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012


夏休みが始まって1週間が過ぎた土曜日、4人で学校に集合。

先生が車を出してくれる。


途中のホームセンターでヘッドライトと登山用のステッキ、もしもの時の救急キットと非常食・防寒用アルミシートと、使い捨ての雨具のレインポンチョを人数分部費で購入。

リュックサックや服装やトレッキングシューズは各自で用意してある。


同じ県内とはいえ車で3時間もかかる。

それでも朝から動いていたから午後すぐに目的の宿に到着。

メインの荷物を置かせてもらって、捕獲用具一式と前から使っているクーラーボックスに大量の飲み物と、捕獲後の為の酸素缶を入れて担いで、目的地の渓流の下流部分に向かう。


下流に一応行ってみようという、先生の言葉で決まったスケジュール。

メインの渓流狙いの朝の前に捕まえられれば、危険の多い行動を取らなくて良いっていう提案だ。


正しくもっともで反対のしようがない。

ただ、僕は虫の力でどこに生息しているか、すでに把握してマークをさせているから、この行動が無駄になるって知っている事だけが問題なだけだ。



こっそりと今から向かう先が、水泳可能な河川であることを昌と美琴に教える。

一応、念の為に水着持ってくるって言っていたからね。

僕もリュックに短パン型の水着とバスタオルを入れて出発。


近くの定食屋で昼食を取って、歩いて15分で下流のエリアに着く。

河川敷きを利用したキャンプ場になっている。

4人で手分けして、カジカガエルの目撃情報をその場に居た人や、キャンプ場の店員に聞いてみるが、やっぱり皆無だって。

地元の人に聞いたら上流には居るけど、滝から下にはいないって言う。

4人で集まった時に地図で調べると、山の途中に小さい滝があるのを見つける。

どうやらここで生息域が分かれているらしい。


今日の調査は完全に無駄になったらしいと落ち込む先生。

トライ&エラーです。だったら俺たち泳いでもいいですか?って聞いたら、なんでそんなに用意がいいんだって笑いながら許可してくれた。


河川の水位は十分にあるし、水も綺麗だ。

川の水は危ないから飲み込むことはしないこと、水分の補給をかならず小まめにすること、深い場所や流れの早い場所に近づかない事を約束させられる。

女子2人共々キャンプ場のトイレで着替えて、先生はキャンプ場の休憩スペースの一画を借りて、一応僕たちを見ているって事だ。


3人で水着に着替えて川で泳ぐ。

蚊や虻やハエには近づかないように指令、水生昆虫やバクテリアも遠ざける。

川で泳ぐなんて小学校の中学年以来だ。

でも海より気持ち良いかも。

すでにこの川は浄化済だから水質がいい。

今回来ることが決まってから、一度クリーニングも行っている。

涼しいし、水の流れも穏やかだし、海と違ってベタベタもしない。

美少女2人とキャッキャいうって最上級の楽しみだし・・・


2人とも学校とは違う水着。

美琴は胸のところに大きいリボンのついた可愛い白いワンピース。

昌は上は赤いビキニで下はデニムに見えるショートパンツのタイプだ。

濡れた2人はいつもと全く違う女性に見える。


3人で泳いでハシャいで、河原の石の上で休んで泳いで・・・

真夏の太陽の下で、可愛い子が代わるがわる僕とハシャごうとしてくれるっていう、これが青春って言うんだろうな。

僕は2人から好かれているのかも知れない・・・そう思えるくらいにはモテたと思える。

2時間くらい遊んで疲れたところで、先生にそろそろ戻るかって言われて宿に戻る。



水着から私服に着替えて4人で歩く。

僕と先生が後ろで女子2人が前の2列で、川沿いの堤防の上の土で出来た道を歩く。

髪がまだ濡れたままの2人が、代わるがわる僕に振り返って話しかけてくる。

濡れた髪が広がって、夕方の黄色を帯びた光に、顔が、全身が彩られて、一々見とれてしまう。


金色に光る美少女達に、いつもの受け答えすら覚束ない。


先生が僕の肩を肘で小突いて、「お前はどうするんだ?」なんて聞いてくる。

うーん、小学校の中学年のころまで何人かに片思いした事はあるけど、高須君の事件から、そういう感情を持たないようにしてきた。

もし好きになった人が悪行を働いたら、感情で間違えるのが怖かった。

だから研究に没頭する自分の性質にかまけていたっていうのが本音だ。

うーん・・・どうするんだ?か・・・どうするんだろう、僕。

それに先生から見ても、そう見えているって事なんだろうな・・・


宿に帰って、泳いで腹も減っていたし、明日の朝も早いので夕飯を早めに取る。

温泉ではないけど大浴場があったので、さっさと入浴。

先生は酒を飲んでさっさと寝てしまった。


カジカガエルの居る場所は把握しているけど、薄暗い内から山に登るから何かあった時に、どの虫で何をするかをシミュレーションしていると目が冴える。

先生のイビキも気になって、外の空気を吸いに浴室の手前の休憩所から外に出ようかと思って歩いていると、2人が脱衣所から出てきた。

あれ?二回目の入浴していた?


「お!ぶちょー」

最近、昌は部長ではなく、間違いなくひらがなでぶちょーって呼ぶ。

発音は「ぷちょん」に近い。

「おお、2人ともまたお風呂入ったの?」

「まあねぇ、広いってだけで入りたくなるよね」

「ああ、確かにね」

「部長はどうしたんですか?」

「明日の事考えていたら目が冴えちゃってさ、外の空気吸おうかなって・・・」

「なんだ、じゃあみんなで休憩しようよ」

「あ・・・うん」

僕はどうやら濡れた髪に弱いのかも知れない。

でも、風呂上りで浴衣の濡れ髪の、美少女2人の誘いに乗らない男なんているのか?


外に出ると、一応中庭的なところから外につながっている。

置いてあったサンダルで、3人で近くの自動販売機を目指す。

2人にジュースを渡して、自分も飲みながら、近くの空き地の前にポツンと置かれたバス停のベンチに座る。

なぜか端に座ったのに修正させられて、両脇に2人が座ってくる。


屋根もなくて、上を見上げれば満天の星空だ。

「・・・・・・・・・」

思わず言葉を失って、3人で宙を見上げる・・・


「ねぇ、ぶちょー、それで分かったの?」

「え?」

「美琴から言われた意味」

「ええっ?」

「もちろん私が部長に何を言ったかって情報は、昌先輩と共有してますよ」

「ええ・・・だって・・・だから・・・」

「あはははは、ぶちょーのそういうトコも好きだよ」

「え?」

「だからあたし達、2人ともぶちょーが好きだって言ってるの」

「そ、私も部長が好きです」

「え・・・あう・・・その・・・ありがとう・・・」

「「あはははは」」


「一応だけど・・・なんで?」

「そりゃーあれだけ凄いトコ見てればね」

「うん、部長は自分がやってる事とか持ってる知識が凄いってこと理解してます?」

人を裁くようになってから、とにかくトコトン調べる癖がついた。

知らないままで後で間違えたって場面もあるだろうけど、人も自然も間違えて良い訳が無い。

少しでも間違える可能性を減らしたいって思いは脅迫観念になっている。

結果として知識も増えてきたとは思っている。


「う・・・いや・・・その、自分でも調べる方だとは思っている。でも、調べて知った事をやっているだけで、やる事は特別な事じゃないって思うけど・・・」

「特別だよ」

「うん、学校をあんなに動かす人、他にいないですよ。自覚して下さい」

「あはは、そうか・・・そうなっちゃうか」


「それにさ、ぶちょーは色々と気を使いまくるしさ・・・美琴も言ったらしいけど、ビオトープの不自然さはあたしもすぐに気づいたよ。あたし達も色々調べたんだ。ビオトープで一度も失敗なしで出来るなんてありえないんでしょ?もっと乱高下する状況で失敗も多い・・・それより集める時にあんなに成功が続くなんて、日常生活であり得ないよ」

「そうそう」

「あ・・・それは・・・」

「良いんです、部長!昌先輩と話して、それに関しては私たちが気づいてる事は伝えるけど、部長が教える気になるまでは聞かないって事になりました。あの別ノートも私たちに気を使わないで作業してください」

「う・・・うん、ありがとう・・・」


「今までの部長の行動を見てね、部長があれだけ真剣にやってるんだから、なんか意味がある事で、それは悪い事じゃないって事を信じられるくらいには、私たちは部長の事を理解してるし、部長を好きになってます。だから私たちのせいで、部長の作業に支障が出るのは嫌なんで、やりたい事やってください」

「そうそう、美琴の言う通りだよ。ぶちょーが悪さするワケないって確信だけはあるんだ。実は・・・準備室のパソコンで先生が間違えて消したデータがあって、復旧したいっていうから、あたしと美琴で調べて、復旧ソフトの無料期間で今までのデータをリカバリーするって事があったんだ。そこでぶちょーが作った表を見ちゃったんだ」

「え?そうだったの?」

「うん、偶然も偶然だったけど・・・あのいつものノートと同じ項目で・・・あたし達の頭じゃ理解も出来ないけど、あの膨大だと思ってたノートのデータがほんの一部だなんて思いもしなかった・・・ぶちょーが何してるのか分からないけど、あんなに真剣にやってる事が悪いことのはずがない」

「う・・・その、ありがとう」


「あたし達が心配してるのは、あたし達が同好会に入ったせいで、ビオトープやる事になって、それで足を引っ張ってるんじゃないかってこと」

「それは無いよ!2人が興味持ってくれて、楽しそうに作業してくれて、本当に嬉しかったんだ」

「「良かった~」」


「そんな心配までしてくれていたんだ?」

「「当たり前でしょ」」

「何回でも言うね、ぶちょー、あたしぶちょーの事、本気で好きだから」

「私もです。大好きです」

「だからぶちょーの足引っ張るのだけは嫌なんだ、あたし達」

「ありがとう・・・僕は・・・どうすればいいんだろう・・・」

「どっちかとすぐにどうにかしたい?」

「え?いや、それは・・・」

「あはは、部長いま『無い』って言ったら失礼になるって思って言葉止めましたよね?」

「いや、違うよ、いや、言葉止めたのはそうだけど、こんな可愛い2人に同時に好かれるなんて、どうしたらいいのか分からないから、どう言って良いのか分からなかっただけなんだ」


「「可愛い2人!」」

「そこ?」

「そりゃそうだよ。そっか、じゃあぶちょーの気持ちが決まるまで待つよ」

「私も待ちます。昌先輩とは、どっちが選ばれても恨みっこ無しって決まってますから、ゆっくり考えてください」

「え?それって・・・」

「あはは、また同じ約束してるんだ、あたし」

「あはは」


「あ、ぶちょーならあの時と違って、二股かけられても嫌じゃないからね。それだけの価値があるって知ってるから、二股したいなら堂々と言ってね。美琴もそれでオッケーなんだよね」

「うん、まったく問題ないです。部長、その選択肢も考えていいですからね」

「いや、そんなワケにいかないだろ・・・」

「前の時とは話が全然違うよ。そんなワケに行くから、本当にそうしたかったら気にしないでね」

「え・・・あ・・・うん、話はわかった・・・」

「けっこう遅くなっちゃったね。もう帰ろうか」

「そうですね、明日は3時半起きの4時出発ですからね。もう睡眠時間5時間半切ってますよ」


「あ・・・うん。あの!」

「「はい」」

「2人とも・・・本当にありがとう。こんな僕なんかを・・・もう少しだけ時間ください。ちゃんと色々考えます」

「「はーい」」

3人で旅館に帰る。

そのまま部屋に戻って一瞬だけ色々考えようとしたけど、そのまま眠りに落ちた。



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