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大学生の時点でここまで進んでいたが、これ以上は3人では無理と判断。


オートマチックで環境浄化を進められるシステムを構築し、分かりやすい成果として、各地の大型の湖の浄化をさせる。

日本の湖の大きさ・知名度などで上位30カ所の水質を浄化させる。


だがそれ以外の、更なる新規の浄化事業を考案するなどの活動を一切やめて、自分の研究に没頭する。

2人は一般企業に就職して、終業後の時間を僕のサポートに当ててくれた。

大学院から研究者の道に進み、数々の革新的な発表を重ねた。

昆虫の協力が得られる僕なら当然だった。


昆虫によって日本中が良くなっているのが知られて、研究に対する国の予算も爆発的に増えた。

僕を始めとする研究者も増えたが、能力を持つ僕は圧倒的だった。

ここまで目立たない事を身上としていたのに、急に指針を変えて上を目指したのは、地位を得なければ交渉のテーブルに着けないからだ。

何個かの世界的な生物学の賞を受賞し、世界的な昆虫の権威としての地位を得る。

何度目かの受賞の後に、時の首相にお褒めにあずかるというセレモニーで、首相を通して僕は能力を国の極一部の上層部に開示して、国の協力を仰いだ。


虫の使役と各種の実績の開示。

国の舵取りをする連中に馬鹿はいない。

この能力によって何が出来るか、それを政府の功績とすれば、自分達の政権が安定するどころか、日本を爆発的に発展させた指導者として、歴史に残る事が確定するメリット。

こんな簡単な損得勘定の出来ない奴はいない。


完全秘密裡な僕専用の研究所と、身元をガチガチに固められたスタッフで出来た僕専用の特務機関と、対外用に僕と全く関係のない、表用のハリボテの特務機関が3つ同時に立上る。

表の機関は外来種駆除と害虫被害の防除に特化する機関として始まり、その陰に隠れて国全体を再生させる一方、水質浄化の研究を進めた。

研究所のコアメンバーは当然いつもの3人だ。


専門のスタッフと大規模な予算、大規模な設備。

今まで進められなかった、四国と北海道を瞬く間に浄化システムに組み込み、主要な河川以外の各地の沼や池や農業用ため池に至るまで、浄化や外来種の駆除の対象に出来る。

研究所に組まれた膨大なサーバーと、部下として忠実に職務をこなしてくれる機関の人材。

国の協力を仰いだ事は正解だった。

秘密の保持に関しても、国を巻き込めばセキュリティは完璧になる。


この研究所のおかげで少し後になるが、特殊な3D撮影方法とリアルタイムの通信方法を用いて、現地の虫の映像をこちらで3Dで再現すると、僕が現地に行かなくても虫を使役出来る技術が確立した。

それまでは秘密裡に、飛行機に虫を数匹持ち込んで現地で放し、その地の虫に入る事で、僕が行かなくても活動出来る場所を増やしていたが、この技術のおかげで、更に活動地域を増やす事が出来た。


機関の職員が、秘密裡に小さいデバイス数個を、現地で虫を見つけて起動するだけで完了する。

一度その場所の虫に入れば、そこからは通常の方法で使役出来る虫を増やせる。

一度虫に入れば、何年後でもその場所の虫に入れるのも一緒だ。

世界の高地や寒冷地では、虫に中々会えない場所なども存在する。

今まで虫の支配の未到達だったエリアを、次々と埋めていった。


高校・大学の頃に中断していた外来動物に関しても、寄生虫に特定の動物に入った場合のみ、爆発的に増殖させるという方法で、駆除が可能になった。

ただ、外来だろうが関係なしに、動物というほぼ生態系の頂点にいる生き物の、急激な減少は影響が大きすぎる。

時間をかけてゆっくりと排除し、日本在来の狐や鼬や狸達に、生活圏を広げて貰いながら駆除するという手法が必要で、外来種の魚や植物とは比べ物にならない手間が必要だった。

これにも研究所の優秀なスタッフによる、地道なデータ化により対処する。


外国には特務として、人的被害が多い蝗害や、マラリアなどの伝染病蔓延の場合に、日本からの支援として公式に派遣される表の機関。

あらゆる国が自国に来た表の機関の動向から、害虫排除の方法を探ろうとしたが、視察くらいしかしないのに、行く先々で被害が覿面に減る実績だけが積み重なり、諜報機関の混乱は増すだけだった。


日本国内では環境改善や犯罪の露見などに、昆虫を使った超常の手段が取られている事は、既成の事実になっていたが、世界中の国々も日本がその技術を持つ認識に至る。

各国のスパイの暗躍などもあったが、どんなに表の機関を探っても、どんなに異変が始まったところを調べても、手も使わず現地にも行かずに、虫を使役する僕にたどり着く事は出来なかった。


外来種の居なかった時代に戻して次の世代に渡し、世界の大きな昆虫災害を防ぎながら、日本をあらゆる面で再生できるのなら、僕の一生がそれで終わるのも、一つの到達点としても良いかと思った事もある。

だがやはり、僕の能力を国際戦略においての、本格的な兵器とすることを決めた政府の意向で、次のステージが始まった。

このステージに進んだら、世界を、歴史を、地球を変える。

怖気づく自分に自問自答の時間が増えた。

この時の分岐点は後々まで記憶に残る位に悩んだが、今では僕は自分でも望んでいたのだと思う。

昔、2人に世界を変えると言った事を、真実にするために覚悟を決めた。


僕とは一切関係の無い表用の機関が何もせずに功績を得る一方で、政府は裏で水質浄化という強力なカードを存分に振るった。

水質浄化をする対価として、莫大な利益や権益を日本に渡す。

だが、それを支払ってもなお、水質が浄化した国は圧倒的に成長を遂げる。


水問題が関係ないと言える国は、ほぼ無い。

特に発展途上国にとっては、水問題が解決すれば、出産・健康・工業・林業・農業・漁業など、ほぼ全ての初期的な悩みが消えるのだ。

人口が増え、しかも健康な生産人口が増えた上に、農業が安定し安全な食べ物が供給される。

更には微生物による分解で、ありとあらゆる場所で、古く汚濁したままで凝り固まったゴミの堆積物を処理するオプションを用意する。

これは河川中や、港湾部の海中の浄化の必要性から派生したオプションだが、後になるほど重要性が増し、単体での交渉材料になったものだ。

水質浄化と、公的な街区どころか各民家レベルでの、ゴミの分解による浄化・清潔化は死亡率の劇的な減少を齎す。


国の発展は生産人口の増加による国力増加が、閾値を超えると爆発する。

人口が多い国でも少ない国でも、それまでに形成されていた生活圏の中に生産人口が飽和して、力が過飽和になる状態が来ると、急激に音を立てるかのように成長するエリア・業種が発生する。

この大小係わらない成長成功モデルは、社会学などの見地からも非常に興味深かった。

それまでは生活に、生存に必死だった国民の生活が潤い、余裕が出来る。

その域まで行けば、後は全国に広がる加速度的な発展しかない。

ほとんどの国にとって、史上最大の変換点が訪れる。


先進国にとっても、水質を始めとした環境汚染の浄化の威力は絶大だった。

過去の発展のために、国土を疲弊させ過ぎていた国々だらけだった。

ヨーロッパ圏の有名な国ではそれが顕著で、日本のプロジェクトによる土壌改良・水質改良は、欲しいものではなく、是が非でも無ければならないものと認定された。


先進国も日本に取り入ろうとするのに必死だったが、中に深刻さでレベルの違う国があった。

北極圏に近い、北の大国だ。

それまでは資本主義圏に対抗する東の代表格としての大国であったが、数十年にわたって農業政策の失敗を重ね、努力をすることを放棄した国民の作った農地は、あまりにも壊滅的で簡単に取り返しのつくレベルでは無かった。


先進国はそれぞれが、過去の無茶や失敗のマイナスの支払いを、是正を求められている様な状態だ。

何故か日本に対して支払わなければならないという状態に、当然面白くはないのだろうが、他の先進国に劣る訳にはいかない。

対抗して肩を並べなければ、差が広がるほどに後が大変なのは言わずもがなだ。

昔から親日国として公言し、世界中に認知されるほどだった数個の国の中には、世界トップの経済力の国も含まれている。

国連未加入だが歴史的な文化圏の正統な後継の国や、母国語の一部に日本語を設定していたポリネシアの小国、アジアとヨーロッパの境界にあるこちらも偉大な歴史を継いだ国、そして世界一の大国。

昔からの親日国といわれたこれらの国の国力上昇、いや国力爆発は、他の国を焦らせる等という甘い状態で待つことを許さなかった。


一部を除いた全世界の国が、日本を最大級の友好国として優遇している。

何個かの最貧国は、日本からの恩恵を受けるために、一時的な被統治国になりたいとのオファーまでしてきた。


この流れを劇化させるために、更なる昆虫を使った地中の攪拌などの直接的な土壌改良や、犯罪率の低下などの各種のプロジェクトを、昔からの親日国を中心に開始すると、世界中が日本の元に集う流れになった。


砂漠の緑化にも成功した。

別の研究者が発明したゴミとシロアリとアリ類を使って土壌改良を行い、草地を生やして森を広げる。

この手法を、虫に指令を出して爆発的に促進させる。

土壌を改良し、他ではありえないほどの受粉率で植物が生え広がる。

ゴミの収集まで虫にさせてスピードを速め、街からゴミも消える。

このプロジェクトは、中東やアフリカで狂気に近い日本フィーバーを生んだ。

砂漠に特化して生息する固有種も多いから、砂漠を完全に消滅させるつもりはない。

人の生活圏が広がり、ある程度の折り合いが付いたら終わらせる予定だ。


時を同じくして海洋浄化も開始する。

水質自体も浮遊ゴミも、虫の力で解決出来ないものは無かった。

海洋国家にとって、これほど喉から手が出るようなものは無かった。

最初は日本と秘密裡な条約を結んだ国から始まったそれは、やがて広大な海を全て対象とする事になる。

マイクロプラスチックもオキアミの総数の前には、収集不可能な物質ではなくなり、大型魚類に集積する手法で回収が可能になった。


アフリカや中南米・東南アジアの国で、水質浄化をしたのに、国民の無理解や不勉強、自己の利益のみを優先する人間のせいで、再び悪化させる事例が多発する。

一度行った場所では、全く同じ指令を出すだけで何度でも再現できる。

だが、その度に日本に貸しを作る事に、国の上層部は猛烈に怒った。


どの国家も水質関連の刑罰を重くし、教育に力を入れる。

更には各地の有力者にとっても、せっかくの国力向上が無為にされるのは耐えがたい事態だった。

全体が成りあがる時に各地のトップに居る事は、数世代の長さに渡っての成功を保証する。

その程度の事は、成功者なら誰もが知っていた。


国は他国の成功例を見て、水質が国力を強烈に増加させる事を知っているのだ。

国民の啓蒙に必死になった。

各地の有力者による恐怖支配という実行力と、国家の警察力による強制的な啓蒙は、途上国の国民を急激に変化させる。

自然保護の意識が上昇し、教育によって民度が爆発的に上がっていく。


水質が良くなれば貧困が消えて、貧困が無くなれば戦争も消えた。

宗教だ、民族対立だ、利権の奪い合いだと、争いの種は消えない。

だが、貧困が消えて満たされていれば、直接的な戦争という手段を取らなくても解決の道が出てくる。

これは何度もシミュレーションされていた事態だったが、初めて実証された形になった。


水質浄化・土壌改良により改善した食糧事情と健康状態の改善は、空前の人口爆発を引き起こした。

来年は総人口300億人になるという。

今まで発展途上だった国々の人口がもうすぐピークを迎え、あと5年くらいで減少に向かうと予報が出ているがどうなるだろう。





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