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①岩竜グレイブディガー

――――死の砂漠。

この砂漠に森と湖を築いた女王ハイウェルラインはアスガルド第4の女神と記した歴史書もある。

古の光と影の時代……。

自由と理想を求めた彼女は劣勢な魔王軍を見限ると民のために勇者に降伏をする。

イシュタル平原で妖魔兵団で戦い、戦鬼兵団で戦い、新生魔王軍としてロンダルギア(現グランベル)では、王国軍を籠城戦で迎え撃ち、レフガンディーで戦い、ローザリア王城戦では最上級悪魔イノセンスと戦った。

ほぼ全ての戦場で戦い抜き、壊滅状態のダークエルフィン族とオーガ族を率いて新天地で新たな国を興す。

その名はフレイム。

炎エルフィンでもない水エルフィンの彼女が炎に関する名を国名にしたのは、彼女の従姉が炎に焼かれようとする姿が忘れられぬためだったという説がある。


1000年以上経過した彼女の砂漠は、視界を遮る物もなく、ひと目で広範囲を見渡せる。

そこに現れる黒い影。

黒い髪、赤い瞳、暗黒教団が鍛えた対魔法攻撃用の塗装を施した黒い鎧には既にヒビは入り、担ぐ大剣にも痛みがある。


その姿を地中から狙うモンスター。

サンドサーペントは地中を潜る。

まるで泳いでいるように高速で移動もできる。

その驚異が渦巻く中で、グレイブディガーと戦わなければならない。


グレイブディガーの特徴は石のような甲殻、砂の中を移動する、空を飛ぶ、あらゆる戦闘に対応できる恐ろしいドラゴン。

砂漠を闘技場にするかのように黒い戦士と岩竜が雌雄を決しようとしている。


挿絵(By みてみん)


黒い戦士は走り寄る勢いのままグレイブディガーの頭にドラゴンスレイヤーを叩きつける。

火花のような電光が斬り込んだ場所から弾けた。

ゴーレムのような皮膚は動じない。


そのまま体を回転させ、尻尾を振るう。

それが描く軌道を読んで地面に伏せて回避するが、回転がさらに一周するのは立ち上がった瞬間だった。


再度、伏せることはできずにドラゴンスレイヤーでガードするも軽いボールなように吹っ飛ばされた。


――――――ごはっ!?

背中からまともに地面にたたきつけられ息が詰まる。

幸いにも地面は砂漠の砂。

遺跡や洞窟内であればただではすまなかっただろう。


すぐに立ち上がれない。

ただこの地響きはグレイブディガーが黒い戦士に向かって突進してくることを意味している。

足の動きに巻き込まれる。

踏まれる。

どちらも圧死を意味する。


グレイブディガーの方を見る。

その場を転がって踏みつぶされないように避ける。

巨体が駆け抜けていくことを感じた。


「グオオオォォォォォォッ!!」

グレイブディガーが黒い戦士に向き直る。

今の突進で仕留められなかったことを悔しむような咆哮にも「人間ごときがやるな」と称したようにも聞き取れた。


「ドラスレェェェッ!!」

挿絵(By みてみん)


ここで加勢にきたスメディーがマイダスメッサーを投擲する。

グレイブディガーの顔面にヒットするが、僅かな傷をつけただけだ。

マイダスメッサーはブーメランのように主の元に戻る。

その分、注意もそらすことができた。

だ目的はドラゴンの隙を作り、黒い戦士を立たせること。


黒い戦士は立ち上がり、左の多目的に使用されるガントレットにグレネードを装填する。

黒い戦士は突進に備える。

狙うは頭部の一点突破しかない。

対ドラゴン用に自身で考えた武装の数々。そして長年愛用する黒い鎧に黒いマントとドラゴンスレイヤーと呼ばれる大剣。


グレイブディガーは突進を開始した。

引きつけてグレネードを撃ち放つ。

轟音を立てて弾けた弾丸は頭部に命中する。


爆風と土煙の中、その衝撃を影響しないとでも言うがのごとくに走り込んでくるグレイブディガーを予想して黒い戦士は身体を捻り、さらにドラゴンの頭部を蹴ることで突進を避ける。


土煙が晴れた時にはグレイブディガーが爆風で被った頭部の砂を払っていた。

ダメージを負った様子は……ない。

それでも無敵のドラゴンは存在しない。

ドラゴンであろうと悪魔王だろうと生命体を超越した強さを誇るが、倒せることを黒い戦士は知っている。


戦意を失わない。

グレイブディガーの強靭な足腰は方向を変えるのは素早い。

黒い戦士に向き直ったグレイブディガーは巨大な牙で噛みついてくる。

地面を転がって距離をとる。


お互いの眼光が火花を散らすような肉眼戦。

グレイブディガーもこれだけのレベルの戦士と戦うのは初めてであろう。

お互いに何かの箍が外れた存在。


死の砂漠にはガイメッツァーの姿があった。

グレイブディガーと対等に戦う黒い戦士の姿に言葉を失う。



族長は知っている。

先の大戦で連合軍は数ゆえに圧倒的勝利を掴み取った。

だが、彼方で戦う男とは敵対関係だった。

その鉄塊のような剣を戦場で振るい数多の連合兵を蹴散らした猛将。


その猛将がドラゴンと戦っている。

斃すことは不可能。

だからドラゴンと呼ばれるモンスター。

至高神レイアが間引きのために地上に置いたとも言われる。

ドラゴンには生態系が存在しないからだ。

突然現れ、全ての生命を食らい焼き尽くしては何処かに消える。



猛将は戦争が終わると一介の戦士として第二の人生を歩んでいる。

そんな将兵は数多いが、ドラゴンに一人で立ち向かう者などいるはずがない。

いたとすればそれは〝ドラゴンスレイヤー〟と称えられるだろう。


……ならグレイブディガーを倒せるか? 否ッ!

「そんなもんが、グレイブディガーを倒せるものかッ!!」

族長のそれは黒い戦士に対しての嫉妬なのか叱咤なのか。

ドラゴンの弱点を研究し、大人数で連携して仕留める。

ドラゴンと戦う基本だ。

例えば、古の英雄もひとりでドラゴンと戦うだろうか?

地下迷宮の最下層にいる最上級の悪魔や悪魔将が地上に上がり、その魔力でドラゴンと戦い勝てるだろうか?


俺はアレフと共闘したいと考えてるのか?

いいや、今すぐあの場に行ってグレイブディガーを手伝いたいくらいだ!


突如として数匹のサンドサーペントが黒い戦士とグレイブディガーの元に突進していく。

死の砂漠はサンドサーペントにとって自分たちの縄張りだ。

砂の中を泳ぎまわり、黒い戦士とグレイブディガーを翻弄する。


ここは俺たちの国なのだと言わんばかりに、黒い戦士とグレイブディガーを囲む。

サンドサーペントが黒い戦士に向かって砂の中から飛び掛かる刹那。

躱した黒い戦士はそのままサンドサーペントが一瞬見せたハラにドラゴンスレイヤーを斬り込む。

血しぶきとともに砂も舞う。

再び砂の中に潜ると旋回し、黒い戦士を翻弄し始めた。


完璧な一閃。

確かな手ごたえ。

砂の中を動いていたはずの大蛇は砂漠の砂を盛り上げたまま、砂の中で動かなくなった。




戦争は終わった――――――?

いいや、俺にとってあの戦争は今でも続いている。


自由と理想を求めて戦い、多くの犠牲の上に勝利した!

だが、結局は自由にも理想もままならん世界になった!

死んでいった者たちはこの未来のために戦ったというのに。


覇王ガイゼリックに征服されていたとき、強大な軍事力でモンスターと戦い。

強大な軍事力は戦争の抑止になっていた。


俺は自由という理想を口実にした資本主義の手助けをしてしまったのか?

教えてくれ!ヴァーレンハイト……。


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