終わりの始まり?
ある日、社長令嬢の「面帯タラ子」は唐突に不思議な光に包まれ、異世界に転移したのだった。
「ひょんなことで異世界に転移してしまった。だが基本的にポジティブで参りたい所存」
見るからに草原な場所に一人立つタラ子が言った。すると後方から誰ぞやの声がした。
「お嬢さん、転移者ってやつだね」
「貴様は?」
タラ子が振り返るとそこにはローブ姿の女性がいた。
「ホホ。ファーストコンタクトで『貴様』は圧が強すぎでは?」
「あんたこそ、今どき『ホホ』なんて長老でも言わんぞ」
「確かに、キャラ付けを改めるとしよう」
「ああ、その方がお主のためだ」
「人称がコロコロ変わるな……まあよい」
「いいのか。しかもここまで話して、自己紹介なしだし」
「ホントによ」
女性は咳払いをひとつすると、話始めた。
「私は魔道士のアサリだ。転移したお前さんに指令を与えに来た」
「転移直後にタダ働きだと? 暗黒な闇よりもブラックだな」
「誰がタダ働きだと言った? あと闇はだいたい暗黒だろ」
「報酬が出ると?」
「それはない」
「タダ働きだろそれ。ブラックすぎる、ダークネス・タダ働きだろ」
「その言葉は初耳だが」
「今作った」
「しょうもねぇことで話題をそらすな。いいから指令を聞け、進まないだろ話が」
そう言う、女性の額には血管が浮かび上がっていた。
「聞き賃をいただこう」
タラ子が改まって言った。
「何でお前が貰う? がめつい転移者め」
「いいから早く話せや」
「こいつ……指令を言い渡すぞ。ここから北の森に巣食うドラゴンを討伐せよ」
「いいだろう。2分で終わらせてやる」
「マジで? 行くまでに20分はかかるけど」
「20分? 微妙にめんどいな、チャリは?」
「この世界にそんなもんねぇだろ」
「徒歩かよ、トホホ」
タラ子は肩を落とした。
「つまんね。ぶっ飛ばしたいな」
「森まで飛ばしてくれ」
「どんだけ歩くのやなんだよこいつ。仕方ない」
アサリはそう言うと荷物袋から薄汚い絨毯を取り出した。
「なんだそれは? 薄汚い絨毯にしか見えんが」
「地の文と同じリアクションすんな。これは薄汚い空飛ぶ絨毯だ」
「結局薄汚いじゃねぇか」
「しょうがねぇだろ、年季が入ってんだ。ビンテージ物ってやつよ」
「やぶれたジーパンをダメージ加工だと言い張るレベルのコメントだな」
「いいから乗れや。歩きたいのか?」
タラ子は首を横に振った。
「それに乗るくらいなら歩いたほうがマシだ」
タラ子は歩き出した。
「もうすでにコイツやなんだが。あと方向逆だし」
二人は森へと向かった。




