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後に僕の研究所が齎した大きな功績のもう一つは、僕が見ている映像を外部出力し投影する研究だ。
これは専用の地下20階・平面的な面積も莫大な大型施設を必要としたが、更に後には、僕の視界を介さないでも、僕がその機械に繋がれたままであれば、億を超える虫の見ている映像・音声を同時に映し出す事に成功し、それらの映像をそれぞれAIに分析させる事で、リアルタイムで世界中を監視するという驚愕の成果を上げた。
この頃には人間が簡単に認識できるような、ハエや蚊などの大型の昆虫を使役するよりも、視覚・聴覚を備えたシラミや蚤レベルの大きさの虫、たとえクリーンルーム内でも顔ダニやヒゼンダニなどの顕微鏡レベルの体表寄生虫達で音声監視を行う事にしていたので、見られている側が感知する事は完全に不可能になっていた。
国連公用語に順位が付けられ、世界第一公用語が日本語になった。
各国では義務教育で日本語の授業が行われ、生活様式なども日本式が導入される。
元から人気だった日本のテレビ・アニメ・映画・漫画などのコンテンツは熱狂化し、それらばかりを見る人々によって、日本の価値観によって世界は席捲されている。
日本においてはクリエイターとなって成功するモデルが、子供たちの将来の夢の1位になり、また世界中の需要によって、一定の成功を収める事は実現する夢となった。
クリエイターの過剰供給による文化の切磋は凄まじく、世界的・歴史的な大成をする作品が何個も創造され、日本は世界の精神を引き上げる存在として尊敬を集める。
学校の6・3・3制は、元から欧米の制度と合わせるために世界標準化の波があったが、日本に合わせるためという名目で一気に広まり、色々な日常生活の必需品に至るまで、母国語か日本語で呼ぶものが混在する。
元からアニメや漫画をより理解したいために、日本語を学んでいた日本フリークと呼ばれる人々が各国にいたが、それらの人々は先見の明のある人物として、各地で敬意を受けて名士となっていく。
それらの人々が、言葉だけではなく一般名詞も日本語化したいという流れを作りつつあったが、第一公用語になったことで、その流れが一気に広まり、実際に世界で一番通用する言葉になってきた。
日本という国自体を信仰する宗教が作られたが、これは僕が直接潰した。
より穏やかな感謝程度に抑えなければ、日本国民が図に乗って制御が出来なくなる。
日本は世界中から、感謝と尊敬の念に溢れた観光客が、聖地巡礼の感覚で大量に押し寄せる事態となり、一時は大規模に混乱した。
虫による監視をする必要があるかと思ったが、各国の国民が相互監視とSNSでの告発によって、他国民より自分達の方が、日本を好きだというアピール合戦が始まる。
少しでもマナーを違反した者がいれば、勝手にSNSに挙げて叩いている。
日本国内でマナー違反や犯罪などをすると、母国から強烈な重罪を課せられる事が常態化する。
帰国してからも国民から総叩きに遭い、実際に犯したポイ捨てや軽犯罪にもならないマナー違反で、人生を失う人が続出し、それが各国の社会問題になる。
競い合うように、日本がいかに好きかアピールし、迷惑をかけない事で日本への理解を示し、関心を買おうとする流れは激化し、観光客が来ると街が綺麗になるという事態にまで進んでいる。
各地の過疎地や限界集落に移住してきた日本フリークも多く、地方の再生は、危険性のない日本を熱烈に愛する外国人によって始まっている。
日本人の方がマナーの悪い人が多く、それをとても恥だと思う文化のあったこの国民は、地方に至るまで急激に民度が上がった。
たまに世界中から好かれる事に胡坐をかいた日本人が街を汚し、見せしめとしてペナルティを与えるために虫の力を使うという、僕も想定しなかった事態となった。
日本人が各国へ旅行に出かけて、最大の優遇を受ける事で気を大きくして、ルール違反や犯罪を行う事態も頻発する。
これは早くから簡単に予想出来ていたので、出国した邦人は全て虫の監視対象になっている。
AIからの報告で事実が確認されれば、すかさず現地の政府経由で警察が駆けつける。
現地の政府にとっては、日本に協力的な事をアピールするチャンスだ。
外国で不法を働くと、日本にいる時よりも素早く、容赦なく見つかる事から、個人単位で監視されていることはすぐに知れ渡る。
恩恵だけ受けて、束縛は嫌だという論調もあったが、そのような事は許さない事もまた既知の事実だ。
あくまで恐怖支配であり、その根本を覆すつもりはない。
日本が地震大国で、度々地震の災害を被ることは何時ものことだが、各国からのボランティアが余りにも押し寄せて、毎回混乱している。
各国が正式に派遣する災害救助チーム等ですら膨大な数なのに、それとは別に、アピール用に国が後押しして、費用の面倒を見るボランティア団体も多数来るので、収拾がつかなくなる。
来るボランティアを審査して、一定以上の能力と実績が無ければ、現地に入れないという事態にまでなる。
この審査は後にボランティア団体の世界的な格付けとなり、日本に入れるチームは母国の誉れとして、表彰を受けたり地元の名士になったりした。
日本を旅行中に地震で被害が起こると、それらの審査を得ないでボランティアに参加してアピールが出来る。
外国からするとボーナスタイムと呼ばれるチャンスを狙って、不必要な時でも日本に来る外国人も増えた。
民間出版ではあるが海外の旅行ガイドには、地震が起こった際に、決して喜んだりはせずに可能な限りの早さで現地に入り、ボランティアを行う事が明記されたものまで出て、日本政府も流石に閉口している。
災害の度に集まる各国からの義援金も多くなりすぎて、災害に対する補填を遥かに超えてしまい、余剰分を貧困国の援助に回す事態になっている。
地震が来ると義援金で、ただで家が新築になるという異常な事態に、一部の人がSNSで地震到来を祈願して炎上するなんていう事態も発生したが、実際に災害によって人命さえ害われなければ、損よりも得をする国民の方が多いという状態になっていた。
僕に関する情報は、有名な大学教授の1人としてしか、世間には伝わってない。
僕の出身地は隠され、過去の虫の事件とは、全く関わりが無いように書き換えられた。
僕の能力に関する情報は、国の最大限の力で守られている。
虫の研究者として世界を股にかける事は多かったが、不審に思われる痕跡も根拠もゼロだ。
日本が虫を使った手法を取っている事が知れ渡り、僕も各国の監視対象になったが、僕が全く行ったことも無い場所・国で、日本が行う事業と僕を結びつける暴論は、世界中の諜報機関が優秀であればあるほどに通ら無くなる。
日本の超常的な能力を危険視した各国の諜報機関の中に数人、生まれ付き持っていた危険察知能力の『勘』のみで、僕の抹殺を進言したモンスタークラスのエースもいた。
だが、各国の諜報機関はもちろん、テロ組織や犯罪組織まで、主要な組織はすでに日本が僕の監視システムで常時監視を行っていた。
AIが報告する情報を精査し、危険な人物やその周辺には、不自然さがない状況で世界からフェードアウトして貰った。
日本国内では暴力団も完全に壊滅した。
ドキュンや半グレなども存在しない。
僕の与える罰はあの後、更に苛烈さを増している。
文字通り存在しないのだ。
昔のように他県に移住して逃げるという手法は、全国が管理下にある状態では通用しない。
海外に逃亡しても、日本寄りの国の場合は到着前に通知が来て、入国を拒否される。
昔の知的能力が低い人や粗暴な人たちが取った、暴力や犯罪で普通の人と渡り合う。
もしくはそれ以上の生活をする、というモデルケースは崩壊した。
生まれ付きの知能が低かった人に罪はない。
だが知能差別、知能のみ無条件優遇の現代で、そのルールを無視して我儘を通すことはもう出来ない。
自分の能力に見合った、厳しい労働環境や低所得しか得られない生活。
それが、知的能力を持ちえず、また磨かなかった者への正当な扱いなのだ。
ちゃんと自分をわきまえて生活を送れば良いだけだ。
無理を通そうとした者、通していた者がいなくなっただけだ。
外見の造形が悪くて親を怨む者と、知能が低くて親を怨む者になんの差異もない。
その状況に我慢ができずに暴発する粗暴な人物は、どんどん消えていった。
一切の容赦もなく何の影響も与えずに、ただ消えていくだけの事態に、無理を通そうとする国民はいなくなる。
昔言われた、日本の暴力団がいなくなれば、街の暴力団構成員ほどでは無い、半グレや不良たちの統率が無くなり、混乱が訪れるという心配は、まったく無かった。
それらの人々も合わせて居ないのだから。
外国のギャングに裏社会を仕切られて、国が亡びるという憂慮も無い。
日本が世界中から優遇され、守られているからではない。
そのような勢力の構成員などは、日本で何ら活動出来ないのだ、虫の力で。
暴力団が消えた当初は、何度も様々な国の組織が暗躍しようと手を伸ばしたが、完全な壊滅と、本国への厳しい報復に、どの国の組織も断念した。
報復を受けた国は即時原因を究明し(秘密裡に通告され)、国内の犯罪組織の拠点を国が総力を挙げて叩き潰した。
国家存亡を賭ける勢いの、本気の軍隊を相手に戦える犯罪組織など存在しない。
そのようにちゃんと対処をすれば、報復は完全に停止する。
公正である事も認識された。
そして日本は世界のタブーとなる。




