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猫は天敵だった様です

メッセージアプリのトークリストを見ると未読付きのメッセージが10件以上あった。


送信者単位に日時順で並んでいるので、上から順番に見ていく事にする。


まずは一人目。

高柳ユキさんのメッセージを確認すると

「遅い! あなた達何やってるの? 早く来てね!」というメッセージが最初にあり、最後は「澪から入院した聞いた。入院したんだって? 絶対にお見舞い行くから!」で終わっていた。


ちょっぴりキツい印象を感じたが、お見舞いは絶対に来るらしい。

友達は大切にする様だから、誰とでも仲良く出来る子だと思うので、おそらく舞さんとも仲が良いと思う。

お見舞いは日曜日に入院して金曜日に退院だったから、学校があるので無理だよね。

何かしら約束をしていたけど行けなかったみたいなのでこれは謝っておいた方がいいな。


とりあえず返信

「退院しました。

 心配かけてごめんなさい」

過去のやり取りを読むと、舞さんは簡潔な書き方をしてるからこんな感じでいいかな?

送信をポチッとな。


次は伊集院咲夜さん

「前略、急なご連絡失礼します。

先日お話しした高柳家への訪問の件ですが、都合が合いそうな場合はぜひ一緒に行きたくて連絡しました。

澪様は舞様が良いなら問題ないとの事です。

景山邸にお迎えに伺う日時を教えてくださいませ。

草々

追伸

猫の毛一本ついてないくらい綺麗に体は磨いてるし、猫が乗ったことない車を新しく用意させたので安心して乗ってほしいニャ。」


ほぅ。

草々までは良家のお嬢様感があるメッセージだな。

澪ちゃんが良いと言うなら、たぶんこの子と一緒に高柳さんの家に遊びに行くのだろうな。

ただ最後の追伸は何の事かな?


どれ、やっぱりこの子も簡潔に返してるのかな?


履歴を追っていくと舞さんは伊集院さんの長文メッセージに対する返信を一切行っていない様だ。

何かあるのかもしれないけど、健気に送り続けるメッセージを既読スルーし続けるってちょっと可哀想だから返信する事にした。


『リンリーン!

 リンリーン!

 高柳さんからビデオチャットに招待されました

参加しますか?』

返信内容を考えていたら、カクレクマノミさんが「参加する、参加しない」の看板を持って現れた。


高柳さんはさっき返信した子だな。

参加ボタンをタッチすると褐色の肌に金髪碧眼ショートヘアの女の子が現れた。


外国人だったのか。

日本も国際化が進んでいたようだ。


「おおお!

 舞だぁ!

 ひっさしぶり~

 元気そうで良かったニャ。

 階段から落ちて頭打って記憶がニャくなったんだって?

 相変わらず、どんくさいニャア

 で、私、誰だか分かるかニャ?」


ものすごくテンションが高いな。

そして猫語が物凄く気になる。

最後は、にっこり笑って左目でウィンク。

ものすごくあざとかわいい仕草。


この子は動画で見た舞さんとは真逆な感じで性格が合わないんじゃないかと思う。

しかし、どんくさいって、ちょっと失礼じゃないか?

少なくとも俺は苦手なタイプだ。


「高柳ユキさん?」

語尾がニャで終わってるので伊集院さんではないかと思うけど、ここはカクレクマノミさんが言っていた名前を告げる。


「おおおおおおお

 嫌な顔せずに答えてくれた!

感動ニャ!

 そう、ワタシ、タカヤナギデス

ニャアアアアァ」


彼女が大げさなリアクションでちゃらけてると、拳骨が彼女の頭に落ちた。

そしてカメラが左にずらされて隣に座っていた目つきが鋭い長い黒髪の女の子が写った


「本当に記憶が無いようね。

 私が高柳ユキ。

 この子は伊集院咲夜よ」


やっぱり。


「痛いなぁ

 暴力はんたいニャ」


「あなた、本当に仲直りする気があるの?

半年も避けられてるって、私に泣きついてきたから

仕方なく手を貸してあげてるのに!」


「いやぁ

 感謝してますニャ。」


「じゃあちゃんと謝りなさい!」


「えーっと、記憶がないなら何を言ってるかわからないと思うけど、猫部屋に閉じ込めてごめんニャさいニャ。

舞が猫アレルギーだとは知らニャかったニャ

あれは舞に猫の良さを知ってほしかっただけニャンです」


舞さんは猫アレルギーだったのか。

注意しないといけないな。


そして完璧な既読スルー連発の理由は猫部屋に閉じ込められた事が原因か。

舞さんはアレルギー持ちだから猫を避けていたのに、猫がいる部屋に閉じ込められたから怒ったわけね。

猫語混じりでふざけている気もするけど、一応は頭を下げてるし、これは許して上げるべきだな。


しかし半年も怒ってるって、舞さんの怒りの持続力が半端ないな。

親の仇でもない限り俺には絶対無理だな。


「咲夜!

 謝る時はその変な語尾はやめなさい!」


「これはとってもかわいい猫型モンスターの喋りかたを真似してたら辞めれなくなってしまったんだニャ。

もう体に染み付いてて元に戻れない体になったニャ!」


プッ‥

それに何故か憎めない感じの面白い子じゃないか。


「分かった」


にっこり笑って許して上げると、ほっとした表情になったので、これで良かったと思う。


「それと舞が大事にしてたクマノンとかいう魚のぬいぐるみを猫たちの玩具にしてごめんにゃさいニャ!

どこにあるかわからなくなってたけど、昨日やっとぬいぐるみ見つけたニャ!!!」


カメラの前に置かれたズタボロのカクレクマノミのぬいぐるみを見て、電撃を受けた様な衝撃が身体中を駆け巡った。


「ば、ばか、どうしてそれを今見せるのよ!

 ちゃんと綺麗に直してからって言ったじゃない!」


「いや、今なら許してもらえると思ったニャ!」


「どうしてそう思うのよ!」


「これは、野生の勘ニャのだ!」


・・・

・・・

・・・

こいつカクレクマノミさんになんて事をしてくれるんだ?


「ほ、ほらぁ!!!

 舞の目がだんだん怖くなってきてるじゃない!!」


「あ、あるれぇ?

 おかしいニャ?」


「舞!落ち着いて!

 この馬鹿猫は本当に反省してるから!」


「伊集院さん・・・」


俺は沸々と湧き上がるどす黒い感情を必死に押さえつける。


「は、はいニャ!!」


「その子はクマノンじゃなくて、カクレクマノミです」


俺、もう限界なので、チャット終了ボタンをそっと押す事にした。


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