②岩竜グレイブディガー
グレイブディガーはその場で回転し、自身に飛び掛かるサンドサーペントをその強靭な尻尾で打ち据え蹴散らした。
地面に叩きつけられたサンドサーペントの弱点は鱗の少ないハラの部分だ。
黒い戦士は倒れて一瞬隙を作るサンドサーペントのハラに渾身のドラゴンスレイヤーを叩きつける。
連携するサンドサーペントの姿は自分たちの領域をグレイブディガーと黒い戦士から守ろうとする砂漠の戦士。
叩き伏されても、その牙でグレイブディガーに何度も飛び掛かる。
グレイブディガーの硬い石のような甲殻が砕けると、そこに血が滲んできた。
まさに重装の鎧を着こんだようなドラゴン。
黒い戦士はサンドサーペントの連携に紛れて、グレネードをその割れそうな甲殻に撃ち放った。
――ドオオオォォォォンッ!!
「ウゴオオオオオォォォォォォォッ!!」
グレイブディガーが初めて仰け反る。その反撃できない隙だらけの巨躯にサンドサーペントらが飛び掛かった。
もちろん、黒い戦士にもだ。
グレネードを発射した後は彼にも隙が生じる。それをサンドサーペントは学習したかのように突撃してゆく。
飛び掛かるサンドサーペントを前転で躱し、ガントレットに連射式連弩を装着するとまるで対空弾幕を張った戦艦のようにサンドサーペントたちを狙撃する。
―――ドドドドドドドドドドッ!!
一本も残さず弓矢を撃ち込む。
サンドサーペントの皮膚に弓矢が突き刺さるが、サンドサーペントは砂の中に飛び潜る。
「くっ!」
族長は戦いを目の当たりにして、魔の砂漠の自治権を握る主として不愉快であった。
今の自分は自身の領地が戦場になっているにも関わらず安全なところにいた貴族らと同じではないかと。
「ギギャアアアアアアアアアァッァァァッ!!」
サンドサーペントの1体がグレイブディガーの角の餌食となり、絶叫した。
グレイブディガーは角に付いた砂を払うがごとく、サンドサーペントを角から振り払い黒い戦士に向かって投げ飛ばす。
黒い戦士は前方に飛び込むようにそれを躱すと瀕死のサンドサーペントの頭部にトドメとばかりにドラゴンスレイヤーを叩き込んだ。
大きく仰け反りながら、尻尾を回転させて、黒い戦士を薙ぎ払う。
そして、角で砂を掘りながらサンドストームを巻き起こし、その巨体を消した。
まさに戦場と化した魔の砂漠。
黒い戦士駆け寄るスメディーにもサンドサーペントは地中より迫る。
彼女はポーチから音の精霊魔法を詰め込んだエコー弾を砂漠に叩きつけた。
そのエコー弾は砂の熱で爆発すると、高い音を出し、音に弱いサンドサーペントは驚いて砂から飛び出す。
その飛び出して混乱している間に黒い戦士の大剣と女戦士の戦斧が交差し、サンドサーペントの首が飛ぶ。
サンドサーペントも弱点である音を巧みに使用されると抗う術はなく、徐々に後退し退散していった。
だが、彼らは砂漠の捕食者。
砂の中という攻撃オプションのない安全地帯で虎視眈々と獲物を狙いにくるだろう。
スメディーが黒い剣士にポーションを手渡すと、黒い剣士は何も言わずにと受け取り、一気に飲み干す。
普段から一緒に戦い、公私ともに信頼関係を築いているふたり。
黒い剣士は魔法の地図を取り出す。
グレイブディガーには追跡魔法弾を投げつけてあるので、その所在は地図上でわかる。
「グレイブディガーは、まだ砂漠内にいる。俺はこのままヤツを仕留めに行く」
黒い剣士はガントレットのボウガンを外し、グレネードを装着する。
その戦う姿を見ていたガイメッツァーは、黒い戦士が一人でドラゴンと戦うことを想定しているように感じた。




