森と砂漠の国フレイム
森と砂漠の国フレイム。
グランベル領の公国として治めるのは公爵ガイメッツァー。
グランベル軍の将軍での階級は上級大将であり、光人間でない彼が最上級貴族であり、高級士官であるのはある異例とも言えるほどの武勲である。
グランベル王ノワールハイムから戦争を生き抜いて〝名誉勲章〟を授与したのも彼だけである。
水の精霊に愛された建国の母にてダークエルフィンの女王ハイウェルラインは、古の勇者レオンハルトの幕僚として仕えた功績で、この砂漠を与えられた。
死の砂漠とさえ呼ばれた砂漠は森と湖で栄え、連合軍の勝利とともに砂漠でありながら交易路もあり、貿易商や貴族たちが訪れてはオアシスで余暇を楽しむ。
さらには砂漠に現れる砂漠の大蛇の皮は熱に強く、牙は鋭く武器として加工し、その目玉は魔石のように魔力を高める魔法具としても重宝され、最近では投資の対象として高額の取引に用いられる。
そして、その肉も旅行者に大人気であり、骨まで捨てるところがないと言われるほど貴重な資源となっている。
しかし、その砂漠にグレイドラゴン級グレイブディガーが現れた。
その皮膚は岩のように固く、サンドサーペントを一刀両断するフレイムの戦士たちの戦斧ですら、弾き返すのだ。
屈強な戦士たちを有するフレイム戦士隊。
グランベルの有事の際も最前線に出るために日々の鍛錬を欠かせない戦士たちだが、ことに相手がドラゴンともなると分が悪かった。
そこででた「冒険者ギルドにいるドラゴンを専門に戦う戦士に依頼してみては」という案。
領主のガイメッツァーは歴戦の猛者であり、他者を戦わせるのはプライドが許さなかったが「ドラゴンは人間では倒せないからドラゴンと呼ばれる」と諭され、ギルドにドラゴン討伐を依頼する。
そして、これ以上の損害は看過できない。
グレイブディガーの影響で交易路がほぼほぼ使えない状況なのだ。
一部、傭兵隊を雇った商団もわたってくるのだが、ドラゴンの護衛ともなるとその破格のギャラに対する利益を叩き出すのは難しい。
そんな暗澹たる状況の中、冒険者としてエスタミルに出ていた族長の娘スメディーが、Sランクの冒険者を伴って凱旋。
そして、その冒険者を自身の婚約者だと自慢げに父の前に連れていく。
だが――――――
「き、貴様――――――アレフ!」
族長ガイメツァーの雷喝が落ちる。
娘が戻り、そしてドラゴン討伐のプロとして現れたのはかつて帝国と戦った際に死闘を繰り広げた黒衣の将軍アレフであったのだ。
「俺に名はない。ただこの剣がドラゴンスレイヤーと」
そう一言漏らすと黒い戦士は踵を返して出ていったのだ。
「オ、親父……知ってるの? ドラスレを……?」
「何を言う! アイツはドラゴンスレイヤーなんて名前じゃねぇ! あの大剣がそう呼ばれているだけで、ヤツの名はアレフ! 暗黒教団が作り上げた戦闘人形だ!」
「せ、戦闘人形……そんなはずはない!」
それを聞いて、スメディーも彼を追う。
ガイメッツァーは消えていく娘の姿を見ていた。
我に返ると片時も離さずに帯剣していた聖剣を引き抜く。
「ヴァーレンハイト、ナーシェル……何でお前らのような英雄が死んで、俺やレオン、アレフのような悪党が生きのこっちまうんだ……」




