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6月も前半になるころに、やっとビオトープに生き物を入れる。

実際には安定期に入って3週間以上経っている。


魚類はドジョウ・メダカ・マタナゴでスタート、両生類はアカハライモリ・ニホンアマガエル・モリアオガエル、爬虫類は二ホンカナヘビ(これが定着するかは不明)とイシガメ、貝はヒメタニシ・マルタニシ、甲殻類は元からのヌマエビだ。虫はその都度必要なやつを色々。


どれも1種捕まえるだけで数日かかる事もある筈なのに、毎日の部活時間でバンバン確実に獲れるから2人が不審がっている。

釣り竿も使わずにタモ網で獲れに獲れるからね。

まぁ、そこは僕の調査が綿密だからだよって事で押し通しているけど、美琴さんはずっと不審そうだ。


一旦プールで馴らしながら一種ずつ投入して、水質などのデータを取って虫と微生物の量を調整。

全ての生き物が入っても水はクリアだし、底には適正な藻が生え、水草も健全に育っている


陸地の草木が定着し植えた草が成長したら、この生態系の一つの頂点として、どれか蛇も入れたいな。

近づく鼠などを捕食する蛇が生息できるビオトープなんて、考えるだけで興奮する。

流石に池と周辺だけじゃ無理だろうなー。

学校の裏手全体の改造をしたくなる。

いや・・・やって出来ないことないかも?

許可が下りるかどうかは別として、ちょっと計画を練ろう。


トンボのヤゴはメダカを食いすぎるので、糸トンボのみ産卵を許可、ユスリカやカゲロウ・蚊に対する出産の数をコントロールできるのはビオトープにおいては最強だな。



この頃には雑談も進んで、昌さんから呼び捨てにして欲しいと言われる。

聞いていた美琴さんも呼び捨てにして欲しいとのこと。

他の人がいる時は『さん付け』で呼ぶのを条件にOKして呼んでみる。

最初は照れ臭かったが、慣れると親密感が一気に増すね。


向こうにも呼び捨てでお願いしたけど、昌は部長が良いって言う。

これまた美琴が賛同して、そのまま部長で続行。

つるんでいるの?2人?



動物類は勝手に来るのを待つしかない。

そもそも来るとしたら捕食者としてしか来ないのだから、上手い環境を作って楽しみにしよう。



それぞれ捕まえて来た生物がバランスを取り合って、個体数の増減が行われる。

ここでもほんと虫の力は絶大。

絶妙だなって思えるバランスのとり方は、2人が必死に個体数の調査を続けているおかげなんだけどね。

プールのメダカは増えすぎたので、水生昆虫を使って数を調整。


その時点で逸見先生が何度か見に来ていたけど、上手く出来上がったのを見て、職員会議に報告したとのこと。

何の為にって思っていたら校長や教頭以下、数人の先生の視察があった。

学校の人ではない大人も2人いる。

低学年プールも含めて細かく色々と質問される。

質問に答えるとみんなで感心していた。ビオトープから離れた場所で大人だけで話し込む。

なんか怪しいんだよな、大人の密談。


欲しいものや必要なものがあるかと聞かれたから、流れ水が何より欲しいというと、それは無理だなぁと笑っている。

その次は森とそこを抜ける湧き水ですと言ったらスケールが大きすぎると笑っている。


ならば水中ポンプと太陽光パネルは無理ですか?って聞いたら全員が考え始まった。

あとプールの日よけが欲しいと言っておく。


とりあえず視察が終わって、学校に帰ってから逸見先生に聞くと、最初に出した計画書の出来が良すぎて騒ぎになったので、経過を報告していたらしい。

そして近隣に無いくらいの完成度に、教育委員会の人が見に来たいとなっての視察だったらしい。


二週間ほどして夏休みの直前に、運動会などで放送室や先生達の拠点に使われる、白い屋根の集会テントと言われるタイプのテント3つと、中古の家庭用の太陽光パネルの実物と、新品の水中ポンプを購入して良い許可と予算が下りたとの報告が届く。


受け答えで信頼を得たらしい。

テントは助かった。

雨の日の拠点になる場所が欲しかったし、夏の日刺しにも困っていたから、これで作業がとても捗る。

しかも3つあるので、ビオトープ側に2つとプール側に1つで分けた。

プール側は、プールの日よけを兼ねてプールをまたいで設置した。


小学校に仕舞われてあった、折り畳みパイプ椅子と会議テーブルも使って良い許可が貰える。

テント毎に僕らの必要数を配置していたら、先生に過剰に配置するように言われる。

これからも視察があるから、その時に全員座れて、少しの打ち合わせが出来るスペースが欲しいという。


太陽光の方は変圧器とタイマーとバッテリーを部費で用意、水中ポンプは吐水量はいらないし、揚程高さも大して必要ないので、消費電力の低いアクアリウム用のを複数で使うことにする。

後で更に別の計画があったから、ソーラーパネル付きのポンプも含めて、予備用を3セット含めて見積りを出したら想定予算に対して少なすぎるから、太陽光のバッテリー類もポンプの方に含めて良いって事で、部費がまだ一円も使われていない事態になった。


流れ水に出来た事で、水中の酸素が一気に増える。

上段の水槽の陸地から水中に変わる小石部分を長いスロープにして、水中の酸素量を確保していたけど、流れ水になったら、その部分が小さい沢状になり、泡や緩急が出来て酸素量が一気に増えた。

生息できる魚類の候補も一気に増えたけど、種類の選定が悩ましいのでサワガニだけ投入。


下の池は流水域と止水域を確保。

メダカをはじめとした生き物には止水域も必要だ。

他と違うのは、止水域の水が虫で攪拌されるから、水質悪化が起こらないっていう不思議よね。


部費の使い道をどうしようか悩んでいると、美琴が夏の定番の合宿では?って言ってくる。

昌も飛びつくけど、生物部の合宿先が思いつかない・・・

ビオトープの小学校で合宿するって言われたけど、許可が下りないと思うし、それじゃ部費が使えていない。

さて・・・どうしたものか・・・



サワガニを入れた日に、教育委員会からオファーが来た。


全く知らなかったが、この地域は昔、カジカガエルが居たそうだ。

清流の歌姫と呼ばれ、和歌では夏の季語にもなる美しい歌声のカエルで、風流なことこの上ない。

もう何十年も前に絶滅してしまっているが、復活させることは出来ないか?って言われる。


地域在来種以外は入れたくないと言ったら、県の北側の山奥の渓流に生息地が残っているという。

ただ、1時間半から2時間くらいの、けっこうな登山が必要だとのこと。

そこまで環境が違うと国内外来種じゃね?って思うけど、向こうは何らか思惑があるみたい。

学校教育の成功例的なアピールしたいんだろうなーって予想したけど、まあ協力してくれるとありがたいのでここは呑む事とする。


渓流でなくては生息は無理なはずじゃなかったか?ってうろ覚えで調べ直したら、池での生息例もあった。

水が綺麗で、エサの昆虫が豊富ならいけるかも。


カジカガエルの定着には、最低でも小規模な林が必要だから、どこかから移植できる木を本気で貰えないかとダメ元で伝えたら、検討するっていう返事が来る。

木の移植って相当な出費なのにマジかいや。


池のあるエリアの学校と反対側は、学校敷地なのに単なる空地になっている。

土地形の関係で使い道が無かった空地だ。

ビオトープの周りの陸地に合わせて、この部分に植林する計画は元から立てていて、ヤナギやモミジ・カエデ・ネコヤナギなどを育てようと思っていた。

ブナやコナラなどの落葉樹なども苗木から育てるのを夏休み明けからの活動内容に入れていた。

まだ中学校側にも話していないし、単なる計画だけだけど・・・


その事を話すと感心していた。

渓流植物と言われるような植物を移植して貰えるなら嬉しい。

無理なら自分たちでやると伝えて、カジカガエルの飼育を始める旨を伝える。


登山とはいえ同じ県内、日帰りは出来そうだけど、どうしたものかと思って相談したら、2人がキャンプにしてそれで部費を使うのはどう?って聞いてくる。


キャンプ用品の費用はとても部費では賄えない。

3人で一つのテントに泊まるのは問題ありまくる。

そこで山の近くの民宿に宿を取って、そこから夜明け前から動き出して、朝方に捕獲する計画を立てる。

カジカガエルの活動時間のメインは夜間なので、危険な下山時に明るい道を歩けるようにするには、この計画がベストだ、

逸見先生が引率で4人での合宿になる予定。



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