レア魚に釣られる
水槽の設置が終わり、藤見さんと勉強部屋の水槽の水換えも済むと、ペットショップの人たちは足早に帰っていった。
休日は水槽メンテナンスの依頼が多いらしい。
やることもないので、紅龍と淡水エイをぼんやり眺めている。
紅龍は「ガポガポ」と音を立てて餌を食べる様子が迫力満点だ。
ただ、ここにカクレクマノミさんを入れたら一口で食べられてしまうと思うと、背筋が寒くなる。
そういえば、小鳥も食べると聞いたことがある。
文鳥くらいなら一飲みにされかねないので、ピッピとサクは絶対に勉強部屋から出してはいけない。
さて、もうすぐ城浜への旅行だ。
前世の記憶にある串木の家へ行く方法については、難しく考えず、「行きたい、泊まりたい」と駄々をこねることにする。
前世の記憶のせいで変に思われるのではないかと気にして、なぜか後ろめたくなり、こっそり行こうなどと考えていた。
でも旅行なのだから、自分が行きたい場所を堂々と主張すればいいのだ。
というわけで、パパにメッセージを送る。
『ゴールデンウィークの旅行だけど、いつでもいいから串木で一泊したいです。
宿はここでお願いします。(ホテルHPアドレス)
大好きなパパへ舞より(ハート)』
送信っと『ポチッ』
クックック
最期の祝詞でパパは私のアンダーコントロール状態になる。
「ピッ」
突然、水槽の上にある黒いボックスが機械音を発し、そのあとポトポトと餌を落とした。
自動えさやり機か・・・。
あっ。
うっかりしていた。
勉強部屋の水槽には付いていない。
このままではゴールデンウィーク中、餌なしになってしまうので、早めに入手しないと。
少し遠いけれど、ペットショップ生石という大型のペットショップに行きたいんだよね。
ママにお願いしてみようか・・・。
ちょうどママがリビングにアロワナを見に来たので、そのタイミングでお願いしてみる。
「ママ、ペットショップに行きたい」
「あら、ごめんなさい。
今日は撮影があるのよね」
むぅ。
「じゃあ、ひとりで・・・」「だめ!」
くっ。
やっぱりだめか・・・。
「じゃあ、家政婦さんについてきてもらう」
「今日は誰もいないのよ・・・」
マジですか。
まぁ、仕方ない。
通販にするか・・・。
でも、ペットショップに行きたかったなぁ。
「どうしたのかな?」
姉さんがあくびをしながら、二階から降りてきた。
「ペットショップに行きたいんだけど、ママはダメって言うし、家政婦さんも誰もいない」
「ふーん。
いつものショッピングモールのお店?」
「ペットショップ生石っていう、関東最大の大型店」
「じゃあ、兄さんと一緒ならいいんじゃないかな」
アキラ兄さんは一人で出歩くのは許されているらしいが、私と姉さんは本当に一人で外出させてもらえない。
同級生の須藤さんは一人で買い物して、料理に洗濯までこなしているうえ、けっこうあちこち遊びにも行っているみたいだ。
庶民だった前世の記憶があるから、今の生活がどれだけ恵まれているかは分かっているけれど・・・
それでも、ちょっと須藤さんが羨ましいと思う。
「アキラちゃんは麻美さんとデートに出かけたと思うのだけど。」
ははは。
リア充爆発しろ!
『舞!
メッセージが来たよ!』
ふむ・・・
忠雅さんからか。
何々
『ペットショップ生石に行こうぜ』
・・・
・・・
・・・
「え、えええええええ」
こいつ、超能力でもあるのか!
いや、偶然なのか?
こんな偶然ありえるの?
「ママ、この家に盗聴器が仕掛けられてる」
一度、盗聴器の有無を業者に調べてもらったほうがいい気がする。
「この前、セキュリティ会社の方が来られたけど、大丈夫だったわよ?」
調べてたんだ・・・
「どうしたの?」
ママと姉さんが私のスマホを覗き込む。
ママはニヤニヤ笑いながら私を見る。
一方、姉さんは昨日のパパと同じように、氷のように冷たい視線を向けてくる。
「舞。
パパが可哀想だから、こっそり行きなさい。
くれぐれも家で忠雅さんの話はしちゃだめよ」
ひどい勘違いだ。
「舞が行くなら、私も行こうかな!」
「行かないから!」
忠雅さんは既読スルー確定だから!
姉さんがちょっとびっくりしたようだが、直ぐに少し微笑む。
「そう?
忠雅君ならきっと護衛付きだから行ってもいいわよ?」
マジで!
い、いやぁ。
今行かないって言ったばかりだし。
クッ!
チラッと姉さんを見ると、はぁ〜っと溜息をついている。
「小華を誘おうか。
文鳥を見に一緒に見に行こうと言えば一緒に行ってくれるよ!」
「ノッた!」
小華も護衛がついてくるから、問題ない。
「舞!
メッセージが届いたよ。」
忠雅さんから写真付きメッセージか。
『こいつを迎えに行く。
お前にも見せてやるよ』
何?
また偉そうに・・・
え?
お、お、おおお!!
ギアナバタフライだとぉ!!!
この金持ちが!
激レアじゃないか!
高けりゃいいってもんじゃないんだけど!
『ギアナバタフライは飼育が難しいと思うけど大丈夫?』
この前までサンゴ水槽メインだったのに、なんて無謀な!
死なせてしまう前にショップに返すのだ。
『お、分かるのか!
写真見て分かるやつはお前は始めてだよ。
流石に知識はあるといい切るだけの事はあるな!』
・・・
・・・
・・・
いやぁ。
褒められるとむず痒いな。
仕方ないな〜。
『分かっ「ストップ!」』
ん?
「小華と一緒に行くんだよね?」
あ、ナチュラルに承諾する所だったぁ・・・
姉さんが小華からのメッセージを私に見せた。
めちゃくちゃ喜んでるな。
どうやら一緒に行く事になりそうだ。
次回更新は年明け後になります




