。今日は四月七日。王塚女学院、通称王女の入学式。
私は晴れて王塚女学院に合格。
「桜がきれいね」
そう声が聞こえ、後ろ振り向くと、そこには新入生だと思われる女の子がいた。もちろん、この場に男性がいることはありえない。なんせ、ここは女子高だからな。
いるとしても、きっと教師しかありえないだろう。もしくわ父親など。
「そうですね」
そう答えると、その女の子は私に近づいてきて、
「私、今日から入学する、夏原李夜といいます。よろしくね」
と、かわいらしい笑みを浮かべた。
「よろしく」
私は微笑んで答えた。
「途中まで一緒に行ってもよろしいでしょうか?」
「もちろん」
私達は、校舎の前のクラス表をみにいった。
「えっと・・・」
クラス表の前までくると、彼女は自分の名前を探し始めた。
私もそれを見て、自分の名前を探した。
「あっ、あった! 私は一年A組みだわ!」
喜ぶ彼女をみて、
「そんなにA組みがよかったの?」
「ええ。A組みは優秀な人しか入れないといわれていたくらいですの。母上と父上に必ずA組みにはいれといわれていたものだから、ちょっと心配していたの」
彼女はホッとしたようにいうと、さっきまでの笑顔とは違う笑顔を見せた。
「それはよかったですね」
私もつられて笑う。
「夏原さまー! 夏原様はどちらにおいででしょうか!?」
遠くから女の人の声がきこえた。
焦っているような、叫んでいるように思えた。
「夏原・・・・・・って、夏原さんのことじゃありませんか?」
「そうみたいね」
夏原さんは笑顔で、
「それでは、またどこかで」
そういってその場から去っていった。
私は手を振り、にこっと笑った。
「さて、私の名前は・・・・・・あ」
私は自分の名前をすぐに見つけた。
「一年・・・・・・A組み・・・・・・」
私はボソッとつぶやいて、その場に立ち尽くしていた。
しばらくして、先生の掛け声で、体育館に集まった。
まさか自分がA組みに入れるとは思っていなかったもんだから、夢のように思ってしまった。
「次に、新入生代表からあいさつです」
「ねぇねぇ、知ってる? 今年の新入生のあいさつって、理事長の孫らしいよ」
「そうなの!? あまり関わりたくないね」
周りからそんな声を聞いたが、私は夏原さんを探すことで精一杯だった。
「夏原さん・・・・・・どこにいるのかしら?」
そう思っていると、マイクの声を伝って、私の耳に、聞き覚えのある声が聞こえた。
私はすぐに壇上をみると、そこには彼女がいた。
「みなさん。校庭の桜も芽を膨らませ、歓迎の舞をしております。私達は今日、王塚女学院に入学します。みなさんが憧れていた高校生活を、思う存分楽しんでください」
そういい終わると、彼女は壇上からおり、自分の席へと向かった。
私は呆然としていた。そのあとの入学式については頭に入らなかった。
「夏原さんが、理事長のお孫さん・・・・・・だって?」
周りに聞こえないくらいの声で、私一人、頭の中で整理をしていた。
入学式が終わり、教室に戻った私は、自分の名前が貼ってある机を探した。
「二の川の一番後ろか」
私はそういって、自分の名前の札をはずすと、席についた。
教室はにぎやかだった。
同じ中学校だった人がほとんどだったから、別に孤独しているわけではないが、なんだか疲れがどっと出た気がした。
私は机にうつぶせになると、ひんやりとした机の気持ちよさに心を惹かれ、しばらくそのままでいた。
五分くらい経っただろう。
なんだろう。さっきまで騒がしかった声が、急に静かになったな。
「いつまで寝ているのですか?」
「え?」
聞き覚えのある声に反応して、顔を上げると、そこには、夏原さんの顔があった。
「な、夏原さん!?」
「なんでしょう?」
名前をいうと、にっこりと微笑む夏原さん。いつの間に・・・・・・。
「えっと・・・・・・もうすぐHRが始まるかしら?」
「はい。だからこそ、起こしたのですよ」
そういうと、私の隣の席に座った。
「もしかして、夏原なんの席って・・・・・・」
「はい、ここです」
笑顔でいう彼女に対し、私の心を折れていた。
嘘でしょ? 理事長のお孫さんが私の隣って・・・・・・。終わった。完璧に終わったわ。
心が折れている私に対して、夏原さんは、
「同じクラスでしたのね。一年間よろしくお願いします」
あの時みた笑顔と同じ笑顔の夏原さんに、私は頬を引きつっていた。
これが彼女との、波乱万丈な一年の始まりだったのだ。
なんだか、よくわからないストーリーですね(笑)
ところで、主人公の女の子の名前は?って感じですけど、それは次回出てきますので、お楽しみください。
それでは、次話でノシ