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「じゃあ部長の番ね」

「あーはい、僕はビオトープを作りたいって思っていました」

「「ビオトープ?」」

「うん、小学校でやっていた学校あるかもなんだけど、池と水草と陸地部分でセットで作る・・・人工生態系って感じかな?」

「人工生態系??」

「うん、小さいのは水槽とか水鉢でも作れるし、大きいのは川の一部とか使ったりもするんだけど、魚とか虫とか水草とか普通の草とか爬虫類とか両生類とか・・・色々な生き物を計画的に配置して、お互いがお互いを生かし合って、それぞれの生物が食物連鎖して永続的に生きていけるような、一つの生態系を作るっていうものなんだ」


「珍しい生き物育てるってこと?」

「そういう目的で作るのもあるよ、ホタルを目的にした奴とかあるね。でも普通の生き物で、その場所で生きている虫や魚の方が多いかな」

「え?どういうこと?」

昌さんが理解できない顔している。

「え?何が?」

「んん?そこらへんにいる虫とか魚なら、自然の状態でいいんじゃないの?」

「あーそう言われるとそうなんだけど・・・それを小さい世界で作る事で僕たちの生態系の勉強になるし・・・自然が失われている地域では、在来種の虫や魚の復活に結び付いたりもするんだよ」

「「へー」」


「とは言え問題も多くて、水鉢にメダカ飼っているだけで、水草とメダカの共生が出来ているだけで定期的に水鉢掃除しているやつとか、田んぼをモデルにしたって言いながらメダカと水草入れただけの水田とか・・・小さいエリアに食物連鎖が出来上がる生態系を作るって目的から遠く離れた奴も多いんだよね。単なる学校の池にメダカ入れただけになっている場所が8割くらいかも」

「メダカ出番多すぎない?」

「あはははは。ビオトープ=青緑色の水のメダカ池って思っている人多いかもね」

「「あはははは」」

「なんで青緑色?」

「アオモの発生が抑えられないんだ。メダカとタニシと水草くらいしか入れないし、少し気が利いていても外来種のエビ入れるくらいで・・・生態系を作るっていうのが実現できない場所だらけで、失敗すると復活させることも出来なくなって放置しちゃうんだよね」

「えー何か酷くない?」

「最初は上手く行く学校とかもあったらしいけど、熱意を持った立ち上げの学年が居なくなると放置されて、そのまま放置っていう場所もあるみたいだね。最低限の管理は必要だからね・・・」

「うーん、生き物相手なのに嫌な話だなぁ・・・」

「殆どの学校に生物部って無いし、生物を専門で専攻した先生もいない学校も多いから、それは仕方ないって書いてあったけど・・・僕らもビオトープをするなら、常時3人確保で部を存続させる必要は有るね。ずっと先まで」

「なるほど」


「それでね、ビオトープは初期費用が一番かかって、まずは場所を確保しなくちゃいけない。理想は小川とか水路がある場所だけど、これは学校の敷地内じゃありえないから、池と水道・排水路がある場所で、場所が取れるなら取れるだけ欲しい。これは学校にお願いして場所が貰えないと無理だね。うちの場合は池もないから、完全にゼロからスタートだ」

「ふんふん」

「普通の場合は、その場所に自分たちで深さの違う広い水槽を防水シート+土とか、コンクリートで作る。最上級はコンクリートと更に水が漏れないように防水シートを敷く工事業者さんにやって貰う奴になるんだけど、その費用がほとんどだね。虫や魚や水草は自分たちで集めてくるって感じかな」


「ふーん・・・コンクリートとかって幾らくらいするの?」

「広さによるんだけど、実は防水シートだけで予算オーバーするし、全部をコンクリートで作るって考えるとそれもまた部費を軽くオーバーするんだ。プラスチックの巨大な桶を地中に埋めるっていう方法なら予算内に収まるんだけど、プラスチックじゃ長い時間持たない」

「それじゃどうするの?」

三和土たたきっていう土に消石灰とにがりを加えた和製コンクリートがあるんだけど、それでほとんどを作ってから、立ち上がっている壁の部分だけコンクリートで上からカバーする感じならいけるんじゃないかって計画したんだ。三和土ってちゃんと作ると防水性能があるから、防水シートもいらなくなる。ただ、ペーハー値が落ち着くまで時間かかるのが問題かな。消石灰って少し前まで校庭に引かれていた白線の粉だし、これなら予算内に収まるかなって思っている」


「学校から場所借りれるの?」

「うーん、そこなんだよね。実は去年少し聞いたんだけど、部じゃないところに使わせる土地なんて無いって追い返されたんだ。今回生物部になったから、交渉出来るかなって思っているんだけど・・・」

「「ふーん」」

「でも問題があって・・・」

「「何々?」」

「お金をかけないで作るためには、僕たちが労働しなくちゃいけないんだけど・・・もちろん大きさによって変わるんだけど、多分ドン引きさせる労働量になると思う・・・」


「「ドン引き!?」」

「うん・・・あまり小さいと良い生態系が作れないんだ・・・上手いこと段差のあって水道のある土地があったとして、そこに5m×3mの深さ違いの水槽を2つ作るのが理想なんだけど・・・必要な三和土は約15㎥・・・」

「りゅうべいって何?」

「1m×1m×1mの大きさ・・・」

「「え?」」

「重さで言うと24トン・・・」

「「えええええ?」」


「トンって何キロ!?恐竜とかでしか聞いたことないけど!?」

「1トンは1,000㎏だから、24トンは24,000㎏・・・いや、大げさに言いました。こんな大きい水槽は作れないから、予算で作れる最大の大きさで言うと2m×2mが二つって所かなー」

「それって重さで言うと?」

「えーと7トン弱・・・」

「7トンの土をあたし達で用意するの?」

「まあ、そうなるかな。手押しの一輪車で・・・180~200回くらいの運搬・・・でもこれって場所が用意出来て、ただで土が取れる場所があって、水道と排水路があって、消石灰が学校とかの特別価格で手に入らないと実現しないんだよ。だから学校と交渉しないと、そもそも無理なんだ」


「うーん・・・ウサギは高すぎて、ビオトープ?だっけ、それは重労働が確定か・・・」

「昆虫日記付ける?」

「せっかく部活でやってるのに、それはつまらないよね・・・」

「いや、昆虫観察も本気でやると凄いんだよ?」

「「うーん・・・」」

「どうしたいか、もう一回考えてみる?」


「んんんんーーーーあたしは部長の案良いかもって思えてきてる」

昌さんが食いついた。

「あ!私もです!」

美琴さんまで!?

「2人とも本気?かなり大変だよ?」

「なんか自分たちで世界を作るんでしょ?面白そうじゃない!」

「私もそう思います!」

「おー、そう言ってくれるなんて思ってなかった・・・生物部の総意として学校と交渉してみる?」

「「うん!」」


「あ、あとビオトープは安定すると、水位の変化と気温の急な変化とかに気を配る感じになって、基本安定するんだけど、立ち上げの初期の時は、めちゃめちゃに気を付けなくちゃならないことだらけで、時間もめっちゃ取られるからね」

「そうなんだ?もし理想通りに作れるとして、完成っていつ頃になるの?」

「早ければ・・・本体作るのに3か月+生き物入れてビオトープの形にするのに3か月くらいかかるかな・・・」

「秋には完成するのね、面白そうじゃない?ホタルのやつって出来ないの?」


「ホタルは・・・昔、調べたけど、幼虫を成虫にするだけの飼育だけなら、水槽でも出来るんだって。専用の餌とか、環境の整った水槽とかを売っている業者もいて、それを買える予算が無いと、自分で調達するのは不可能に近いくらいにメチャクチャ大変らしい」

「お金がかかるのか・・・」


「今回目指しているような生態系としてのビオトープでやるとなると、本格的な森林+川がある場所じゃないと基本無理なんだ・・・もの凄い本格的なビオトープじゃないと。最低でも農業用水路や町の観光用水路とかを使う奴じゃないとエサの淡水生巻貝が住めないんだよね・・・流れ水じゃないと・・・」

「流れ水って、川とか水路のレベルなの?」

「うん、ホタルなら、最低でそれだね・・・各地の自治体が観光客を呼ぶために、町の事業としてやっても失敗しているみたい。しかも元々その地域に居なかった国内外来種の貝を放流して、遺伝子汚染が起こったり、将来にわたって取り返しがつかない失敗したりしているんだ」

「そっか・・・途方もなさそうね・・・」


「どれかを目的にしたビオトープってやっぱり不自然だから、この地域の外来種のいない生態系の復活とかが、目標には良いかなーって思うんだけどね」

「なるほどね・・・」

「じゃあ学校と交渉してみるね」

「「はい」」


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