魚屋
翌日、学校から帰ると連絡があった。
「ペットショップ本庄」、これが魚屋のおじさんのお店の名前だ。
今日はヒアリングと設置場所の確認。
概算見積のために来るそうだ。
パパとママ、私と姉さんの4人で迎える。
相手方は本庄さんに藤見という女性スタッフ、それと工務店の人が一人だ。
「よう、嬢ちゃん」
名刺を受け取った後、設置したい場所を伝えると、工務店の人はリビングの設置場所を確認し、床下収納から床下に入って鋼製束で補強を始めた。
その間、藤見さんが「2階の勉強部屋に入っていいかしら」と尋ねたので、「ちょっと、部屋見てくる」
といって慌てて、姉さんは2階に向かった。
服などが結構散らかっていたからだとおもう。
「パパ、2階にアコーディオンカーテンで仕切りをつけて欲しい」
「ああ、いいよ。業者を呼ぼう」
「あ、景山さん、仕切りの工事もこちらでやらせて下さい。」
工務店の人が部屋の間取り図を見せてくれたので、アコーディオンカーテンの設置位置を説明する。
目的はプライバシー確保と、サクとピッピがドアを開けた時に外に出られないようにすることだから、床までぴったりと高さを合わせて欲しいと伝える。
柄に関しては姉さんと一緒に決めようと思う。
「水槽の写真を見せて欲しい」
「お、これだ」
本庄さんがセットアップされた状態の水槽の写真を見せてくれた。
思っていたとおりの背面濾過というか側面濾過のマニアックな水槽だった。
水槽が立ち上がったら、まずはイソギンチャクとカクレクマノミを入れる。
イソギンチャクの位置が固定したらサンゴをいくつか入れようか。
「で、リビングの水槽ですが、どんなのにする?」
リビングの水槽は派手なものがいい。
となると、やはり大型ヤッコ。水槽が半端なく映える。
「メインの生体は『皇帝』、『王様』、『女王様』のロイヤル3体か、『ブラバン』、『タイガー』、『コンスピ』、『クラリオン』のどれかで。」
ニヤリと笑いながら本条さんに希望を伝えた。
・・・
・・・
・・・
「社長、そんな高級魚の面倒見るの怖いですぅ」
「馬鹿野郎、お前プロだろ。
気弱な事言ってんじゃねえ」
「は、はいっ」
「嬢ちゃんの希望している奴は、最近は入荷がほとんどないからなぁ。
いや、ブラバンはブリード個体を探せばあるかな」
「あの、いいですか?」
パパが何か質問があるようだ。
「あ、ちょっと待って待ってもらっていいですかい。」
本庄さんと藤見さんがタブレットを見ながらあれこれ話し始めた。
ブラバンやタイガーは、一匹100万は軽くいく高級魚だからな。
「高くなるし、入荷も難しそうだと思うから、やっぱりロイヤルでいいです」
先日、調子に乗って100万円の水槽セットを頼んで、明日香さんに怒られたことを思い出したので、ちょっと自重することにした。
それに、大きい生体が3匹で存在感があるし、ぱっと見で映える。
他は知ってる人なら気づく程度だし。
「そうかい、じゃあ、
エンペラーエンゼルフィッシュ
ホクロヤッコ
パッサーエンゼルフィッシュ
をメインであとはお任せでいいかい?」
「問題ない」
「景山の旦那どうです?」
「うむ。
俺はアロワナを追加でお願いしたい」
・・・
・・・
・・・
「は?」
「ま、舞。
その目は怖いからやめてあげて。」
ママが慌てて私に注意するが、これは仕方ないと思う。
「アロワナはかなり大きくなるみたいだから、舞の欲しい魚も入るように目一杯大きな水槽にしてもらって問題ない(キリッ)」
あうぅ。
どうしよう、こっちが恥ずかしくなってきた。
チラッと本庄のおじさんを見ると、フルーズしていたが、どうやら再起動しそうだ。
当たり前のように海水魚前提で話をしていたが、アロワナは淡水魚。
一緒の水槽なんて不可能。
「アロワナですかい?」
「ああ、そうだ(キリッ)」
本庄のおっさんがどうするのこれ?
という顔で俺を見るのはやめて欲しい。
リビングに大型水槽2台並べるか。
二つ合わせて2トン近くまでいきそうだな。
それに、既にグランドピアノのもいてあるし、ママはプランターにお花をいっぱい並べている。
いくら広いリビングだといっても限界があるだろう。
「大型水槽2台・・・」
「嬢ちゃん、ちょっとそれは・・・」
おっさんも大型水槽2台はちょっと微妙だと思ってるようだ。
パパはきょとんとしていて、何もわかっていない様子に、私はちょっといらっとする。
「パパ。
アロワナの色は金、銀、黄、青、赤のどれがいいの」
「この前見せて貰ったのは綺麗な金色だったなぁ」
金龍か。
「それなら金色にする?」
「いや、金魚のような赤がいいな」
金魚・・・、紅龍か。
「一緒にエイも飼っているみる?
それともナマズがいい?」
「エイなんて飼えるのか!
おお、いいねぇ、珍しい」
淡水エイと。
「紅龍スーパーレッドと錦鯉と淡水エイに変更」
私は本庄さんに向かってにっこりと笑って、リビング水槽に入れる生体を伝える。
仕方ない。
今回は諦めよう。
「嬢ちゃん、いいのかい。」
「パパにもアクアリウムの良さを知って欲しいから、もういい。」




