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夏休みが始まる。


3人共に成績は上位なので補習なんかはもちろんない。

夏休みって言っても3人は毎日顔を合わせている。

当番制でローテーションを組んでいるのに、全員ビオトープに集まって、日差しが強すぎるだの、汲み置きしてカルキ抜きした水が減っているだの、色々とずーっとやっているのだ。


僕の趣味に付き合わせているような罪悪感は、とっくに無くなっていた。

僕は虫の研究と実験を止める訳にはいかないから、片手間になりがちなのに比べて、2人の方がよっぽどガチ勢だし。

2人とも楽しくて楽しくてしょうがないみたい。

秘密基地を作っている感覚なんじゃないかな?僕もそう思っているし。


どっちからも質問が次から次に来る。

その場で答えられない内容も多くなり、宿題で調べることも増えてきた。

2人とも知識の充実が楽しいみたいで、調査した水質や個体数の増減に一喜一憂しながら原因を探している。

微生物に関する調査も考査も出来ないから、どうしてここまで上手くいっているかが時に不整合が出る。

自然の事は分からないね~って言いながら、不審に思われないように微調整したりと色々大変。



ビオトープ作りは活動期と待ち時間が交互に来る。

その当時は自分のミッションの繁忙期だったので、他の2人がいる時でも、時間を無駄にすることがどうしても出来ない。

色々なビオトープの記録を2人に付けて貰いながら、虫部門を僕が受け持っているフリをして、時間を捻出。

必死に自分の研究用の記録を付けていた。

ビオトープのノートと別のノートを持ち込んで、虫を使って調べた結果を、暗号化してとは言え、鬼のように書き込む僕に、2人が違和感を持つのは当たり前だった。


「部長・・・そろそろ教える気になりませんか?」

美琴が急に聞いてくる。

全く関係ない2人でのビオトープの作業中だったから、完全に呆気にとられる。

「え?何?なんの話?」

「私たちに秘密でなんか膨大な事してますよね。部長が気づかなかったから、申し訳ないけど、その別ノート書いてる時にちょくちょく覗かせて貰いました」


何ぃぃいいいいいいい!?

「あはは、別のノートは・・・僕の妄想ノートだよ。自分が自然を動かせるならこうするっていう、シミュレーションを数値化して付けているんだ」

「あんな大量の項目で?ビオトープの私たちの記録ノートだって、私の人生では見た事もない複雑な項目数なのに、部長のやつって意味も何も分からないほど緻密ですよね。しかも雨が降ったりお天気が続くと影響受けるくらいに精密な記録。妄想で毎日あれだけの膨大なデータを考えて数値化して、それを私たちから隠しながら付ける?毎日時間を惜しんで少しの時間でも必死に?」


そこまで数字だけで見抜いたか・・・

日付はそのままで書いていたのが失敗か・・・

しかも無駄に過剰に暗号化したのがそもそも怪しかったか・・・

学校のある内は、授業中にイジメや暴走族の排除の調査、家に帰ってから水質改善、空いている時間でミツバチの補填っていうのが僕のローテーションだった。

夏休みに入ってビオトープに時間をかけられるようになってから、その分の歪みがイジメ・暴走族・ドキュン関連に及んでいた。


水質改善とミツバチの補填は、相手が自然なので、1アクションに1つの変化が出て、それを受けてまた1アクションという形で、やることは情報収集がほとんどだ。


人を裁く部分は情報収集に手が抜けない。

他と違ってアクションを起こして、トライ&エラーが出来ない。

もう発生地の県から僕たちの県を通り過ぎて隣県に進んでいたが、スピードが落ちていて焦っていた。


長期休みは学校でのイジメが追いづらくなる分、暴走族やドキュンや半グレに集中できる時期でもある。

この数年、長期休みに町の不良を排除して、その恐怖が広がってからイジメ対策に乗り出す事で、都市伝説が広がって、制裁を受けた学生に恐怖を植え付ける事が出来るというサイクルが出来ていた。


この制裁のスピードは一定であることを自分に課していた。

スピードに変化があると、それを元に夏休みなどの生活習慣を見抜かれてしまう。

完全な記録を元に推理する人物がいれば、この数値の変化は犯人が人間なら学生だと気づかせるだろう。

制裁する相手側が学生のイジメと町の不良だから、長期休暇で変化が出るのは良い。

でも全体のスピードが下がると、それはやっている側の事情によるものだと勘付く人間が出てくる。

僕が簡単に思い付くんだから、他に思い付く人間が出ないはずがない・・・


元からスピードを変化させない事は決めていたから、余裕のあるスピードで進めていたはずだけど、集中してしまうと勝手に速度があがってしまう。

何度も速度を落としたが、ここ数年はノウハウの蓄積もあって、どんどんあがる一方だった。

極端に変化させる事だけは避けないと・・・


それに焦って、水質浄化の記録をビオトープの作業の合間にやっていたけど、この研究はたしかに調査項目も使っている虫の種類も膨大だ。

ビオトープの比じゃない。

ここまでハッキリと怪しいと言われてしまって、今までのように記録を纏めるわけにはいかない。

どうすれば・・・

思わず黙り込んでしまう・・・


「それに・・・私や昌先輩が毎日ビオトープ来てるのって何でだと思ってます?」

「え?楽しいからじゃないの?」

「うーん・・・部長は知識はあるのになぁ・・・じっくり一度考えてください」

「え?・・・」

「それと、やっぱりどう考えても魚集めや生き物集めも、ビオトープの数字が悪くなっても直ぐに復活するのも・・・何もかも・・・あんなに順調に行く訳がないです・・・私たちに隠さなくちゃいけないのかも知れませんが、あれだけ続けば私も昌先輩も気づきます。出来ればもっと私たちを信用してください」

「え?え?」

「さ、終わったし、向こう戻りましょう」

「え?・・・あ・・・はい・・・」

あれ・・・やっばいなぁ・・・僕が何かしているってのはバレてるのか・・・

夏休みに毎日来る意味・・・うーん・・・


「部長、悩んでますね?」

前を歩いている美琴が振り返りもしないで言い当てる。

「あ、はい」

「じゃあ、ヒントです。私も昌先輩も仲良くなっただけで、呼び捨てにしてなんて自分から言いませんし、あんなに必死に話しかけません」

「え?・・・」

「あ!昌せんぱーい、そっちの方終わったんですか~」

走って行ってしまった・・・


もしかして僕って鈍感系の主人公していたのか?

いや、勘違いだったら痛すぎる・・・

それに昌は失恋を引き摺っているんじゃないのか?


モンモンとして各種実験の作業効率がしこたまに落ちた。

何をしていても考えてしまう・・・

翌日からも必要性から別ノートをチョコチョコ書いていたけど、美琴は何も言ってこなかった。

黙認なのかな?

少しでもイジメ方面のスピードが落ちないように、水質改善のスピードを落とさざるを得ない位に、モンモンとしながら合宿の日を迎える。



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