串木の自宅
さて、澪が出ていったので、串木の自宅に移動する。
ストリートビューで見た自宅があった場所は、ただの草むらだった。
これは地図を上から見たとおりだ。
課金をしたことで利用可能になったタイムシフト機能を利用して、家が存在していた時期にシフト。
すると、俺の家があった。
古びた平屋の家だけど、確かにあった。
グスッ
ちょっと涙が出てきたな。
あれ?
かなりぼかされているけど、家の庭を杖を持った女性が歩いている姿が写っていた。
誰だろう・・
ん?
そういえば、誰かと住んでいたような気がする。
女性と一緒に暮らしていたってことか?
「ねぇ、やっぱり一緒にはいろーよ」
着替えを持った澪が入ってきた。
とりあえず急いでテュッシュで目を拭いて、タブレットの画面に目を近づけ、泣いていた事がバレないようにするが、横から顔を近づけてきた。
「ま、舞!
泣いてるの。
何、どうしたの?」
「大丈夫。
眠いだけ」
定番の言い訳をするが、澪はジーっと俺の目を見る。
「違う。
何があったのかちゃんと言ってほしいかな。
あ、ひょっとして優にいじめられた?」
やはり、すぐに見破られた。
海原さんには少し高い高いをされるなど、色々からかわれたが、あまり気にしていない。
「海原さんは関係ない。
ちょっと、メンタル的になぜか悲しくなった。
そ、そう。
思春期だし」
「プッ
思春期って自分でいうかな」
澪は笑いながらタブレットの画面に目を向ける。
「ここは?」
「本州最南端の串木という所
ストーリートビューで散策中」
・・・
・・・
・・・
「姉さん?」
「ふーん
まぁ、いいか。
優に何かされたら言ってね」
そして、強引に手を引っ張られて、お風呂に連れて行かれた。
その夜、やはり杖の女性の事が気になり、どうしても眠れない。
こういう時はイソギンチャクの超巨大ぬいぐるみをベッドに置いて、咲夜が返してくれたカクレクマノミを抱きしめながら潜り込む。
はぁ~落ち着く。
どうやら眠れそうだ・・・
・・・
・・・
スヤァ
目が覚めると、目の前には見覚えのある懐かしい古い蛍光灯。
起き上がって周りを見回すと、俺が住んでいた串木の家だとすぐに分かった。
「あら、おはようございます」
見たことのない女性が、居間に置いてある水槽で飼っているイソギンチャクとカクレクマノミに餌を上げていた。
黒髪で背中くらいまでの長い髪を胸元で束ね、前に垂らしている。
舞さんの普段の髪型と同じ女性。
ただ右足は膝から下が義足だった。
年齢は明日香さんと同じくらいだろうか。
ストリートビューで見た、見覚えのない女性?
いや・・
この女性は知っている。
でも、名前は思い出せない。
「昨日の夜が、オークションの入札期限でしたね。」
そうだ、オークションを確認しないと。
起き上がって、ノートパソコンのある机へ移動しようとしたとき、隣にも布団が敷いてあった。
どうやら寝食を共にしているようだ。
パソコンを起動して落札者の情報確認をしようとすると、女性は机の上にコーヒーとパンとゆで卵を置いて、横の椅子に座った。
「どうでした?」
画面を見ると、ハンドコートで採取した海水魚がいくつか落札されていた。
落札者に到着希望日を一通り確認して、隣の女性を見る。
「結構いい値まで競り上がりましたね」
コロコロと笑う彼女の仕草。
なんだろう、なぜか落ち着く。
そうだ、名前を聞かないと。
彼女に名前を聞こうとすると、周りが異様な雰囲気になり、突然激しい頭痛が起こり、体が動かなくなった。
これは金縛りというやつか。
「キャアアアアアアア!」
突然の悲鳴で一気に目が覚めた。
いつもの景山の家の寝室。
身を起こすと、顔を真っ青にしてベッドの上にいた澪が抱きついてきた。
カタカタと震える澪を抱きしめながら、周りを見回すが、何も変わりがない。
「火が・・・」
火?
「どうしたぁ!」
父が叫びながら、ドタドタと廊下を走る音が聞こえ、バンとドアが開いた。
父と兄がバットを持って入ってきた。
「大丈夫か!
何があった?」
「大丈夫。
澪がまた怖い夢を見のだと思う」
「そ、そうか」
ヘナヘナっと椅子に座る父。
「父は相変わらず心配し過ぎだと思う」
そう、先月も同じようなことがあったのに、心配し過ぎだ。
この家は防犯にかなりお金をかけているから易々と侵入できるわけないのに。
ところで気になるのは、兄がじっと私の顔を見ていること。
何か言いたいことがありそうな感じだけど、何かな?
「舞、そういえば、この前、家にきたプロダクションの社長さんが、舞と澪に出演して欲しいドラマがあるって母さんに依頼したんだって」
「母に?」
「そう、出て見てもいいんじゃないかなって、僕は思うけど」
「澪がいいなら構わない。」
お小遣いが増えるなら出てもいいと思う。
ところで父、母、兄、澪の4人がジーと私を見ている事が気になる。
「プロダクションの社長さんが来たことは覚えてる?」
記憶にないので首を横にふる。
「そうか、そこまでは回復していないみたいだね」
回復?
「舞ぃ。」
ふくれっ面で私を見上げる澪。
「何?」
「お、ね、え、さ、ん!
澪じゃなくてお姉さん!」
ん?
えーっと、あれ?
「舞の記憶、ちょっと戻ったかもしれないね」
「いや、戻ってないと思う」
「そう?
でも澪が寝ぼけて夜中に悲鳴を上げたことがあるのは思い出したでしょ」
「確かに」
別々に寝ていた時に、隣から悲鳴が上がって急いで向かった記憶がある。
それより以前に一緒に寝ていた時に2度ほどあった記憶がある。
「それに僕達の呼び方」
「それだけは戻しちゃダメよ!」
「うむ、俺もパパも方がいいな」
「私もママの方がいいかしら」
ああ、自然と澪って呼んでしまったけど、姉さんと呼んだ方がいいかな。
「えと、
じゃあ、パパ、ママ、兄、姉さん?」
「うん!」
「あのね、舞、
僕はお兄様かニィーニでお願いするよ」
「断る。」




