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008


逸見先生を通して綿密に作った分厚い計画書を渡して、学校と交渉をスタートした。

なぜか、中学校の内部会議では結論が出ないで、地元の教育委員会を巻き込んで少し騒ぎになったらしい。

そして翌週にトンデモナイ情報が入って来た。


この中学校に来る学区の中で、今は廃校になった小学校にけっこう立派なビオトープが残っているっていう。

なんの整備もされていないから、廃校時から空になっているけど、復活させることが出来る筈だから見てこいだって。


2人に伝えたら重労働が大幅に減った事に大喜び。

次の日に3人で現地に向かった。


廃校になった小学校は一時は工場になる計画もあったけど、今では廃墟のままになっている場所。

校舎は荒らされてはいないけど、表面の壁は劣化してボロボロだ。

校庭にあった遊具は針金などで固定され使用禁止になっている。

校庭は地域の住民の避難場所になっているとか。

校舎は管理はされているので、地元のヤンキーや暴走族に荒らされたりはしていない。


自転車で10分くらいかかる場所だけど、この距離なら通える。

問題のビオトープを見てみると、小学校の校庭の裏手に、大きい池があって、その池の周りが少し高い水槽になっている。

かなりの大きさだ。それぞれ池が楕円形で5m×3mくらい、水槽がC型で10m×1.5mくらいある。

形は違うけど当初の理想の大きさだ。


3人で大喜び。


これなら大掃除をして、池と水槽の一部に陸地を作って、生き物を調達して・・・早ければ2か月くらいで完成できそうだ。

僕の能力を使えば生態系を整えるのは失敗しないはずだけど、トライ&エラーさせたほうがいいかな?

勉強にならないよな・・・うーん・・・


とりあえず、今日は様子見だけだ。

この後帰って学校に使いたい旨を伝えて、明日から掃除だな。

落ち葉が溜まってどえらい事になっている。掃除だけでもけっこうかかるかな・・・

虫を使って掃除手伝わせようかな・・・

しかも少し離れた場所に25m×25mプールと、浅い低学年用のプールがある事に気づく。

この低学年用だけでも使わせてくれないかな。

これも含めて交渉してみよう。


3人で池の周りに配置されたベンチに座る。

大型の魚を集めるための釣りの話や、水草の勉強しなくちゃいけない話とか、小学校の裏山から持ち込む土の運搬方法とか、考えなくちゃいけない事はいっぱいあって、何時までも話していると、そろそろ部活時間の終わりが近い。

中学校に戻らないと。


「ねえ、昌さん、美琴さん、学校に連絡すると、本格的にビオトープを始める事になるけど、それでいい?」

「「うん」」

「生き物を相手にするから、中途半端にするワケにいかなくなるから、途中で止めたり、転部とかも困る事になるんだけど・・・」

「はい!大丈夫です!」

「・・・うーん、あたしが心配?」

昌さんがやっぱりなーって顔している。


「ん・・・そういうわけじゃ・・・いや、嘘、ごめん、ちょっと心配してる」

「まあ、そりゃそうだよね」

「どうしてソフト部辞めたのか聞いてもいい?」

「ん-うん、言いづらいんだよなー・・・でも話さないとね」

「いや、言いづらいなら・・・」

「ん-ん、ちゃんと話すよ。これから卒業まで一緒にやっていく仲間から信用して貰うためにね。ここで話す事は絶対秘密でお願い出来る?」

「「もちろん」」


「えーっとね・・・あたしと・・・ソフト部の先輩の一人がね、同じ人を好きになったのが始まりだったの。相手は今3年生の人なんだけど、その・・・ちょっと不良っぽいところがあって・・・でも、カッコイイ人で・・・」

「ほうほう」

美琴さんが食いついている。


「それでね、結論から言うと、ソフト部の先輩が告白して、付き合う事になったんだけど、その少し前にあたしが、その相手が何人もの女子と付き合ってるっていう情報を知っちゃってね。色々と調べたら、高校生とかを含めた何人かと付き合ってるっていうか・・・その、美琴ちゃんの前で言いづらいんだけど・・・」

「エッチ目的の付き合いってことですか?」

ハッキリ言うなぁ、中学一年生。

まあ今は何処からでも知識は得られるから、みんな耳年増なんだよね。

「うん・・・そう、そうだったんだよ」


恋愛がらみの悪行は一切関知してないからなぁ・・・

そういう人もいるか。っていうか合意があるなら悪行ですらないだろうし。

「それでね、あたしはその話が気になって、高校生の兄貴の情報網とか使って色々聞いてみたら、その話は本当だったんだよね。その時点で、その人の事は大嫌いになってたんだけど、先輩が毒牙にかかるのを止めたくて、先輩に伝えたんだ」

「ふむふむ」


「あたしもその人を好きだった事を先輩は知っていたし、先輩はその人と話すチャンスが増えてきてた時で、先輩から見ると・・・あたしは嫉妬で嫌な嘘を吹き込む、最低の奴に見えたんだよ・・・」

「「あー・・・」」

「結局ね、先輩はその人と付き合って、すぐにそういう関係になって・・・やっぱり他の彼女の存在とか分かって・・・でも、まだ今も付き合ってる状態なんだ。先輩のソフト部の友達は止めろって言ったり、もっと強く引き留めなかったあたしに当たったり・・・それでも付き合ってる状態だから、本人は別れる気がないから、周りも動けない状態で・・・すごいモヤモヤしてて、その分のストレスが、なぜかあたしに向いたりもして・・・」

「「うーん・・・」」

「これが、去年の冬のあたりの話で、あたしは居づらくなって部活には行かなくなって、学年が変わるのと一緒に転部したの。校庭を使う部活は顔合わせそうで嫌だったし、バスケとかバレーとかの体育館の運動部はその気にならなかったから、生物同好会に入ったっていうわけ。あたしも小学校で飼育係とかやってて、その時楽しかったからさ・・・」

「「なるほど」」


「というワケ。だから問題が無ければ、辞めたり転部なんかしないよ。信用して貰える?」

「もちろんだよ!良かった、昌さんが信用できる人で!」

「ほんとです!高島先輩が良い人なのが分かりました!」


「えへへ・・・良い人ってワケじゃないよ・・・でも、うーん、ずっと心配なんだよね・・・その先輩って、部活に入って一番初めに一年生の世話係やってくれた人で、あたしも凄い仲良かった人なの。まだそんな情報知らなかった時は、どっちが上手くいっても恨みっこ無しね~とか言ってたんだよ」

「そっか・・・」

「でもタイミングが悪かったんだろうな。忠告した時にはあたしのこと心底軽蔑した目で見て、けっこうキツイ事言われて・・・その話が本当だったって分かった後も、あたしに酷い事言ったからか、こう・・・逃げるみたいに無視されちゃってさ。あたしもムキになって、ざまあみろとか思った事もあるし、全然良い人じゃないよ」


「うーん、その位思うのは当然じゃない?昌さんは善意を悪意で返されたんだし、冷静でいられる人の方が少ないと思う。それで何か行動したり直接言ったら又違うけど、心の中で思っただけなら、問題ないよ」

「そっかな・・・」

「そうですよ!高島先輩、そんな思っただけで良い人認定消えたりしないです!」

「そうそう、その通りだよ、ありがとうね、昌さん。言いづらい事話してくれて。必ず秘密は守るからね」

「うん!私も絶対に秘密は守ります!」

「あはは、ありがと」


「じゃあ安心できたところで、そろそろ戻ろうか。明日からは大掃除だね。道具を学校で借りて移動するから、けっこう大変だぞ」

「「はーい」」

「じゃあ、今日はここで解散ね。僕は学校に戻って報告するよ」

「「はーい」」

バラバラに帰る事になるけど、僕は寄り道をして昌さんを追いかけた。


「昌さ~ん」

「え?部長?どうしたの?」

「昌さん、さっきは聞けなかったけど、問題の人の名前って教えて貰える?」

「え?なんで?」

「いや・・・うーん、僕の知り合いの女子で、3年生に好きな人がいるって言っていた子がいて、もしもその相手がその人だったら大変だって思って・・・」

ここは大嘘。

まあ悪意無き嘘は方便って事で。

「あはは、そうなんだ。そういう事なら教えるよ。問題の人はサッカー部の内田奏多くん、ソフト部の先輩は原田愛さんだよ」

「そっか、ああ、じゃあ全然違った。ごめんね、追いかけちゃって」

「ううん、そういう話なら当然だよ」

「うん、ありがとう。じゃあまた明日ね」

「うん、またね」


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