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心を無にして前に進む

車が景山家の門をくぐり敷地の中に入ると大きな庭園が広がっていた。

その奥に建っている家屋は現代的で豪華な和風建築という感じの建物だ。


こんなところに住むの?

いや住んでいたの?

すげー

やっぱり舞さんは金持ちのお嬢さんなんだ。

いかんいかんニヤニヤが止まらない。


車は豪華な和風建築を通り過ぎてさらに進み、木々で仕切られた向こう側にあるさっきの和風建築と比較すると質素な洋風の建物で止まった。

中々ご立派な建物ですな。


車の中は雅孝お爺さんと徹君がピリピリと殺気立っていて、また喧嘩が始まりそうな雰囲気なので、速やかに車から降りる。

続いてキララお婆さんに明日香さんが降りて、続いて徹君が降りようとすると、雅孝お爺さんが呼び止めた。


「親父はまだ話があるようだ。

 悪いが3人は先に戻っててくれ。」


どうやら第二ラウンドが始まるらしい。

雅孝お爺さんはかなり怖いけど、舞さんを含んだ子供達が怪我をしないようにして欲しいだけのようだから悪い気はしない。

でもシンプルに怖いんで君子危うきに近寄らずという先人のありがたい言葉に従い、俺は明日香さんに連れられて家に向かった。


家に入ると舞さんの部屋に連れていかれ、そこで学校について説明があった。

まず、舞さんは4月から小学四年生になる私立の高天学院という小中高一貫教育の学校に通うお嬢様らしい。

記憶障害に関しては学校に連絡済みだから安心してほしいとのこと。

そして兄のアキラ君と澪ちゃんはもうすぐ学校から帰ってくるそうだ。


明日香さんは雅孝お爺さんと徹君のことがすごく気になっているみたいなので一通り説明した後、直ぐにキララお婆さんと一緒に出て行った。


さて、舞さんの部屋にポツンと一人取り残されたので、まず部屋の中を見渡すと熱帯魚にイルカや鯨などのアクア系ぬいぐるみが所狭しとひしめき合っているのが目につく。

舞ちゃんわかってるじゃあないか。

特にこの超巨大イソギンチャクのぬいぐるみ!

もう、これは横になって眠れるレベルの巨大クッションだよ!


次にクローゼットの中に入ると、小学校の制服がハンガーに掛けてあった。

白いシャツに紫のブレザーにチェック柄のスカート。

これを着るのかぁと考えると、頭の中に「恥」という単語がよぎり物凄い抵抗感が湧いてくるが、こういうのは入院中に人知れず苦悩したトイレ、風呂、着替えと同じ類の案件で、心を無にする事でクリアする事にしている。


正直悩んでも仕方ない。

開き直りが大事だと思う。


ほかの引き出しを開けるとたくさんの普段着と下着が整然と入れてあった。


クローゼットの奥の棚には整然とたくさんの箱が並んでいるが、とりあえず直近で必要になる衣類の場所は把握したので今度確認しよう。


次は机の上にあるタブレット。

病院で明日香さんに見せてもらったものと同じものなので使い方は把握している。

舞さんの個人情報が詰まっているので取り扱いには細心の注意が必要だ。


椅子に座り、手に取るとピッと音がなり、サンゴ礁が背景になっている画面が表示され、続いてカクレクマノミのアバターが現れた。


『こんにちは舞。

 久しぶりですね!!』


ほぅ。

AIアバターってやつか。

っていうか、カクレクマノミって、舞さんって俺と趣味がめっちゃかぶってるんだな!


さて、さっそく調べたいことがある。


「地図を見せて」


『わかりました!』


カクレクマノミのアバターが水中に潜るアニメーションの後、景山邸を中心にマップが画面全体に表示される。

上空写真で上から見た景山邸は普通にでかい。


「串木町〇〇番地の〇〇をみせて」


というと地図は勝手にスクロールして俺の家の上空写真が表示された。

ここには俺の家があるはずだが、何もなく茂みに覆いつくされているようだ。


ふむ・・・


「ストーリートビュー」


上から見てもわからないので、ストーリートビューでもっと近くから見ようと思ったのだが、カクレクマノミのアバターがあわただしく画面内を動いた後に、定位置にもどり申し訳なさそうな顔で

『残念!

 ストーリートビューは有料コンテンツです』

との事だ。


これってGさんが無料で提供している機能だけど有料になったんだな。


課金して使える様にしたいが、よくよく考えたら自由に使えるお金がない。

そういえば舞さんのお小遣いってどこにあるのかな・・・


はっ!!

いかんいかん、これは間違いなく「窃盗」になる!

舞さんの事に使うお金なら問題ないけど、これは舞さんには全く関係ない事だ。

いくら開き直りが大事だといっても超えてはならない一線というものがある。


とは言え、どこにいくらあるかは把握しといた方がいいかな・・・

・・・

・・・

・・・

まぁ、抵抗感はあるが必要なことだし調べてみよう。


まずは机の引き出しを漁ると文房具や学校で受け取ったであろう冊子類が入っていたが、金目のものは全くなかった。

机の下にあったランドセルの中にも無い。


そういえば、入院中に見ていたドラマではみんなスマホで決済してた。

それに病院の自動販売機はコイン投入口がないものがほとんどだった。

現金ってあまりつかわれてないのかな?


舞さんのスマホは階段から転落した時に壊れてしまったらしく、明日香さんに回収されて手元には戻ってきて無い。

スマホが戻ってきて決済できる様になっても、これは俺に取っては舞さんのお金だから俺の個人的な事で使う事は出来ないけどね。


「保有しているクレジットカードや銀行口座って分かる?」


カクレクマノミさんに聞いてみる。


『舞さん名義の口座、クレジットカードともに登録されていません。

親権者様名義のクレジットカードが登録されています

親権者名義のカード利用は取引毎に御本人様の承諾が必要となります。』


なるほど、ソシャゲにハマった子供が親のカードで重課金したなんて事件もあったし、使えなくするよね。

とりあえず舞さん個人が使えるお金はスマホの中だけと思っておこう。


いずれ俺の都合で使えるお金必要になると思うから、なんかお金を稼ぐ方法を考えよ。


『舞さん

 長い間見ていないメッセージがあります!

 そろそろ確認しませんか?』


メッセージアプリをカクレクマノミさん勝手に起動したので、見てみると知らない人からの未読マークメッセージが並んでいた。


これは勝手に読んでいいものだろうかと躊躇したが、交友関係の維持は大切なことなので開き直って読むことにする。


カクレクマノミ=ファインディング・ニモ

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