いきもの倶楽部
お昼休みになった。
澪とは一緒に食べると言っていたが、別のクラスのようなので、どこにいるか分からない。
そもそも給食ではないのかと思っていたら、お弁当を申し込んでいる人は職員の方が持ってきて机で食べる人もいるようだ。
卵や牛乳などのアレルゲンの表示があり、個々の体質に合わせたお弁当が配られている。
須藤さんと海原さんに食堂に行こうと誘われたが、澪と一緒に食べる旨を伝えると、澪のいるクラスに寄ってから一緒に食堂に向かうことになった。
「ニャァ!
迎えにきて嬉しいニャあ」
咲夜が俺の胸に飛び込んで頬ずりを始めた。
「うん、一緒に食べる」
どうや澪の方も咲夜達と食べに行くつもりだったらしい。
人数が多いので不安があったが断る理由もないし、人が多いほうが楽しいと思う。
「今日は極上鯖フィレが出るそうだぞ。」
高柳さんがスマホを弄びながら言うと、咲夜の目が輝いた。
「美味しそうニャ」
「ん?」
なんだろう、一瞬、スーパーペットファミリーの野獣の姿が咲夜の後ろに見えた。
ちょっと寒気というか悪寒を感じる。
これはケガから回復したばかりだし、疲れてるのかな。
「よぉ
仲直りできて良かったな」
「シャー
あっち行くにゃ!
ジャイアント海原」
「ジャイアント(笑)」
スッと咲夜の影に隠れてニヤっと笑う。
確かに色々デカいもんな。
「舞ぃ
後でお尻ペンペンな。」
ジャイアント海原がにたりと笑うと、さっきよりも強烈な悪寒が全身に走った。
「優。
舞のお尻に一体何をする気かな?」
澪がジャイアント海原にやや怒気を感じる笑顔を向けると、スッと脇の下に手を入れようとする。
「姉さん、危ない!」
澪にも高い高いをやろうとしたが、華麗に回避し続けた。
「早く行こう
お腹すいた。」
そう言うと藤林さんが食堂に向かい始めると、高柳さんが続く。
腹の虫に「飯よこせ」と雄叫びを上げられたら困るので、ジャイアント海原さんと威嚇し合っている澪に声をかけて、藤林さんと高柳さんの後ろをついていくことにした。
食堂はとても広い。
ビュッフェ形式で、自分で好きな料理を選んでテーブルに座る方式だ。
人がたくさんいてごった返しているのかと思ったが、スペースには余裕があり、かなりお高い学校みたいなので金をかけているなと感じた。
並べられている料理を見ると、まぁ豪勢ですな。
ただ、トレイに料理を乗せると、持つところにカロリーが小さく表示される仕組みで、アレルゲンに該当すると職員がやってくるようだ。
ある男の子のところに職員さんがやってきて、トレイから皿を回収していた。
ちなみに、焼いた鯖フィレを3皿トレイに置いた咲夜は、職員の静止を振り切って逃走した。
咲夜って良家のお嬢様だよね?
ちなみに舞さんの体はとても省エネで、すぐにお腹が一杯になる。
ご飯少なめに、焼いた鯖フィレを一つ、サラダを乗せると、カロリーは250kcalと表示された。
こんなもんかと思って戻ろうとすると職員さんが現れ、トレイを見た後にカロリー足らねーと言われ、わかめと豆腐の味噌汁を勧められたので追加してもらった。
すげー管理されてる感満載だな。
席に戻ると、いきもの倶楽部のグループメンバーが揃っていて、ワイワイと話てる。
澪の横が空いているのでそこにすわる。
「授業どうだった?」
「まぁ、大丈夫。」
「良かった。」
流石に小3後半位のレベルだから余裕ですよ。
「水槽の設置場所、勉強部屋のドア横でいい?」
「いいけど、知らない人入って来るのはやっぱりいやかな」
「ふむ、入り口入った所にアコーディオンカーテンで仕切りを作る」
「あ、中を見れなくするわけね。それなら安心。」
「そう。ピッピとサクも、ドアから外にでないようにする。」
「なるほど、うん。それならいいかもね。」
どうやら澪の設置許可を得られそうだ。
これで何も憂いがない状態で交渉ができる。
「新しいメンバーも増えたようだから、生き物倶楽部の活動について、決めておきたいことがあるんだけど。」
咲夜が席についたのを見た須藤さんが、メガネの位置をクイッと整えながらタブレットを覗いている。
「猫と触れ合いができれば何でもいいニャ」
そう言って、咲夜は焼き鯖にフォークをザクっと刺して頬張る。
「ボランティア活動は報告会で必須だから、やりたいことがあれば誰か教えて。
それから、何をやるか決めましょ。」
須藤さんはスルーして、タブレットを触りながら、みんなの意見を待ちはじめた、
「王道の募金集め」
と藤林さん。
「猫の譲渡会にゃ。
猫と遊びながらボランティアで二度おいしいニャ」
と咲夜。
「犬の譲渡会も追加で」
と高柳さん。
「砂浜のゴミ拾い」
と、俺。
水槽を設置してもらったら、ハンドコートでお魚ゲットを狙うつもりだ
「舞は猫アレルギーだろ?
譲渡会に行って大丈夫なのか」
と海原さん
「受付なら大丈夫だと思うけど、舞はどうかな?」
「たぶん、大丈夫。」
正直なところ、受付だけなら特に問題はないと思う。
ただ、そもそも猫アレルギーが発症したことないんだよな。
「今の希望条件でAIに絞り込んでもらったから、参加可能なものを登録おねがい。」
スマホを見ると、「ボランティアイベント一覧」という項目が表示されていく。
そこには行事名と日時がリストアップされ、その横に参加予定者欄があった。
「あ、それとグループで管理する設備の割り当ては決まったみたいだから、確認お願いね」
タブレットに地図が表示され、割り当てられた設備が表示された。
どうやら花壇が一区画と鶏と兎小屋の管理を任されるみたいだ。
「にゃぁああああ
猫じゃないにゃ!」
と発狂する咲夜。
「犬もいない。」
がっくりと項垂れる高柳さん。
「兎♪」
満面の笑顔の藤林さん。
きれいに明暗が分かれたな。




