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ライフポイントが尽きそうです

『カシャシャシャシャ』


「澪、もっと舞にくっついて」


「こうかな?」


「そうそう、そのまま舞の両手を包み込む用に握って、目をつぶる。」


「これでいい?」


「おお、おおおおお、おおおおおおおお!

 かわいいよ、俺の天使達!!」


『カシャカシャカシャ』


徹君の怪しい雄叫びと耳障りなシャッター音のせいで意識が覚醒してきた。

そして目を開くと目の前に澪がいた。

こちらに気が付くと、嬉しそうに微笑むので、つられて俺も微笑んでしまう。

制服姿ではなく、いつの間にか着替えたみたいで、俺が着ている服とお揃いになっていた。


『カシャカシャカシャ』

そしてシャッター音がする方を見ると徹君が大きなカメラを構えて、ひたすらシャッターを押しまくっていた。


なるほど、澪と舞さんの写真を撮っていたのか。

そういえば、明日香さんが病室に持ってきた写真や動画の量はものすごく多かったな。

顔も名前も思い出せないけど、趣味は子供の写真を撮ることという同僚がいたような気がする。

そういうのは微笑ましくもあり、羨ましくもあった。


「ま、舞。

 目が覚めたか。」


カメラのファインダーから離れて、硬い面持ちでこちらを伺う様に見ている。

俺がコクリと頷くと横から澪が抱きついてきた。


「ねぇ、舞ぃ

 パパの撮影に協力して!」


「協力?」


『カシャシャシャシャ』


「協力したらパパがお揃いの新しいリュック買ってくれるんだって。」


澪はスマホを操作してかわいいお花の飾りがついたピンクのリュックを見せてくれた。

まぁ、女の子が好きそうな感じだとは思うが、全く興味がわかない。

だけど、舞さんもこういう物に興味があるだろうな。

「これだけど、可愛くていいよね」


「いいとおもう。」


これはリップサービスではなく、澪がこのリュックを背負ってる姿を想像すると、可愛くていいんじゃないかと感じたので自然と口から出た言葉だ。


ここで気になるのが、舞さんのスマホだ。

回収されたままになっているので、そろそろ支給して欲しい。


となると、徹君に声をかけなければいけないわけだ。

さっき澪と約束したので、呼ばなければならないだろう。


彼の事を「パパ」と。


実にこれはハードルが高い。


だがこれも無心と開き直りでクリアしなければならないのだが、考えるだけで顔がひきつり恥ずかしい。

ちらっと徹君を見ると、ピッピと電子音がするので、なにやらカメラの操作をしているようだ。


やるか・・・


「あ、あの・・・

 パ・・・

 ううぅ。」


意を決して話しかけようとしたが、やっぱりこれは恥ずかしいぞ!

くっ!

無心だ、開き直れ!

頑張れ俺!


「あ、顔が赤いよ?

 舞! 大丈夫!?」


「どうした!」


澪の言葉を聞いた徹君はカメラを放り投げて、すぐに近づいてきて額に手を当てた。


「顔が赤い。

 それにわずかに熱があるな

 明日香!

 舞が大変だ直ぐに病院に行くぞ!」


えぇえええええ!


「大丈夫。

 病気じゃないから!」


思わず額に当てられた手を振り払うと、徹君は真っ青になって固まってしまった。

やってしまったかな。

病院で名前を聞かれた時に答えられなくて、倒れそうになった彼の姿が頭をよぎる。

やばいな。これってまた倒れるんじゃないか?

というか、沈みゆく船の様に傾いていってるよ!

このままではダメだ!

全ての自尊心を封印して事態の収束を図る!


「あの、その、えっとぉ

 パ、パパの方が倒れそうで心配

 かな?」


「え、舞は俺の事が心配なのか?」


「うん、もちろんだよ!」


上目遣いで徹君の方を見たあとに、にっこり微笑むと徹君の顔に生気が戻ってきた。

よっしゃ!!

徹君チョロすぎて笑える。


「舞の顔、物凄く真っ赤だから

 私、パパより舞の方が心配なのだけど。」


おいおい澪君、なんて事を言うんだ。

徹君の目が澪の方を向いて、戻りかけた生気がまた消えていく。

澪君、君はさっき私に徹君や明日香さんを家族と思う様に訴えたのに、酷い事を言ってはいけないな!


「姉さん。

 これは物凄く恥ずかしいから

 だから」


「ね、姉さん!

 舞がこんなにも自然に姉さんって呼んでくれるなんて!」


澪もチョロいな。

って言うか今まで舞さんは自然に姉さんと呼んでなかったの?


俺は沈んでいく徹君の横に移動して、寄り添う様に支えてあげる。


「大丈夫?

 パパ。」


「ま、舞ぃ!」


どうやら徹君は一瞬で完全復活した様だ。


逆に俺のライフポイントは尽きかけてるんだけど。






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