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013


携帯のアラーム音で目が覚める。

朝の3時半だ。

先生を起こして、歯磨きやら何やら用意をして、旅館のロビーに降りると、用意を終えた2人が待っている。


なんか晴れ晴れとした2人の顔を見ると、元気が湧いてきた。


旅館の支払いは先に終わっていて、早朝に出ていくことも伝えてある。

荷物を車に詰め込んで、山のふもとギリギリの場所まで車で移動。

途中のコンビニで朝飯とは別に、もう一食分のおにぎりを買って出発。

移動する車中で朝飯を食べる。


山のふもとの神社の駐車場に車を止めて、頭に装備したライトの光を頼りに山登りを開始する。

このヘッドライトは凄い。

両手がフリーで、値段が安いのに範囲も広くてハッキリ見える。

こういうツールがあれば、安全に歩ける。

先生が先行、美琴・昌・僕の順だ。


無言で登っていたけど、山道自体はちゃんと分る作りで、迷ったりはなさそう。

滑落したら危ないっていう場所はあるから、そういう場所では先生の注意に従って、順調に上を目指す。


一時間半くらいで目的の渓流に着く。

僕が把握している状況だと、渓流沿いに下に向かうとすぐに1匹いる。

「みんな、耳を澄ませて」

フィーフィーという声が遠くに聞こえる。

「下流側だね」

「「うん」」


この頃には薄い青い光に包まれて、薄暗い山の中でも、ライト無しで見えるくらいに明るくなっている。

「先生、あと5分くらい待って、もう少し明るくなってから、僕と先生で下流に行きませんか。2人に探索に加わって貰うのは、さらに15分は待って貰うっていうのはどうでしょう?」

「あたしは大丈夫だよ」

「私も行けます」

「いや、その提案が正しい。4人の中で能力的には、高島が一番運動能力が高いだろうけど、道が無い沢だからな。少しでも不安要素がある時に、女子を動かすことは出来ないって判断だろう。お前らも男を立てる事を覚えて、損はないぞ」

「あはは、先生・・・そんなぶっちゃけないでください」

「「そっか・・・はい」」

「じゃあ2人はここで待機ね。僕ら時間には戻ってくるから、そうしたら一緒に探索始めよう」

「「うん」」


下流に移動すると、すぐに1匹目が見つかる。

見つけるのが早すぎて不自然に見えるのが心配だけど、ライトを付けて見るとカジカガエルの色は、若干周りから浮いて目立つ。

そこまでは不自然じゃない。

7分半の間に行ける範囲で、とにかく大量に捕まえよう。


「先生、そこにいますね」

「え?どこ?」

「その岩のところです」

「すごいな、そんなに簡単に見つけられるって。老眼が気になってきた俺とは大違いだ」

「あはは、老眼って分かりづらいんですか?」

「遠い場所に影響はないと思ったけど、全然見つけられなかった」

「先生、あっちにもいますよ。あの流れの手前の岩の下」

「え?あれがそうなのか?・・・うーん、これはあれだな。手分けするか。カエル探しはやってくれ。俺は、あの2人のために安全なルート設定するわ」

「あ、いいですね。凄く助かります」

「よし、じゃあ足なんか滑らせるなよ」

「はい」


2匹をピックアップして、更に下流に下る。

今はまだ危険な場所は無く、流れの無い川に少し入る程度で、どんどん歩ける。

そこから3分ほど歩いた場所で、大量の群れに囲まれる。

狙っていた場所だ。

周りもすっかり明るくなってきた。

「先生、ここまでなら危険な場所も無かったし、あの2人を迎えに行きましょうか」

「そうだな、この綺麗な声の大合唱を聞かせてやらんとな」

クーラーボックスをそこに置いて、上流に戻る。


4人で群れのエリアに帰って来て、青い景色の中、しばし歌声に酔いしれる。

「この合唱が地元で聞けるなら、この苦労も安いかもね」

「凄いです・・・この場面、きっと忘れられない・・・」

2人も感動している。


同じ鳴き声のようで、細かい変化が気持ち良い。

ずっと聞いていたいけど・・・5分ほど経ってからやっと動き出す。

「さあ、捕まえよう。すでにオス2匹捕まえている。身体が大きいのがメスだから、あとオス1匹、メス3匹見つけて。女子2人は水の中に入るのは禁止ね」

僕の合図で4人が動き出す。



昨日の話から、僕は覚悟を決めていた。

僕を好きになってくれた、ずっと一緒に作業をしていて、間違いなく性格も性根も良い事が分かっている、信用できる女性たち。

この人達に秘密を明かせないなら、僕はもう生涯誰にも明かせないままだ。


僕の制裁は、迷惑者本人から行う事をルール化している。

都市伝説も補強してくれて、巻き込まれた親族の恨みは本人に向かう。

とはいえ、罪悪感が無いなんて事は無い。


僕はサイコパスなんだろう。

必要だと思ったら、人を数として認識し、個別の事情や個別の性格を考慮しなくて気にならない。

気にならないモードに出来る、が正確な言い方か。

考えてしまって、ジタバタ暴れる時もある。

心に澱が積もる。


この心の澱に捕まると、いつかどうにかなるんじゃないかという恐怖が、気にならないモードで居続ける事を僕に強要する。

この2人に明かせなかったら、僕はいつか澱に殺される。



先生がカエル探しで僕の方を見ていない時に、2人にシーっと指でジェスチャーして、指でカエルの場所を教える。

「あっ!メス見つけた」

「私もです!」

先生がスピードに驚く。

「やっぱり若い子は目がいいんだなぁ」

クーラーボックスに入れて、また指で2人に指示を出すと、すぐに見つかる。


「おお!今度はオス!」

「私はメス見つけました!」

「「おおお~」」

「じゃあこれで予定数見つけたね。これ以上はビオトープの適正数を超えちゃう」

「「やったね!」」

「じゃあ、2人のリュックから空のペットボトル出して、川の水と川の砂を集めよう」

出来るだけ元の環境の物を集める。


「やったね、ミッションコンプリートだ!!」

「しかし凄いな。全部で5分も掛からないで終わったな。若いっていうのはやっぱり凄いなぁ」

「先生、若い若い連呼するとおじさん臭いですよ」

「あはは、おじさんなんだよ。じゃあ帰るか」

「「「はい!」」」


河原から山道に戻り、下山を始めるあたりで雨が降ってくる。

予報では今日は曇りで、雨は降らないはずだったのに・・・

全員にレインポンチョを配って、リュックでふくれあがった大きなテルテル坊主が4人出来上がる。


「足元を滑らせないように、ペース落として進むぞ」

「「「はい」」」

かなりジワジワと時間をかけて下山。

2時間ちょいかかって、車の所まで戻る。

「ふー疲れたな」

「先生、先頭ありがとうございました。少し休憩してから出発しますか?」

「いや、生き物を乗せているし、少しでも早く動こう」

4人で帰路に就く。


麓に着いた時点で、まだ朝の7時半にもなっていない。

地元には11時前に着いた。

けっこう本格的な雨になっている。

到着してすぐに、用意してあった発泡スチロールのケース3つに、渓流の砂と水を出してカエルを1ペアずつ放す。

上に細かいメッシュの網をかけて、温度慣らしと環境慣らしだ。


テントのテーブルの上でカエルを観察しながら、ビオトープの水を2つのケースだけに、量違いで段階的に加えて変化や体調観察だ。

「先生、ここまでくれば大丈夫です。お疲れでしょう。後は僕たちがやっておくので、お帰りになって休んでください」

椅子で居眠りしていた先生を帰す。


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