014
「ここからは、観察だけだから、予定ある人は帰って大丈夫だよ。僕は夕方まで観察続けるから」
「部長と一緒にいたいから、ここにいます」
「まったく同じ!」
「あはは、ありがとう」
「いつもの作業あるならやってください」
「そう?じゃあお言葉に甘えるね」
リュックから水質改善のノートを取り出して、意識を繋げた虫を使って、分かる限りのデータを書き留めていく。
昨日は全然出来なかったから、二日分のデータを記入する。
雨のテントの中で、僕がペンを走らせる音だけが響く。
2人はカエルを見たり、僕のノートをチラチラ見ている。
「ふー、やっと終わった」
「その記録って毎日続けているんだよね?パソコンのデータは2年前くらいからあったけど・・・何年続けているの?」
もうこの2人には全部を話すと決めている。
「うん、小6の夏くらいから始めたんだ。水質浄化をしているんだよ」
「水質浄化?」
「え?え!?川が綺麗になったやつ?」
「うん、そう」
「え?だってあれってこの付近の県の川が、どんどん綺麗になってるってニュースで・・・」
「うん、あれ、僕が犯人なんだ」
「全国ニュースどころか、凄い騒ぎになってるやつじゃん!!環境省の調査団来た奴でしょ!?」
「私たちに教えてくれるんですか」
「うん、僕を好きになってくれた、信用できる2人には、全部言おうって決めたんだ。でも、聞いたら僕を嫌いになるか、怖くなると思う。その覚悟で聞いてくれる?」
「絶対にない!」
「私もそんな事にならないです!」
「ありがとう・・・じゃあ時系列で話すね」
僕が手に入れた能力の話、高須君事件、ミツバチの話や河川浄化の件、そしてイジメ撲滅・暴走族排除の話まで一気に話す。
被害者の惨い状況は、実際の事を一切隠さないで話した。
話し終わりの近くに、周りに居たハエを集めて、少し離れたテーブルに一列に留まらせる。
「これが僕の能力」
ハエは横に一列に並んだ状態から、カエルのケースの周りを等間隔で円で飛んで、今度はテントの屋根の内側に丸の形で留まる。
「はーすっごい話。超能力者だろうって話してたけど、当たらずとも遠からずだったね」
「やっぱり部長は、悪い事してなかったですね」
「悪い事をすると虫に襲われるって話、聞いたことあるよ。そっかあの事件ってぶちょーだったのか」
「隣の県のいとこからも聞いたことあったし、私の学年でも広まってました」
「凄い事してるなー」
「僕はね、この能力で世の中を良くするって決めたんだ。中二の僕が言うと、正しく厨二な風に聞こえるけど、これはね、僕の・・・恩返しなんだ。
この力は使い方で、世界にもの凄い影響が与えられる。だから僕の素性がバレる事だけは避けたいんだ。だから隣の県か、その先の県をスタート地点にして実験を進めているんだ」
「良く考えているなぁ・・・そうだね、攫われて解剖されちゃうね、冗談じゃなくて」
「うん、国が・・・日本だけじゃなくて世界から狙われるの、確定ですね。もう3つの県の川が綺麗になってるんでしたよね。これってもっと他にも色々出来るんですよね」
「うん、他にも時間が無くて出来ていないけど、外来種の駆除も行う予定なんだ。小規模の実験では成功している」
「・・・それってさ、あたし達が手伝うって出来ないかな?データ整理とかだけでも」
「ええっ?」
考えても見なかった。
「そうですよ、私たちもずっとビオトープだけしてても時間空くし、漫画持ってくる?とか言ってたくらいだし、部長の研究のお手伝いできるならやりたいです」
「いや・・・うん、データ整理してくれたら助かるのは助かる」
「本当はパソコン上にデータ入れたいんでしょ?」
「うん・・・いつもはノートでまとめた数値を、家でパソコンに入れている」
「じゃあ、うちにノートパソコンあるから、それ持ってきます。直接データを入れましょうよ。下計算とかデータ入力とか私たちでやるから、部長は元の数字を読み上げるだけにするってどうですか?」
「それ・・・効率化とかのレベルじゃないな・・・」
「その分空いた時間で、部長は部長にしか出来ない、新しい事を始めてください」
「いいね~そうすれば、毎日ぶちょーにも会えるし、ぶちょーも楽になってウィンウィンだね」
「本当に・・・そんなのいいの?」
「何が駄目なの?」
「僕だけ得しすぎじゃない?」
「私たちも得してるからウィンウィンなんですよ?」
「え・・・だって・・」
「好きな人に会えて、好きな人の手伝いが出来る。あたし達がどれだけ嬉しいか知るべきだね、ぶちょー」
「そうそう、私たちの事も、もっと知ってもらえるし、マイナスが無いんですよ。ウィンウィンです」
「あはは、本当にありがとう。じゃあお手伝いをお願いします」
「「はい」」
「でも、さっきも言ったけど、一切表に出す事は無いから、僕の手伝いをしても、誰にも褒められたり評価されることはないよ。それは覚悟しておいてね」
「「はい」」
「でもさ~、この世の中が良くなる流れを、あたし達が手伝ってるって思えるのって、かなりの御褒美だよね」
「うん!私、かなり興奮してますよ。誰にも知られなくても世界の・・・地球の再生に関われる中学生なんて、まるで映画の登場人物ですよ!」
「そこまでの規模に・・・うん、するつもりなんだ。2人ともありがとうね、本当に本当にありがとう」
3人で雑談に戻る。
色々と質問されて能力の事や、今までの事を答える。
カエルは安定している。ビオトープの水を加えて、また数時間の様子見だ。
今日は次でおしまいかな。




