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椿坂の勇者は、戦わずに勝つ

作者:乾為天女
最新エピソード掲載日:2026/02/17
 3月下旬、地方都市の椿坂商店街。魚屋と和菓子屋が「甘い」「塩辛い」で口げんかを始め、周りが煽りかけた瞬間、惣菜店の息子・晴翔は割って入らず試食皿を二人の間に置く。「口より先に食べよう」。その直後、学習室(元・市立図書館分室)の入口に「9月末で使用終了」の張り紙が出る。理由は利用者減ではなく、建物の賃貸契約が更新されない見通し。学習室を切り盛りするまおは、床に引かれた子どもの白線を指でなぞり、「相手を貶める宣伝はしない」と先に釘を刺す。
 晴翔は怒鳴り込む代わりに、担当者が再検討しやすい資料を揃えると決める。夜だけ机に向かう慧理香のノートには、照明、机の向き、読み聞かせの順番、掃除の手順まで改善案が並び、写真で“改善前後”を残す段取りまで書かれていた。頑なな佑人は過去の誤解を胸ポケットの帳面に抱え、「ここは信用できない」と背を向けるが、晴翔は反論せず雨の入口で傘を差し出し、怒りの出どころを一行ずつ確認していく。椿の木の根元から見つかった古い覚書には「子どもの居場所を残す」とだけあり、若い頃の父の写真はその約束の続きだと示す。
 商店街の味対立「甘い派vs塩辛い派」は、読み聞かせと試食を組み合わせた一日に姿を変える。甘いほうじ茶プリンが沈黙をほどき、晴翔は塩おにぎりに甘い椿ジャムを添えて列をざわつかせる。まおは笑いながら「意外と合う」と言う。慧理香は人混みの端でノートを抱え、佑人は列整理をしながら初めて「ありがとう」を受け取る。8月下旬に正式な使用終了通知が貼られても、四人は協力者名簿、利用者の推移、改善写真、署名を揃え、9月下旬の会議室で順番通りに差し出す。担当者の深い息のあとに残った言葉は「延期と再検討」。10月上旬、椿の木の下で白線を引き直し、晴翔とまおは恋のスタートラインを越える。
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