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乗っ取りではなく前世を思い出したと思いたい

動画のサブスクで観た「絶対失敗しない女医VS白い巨塔の人」というとある女医のドラマで、VIPが利用するような豪華な病室のベッドに、ぽつんと横になりながら考える。


頭のけがは一針だけ縫う程度のものだったけど、色々精密検査をした結果、頭部への衝撃による脳に軽度な腫れ、脳浮腫だといわれ、『逆行性健忘』が発症しているといわれた。

これはほとんどの場合、時間の経過とともに治るので、入院して経過を観察するとのことだった。


痛みは完全に引いたので、けがは大丈夫だと思うのだがトイレの鏡を見たときに驚いた。

澪という家にいた、どえらい美少女が映っていたのだ。


思わず魚人神拳にあるハタゴイソギンチャクの構えをとると、澪ちゃんも同じ構えをとった。

しかも、完全かつ完璧なものだ、波打つようなハタゴイソギンチャクの形を両腕で表現し、十本の指で揺らめく触手を表現する。


手ごわいな、ならば美少女が絶対に見せないはずの姿、にやりと笑いながら小指で鼻くそをほじくると、驚いたことに澪ちゃんも同じように鼻くそをほじくり始めた。


くっ、これはきついな。

絶対見たくなかった姿だったよ澪ちゃん・・・


まぁ、アホな事を思い出すのは止めて、舞さんと澪ちゃんは瓜二つで、違いは髪の長さだけと言ってもいい。肩までの澪ちゃんと、腰まで届く長い髪の舞さん。それくらいしか見分けるポイントがない。


はぁあああ・・・

ベットの横にある鏡を見ると、事案という言葉しか頭に浮かばない。


問題はこれは霊的な感じの乗っ取りなのか、それとも転生して前世の記憶を思い出して上書きされたのか、それともそれ以外の何かなのかだ。

乗っ取りならさっさとご本人様に返却したいのだけど、やりかたが不明。

舞さんには非常に申し訳ないと思う。


事故前の記憶が全くないので乗っ取りの可能性が大きいが、自然と「景山舞」という名前は浮かんできたという点に注目したい。

ひょっとしたら、乗っ取りではなく前世の記憶で上書きされたのではないか!

そうだ、上書きされたと思っておこう。

・・・

・・・

・・・

まぁ、違うよね。

さらにまずいことに、この体の子の名前は思い出したがそれ以外の記憶は完全に無いのに、前世(仮)の記憶は少しづつ思い出した。

俺は独身で普通のIT系企業のサラリーマンで希望退職者募集に応募して退職後は空き家バンクで見つけたいい感じの海辺の家に移り住んでいた。

趣味はアクアリウムでサンゴや観賞魚を繁殖させてオークションで販売することで小銭を稼ぎながらのんびり暮らしていたはず。


多分、俺は死んだんだろうな。


しかし、あれだ、本当に舞ちゃんの体を乗っ取ってる感をひしひしと感じるわ。


はっ!

そういや、ちょっとまってほしい!

俺のかわいい、かわいい、おサンゴやお魚ちゃんたちはどうなったんだ!?

やべえ、今はいつだ!?


机の横のデジタル時計にを見ると西暦205X年3月10日と表示していた。


終わったぁ><

おいおい、最後に覚えている日から30年は経過しているぞ。


ああ、ヘラルドさん(ヘラルドヤッコ)に、くまのん夫妻 (カクレクマノミ)、それにホーリーさん(トーチコーラル)やアザミさん(アザミハナガタサンゴ)たちががぁあああああ。


すまない、俺がなんで死んだかわからないけど、間違いなく☆になってるだろうなぁ。


あーなんかスゲー鬱になってきた。

俺、泣きそうだよ。


すぐにでもここを抜け出して我が家がどうなっているのか確認しに戻りたいが、さすがにこの姿だし、そもそも交通費もない。

高天大学病院って東京でしょ、俺の家は本州最南端の串木だよ!


「はあぁぁぁ」


思わず溜息を吐いたが、どうしようもない。


32インチのそこそこの大きなテレビがあるので、起き上がってテレビをつけるとメニューが出てきて見たい番組を選ぶようになっていた。

電波で放送はやってないのかな?


30年が経過して世の中がどう変わったか気になるので適当にニュース番組をポチると同時にガチャリと扉が開いてお医者さんに続いて、舞さんのご両親さんと澪ちゃんに中学生くらいの男の子が入ってきた。


「舞!」

澪ちゃんがダッシュで近づいてきて思いっきり抱き着いてきた。


頭に「事案」といういやな単語が何度も浮かんで防衛本能が離れるように強く訴えてくるが、現状を考えるとこのまま抱き着かれたままの方がいいのだろうか。


「こんにちは、景山舞さん。

 何か思い出しましたか?」


お医者さんが頭に巻かれた包帯を取りながら質問してくる。

思い出したか?と問われたのは舞さんご両親と、不安そうに俺を見る澪ちゃんのことでしょうか。


申し訳ない。

まったく思い出せないというか逆に前世の方をだんだん思い出してきている状況です。

こんなことは言えないと思うし、前世の記憶なんていったら再検査させられそうな気がするな。


それに俺はさっさと自分の家に戻りたい。

でも、今の状況だと無理だろうなぁ。


「何も・・・」


「そうですか。」

傷口を消毒した後、手際よく包帯を巻きなおすと、この体のご両親さんと何やら話を始めた。


また澪ちゃんがまた抱き着いてきたので防衛本能が拒絶しようとするが、抑え込んでなされるがままにしていると、この体のご両親と男の子が緊張した面持ちで目の前にならんだ。


「景山舞さん。

 この人たちの名前を言ってください。」


「あの?」


「あなたがどれくらい覚えているか確認したいのです。

まずはこちらの男性の方」


やばいよやばいよ。

舞さんのお父さんでしょ?

名前しらねー。


「えっと、わかりません・・・」


素直に答えると周りの空気が凍り付いた。

舞さんのお父さんが真っ青な顔になって、ガチで倒れそうになったのでとなり明日香さんが肩を貸してなんとか支えている。


「落ち着いてください。

 忘れたのなら、舞ちゃんに名前を教えてあげてください。

 ひょっとしたら記憶が戻るかもしれません」


「そうだな、私は景山徹。

 舞、君の父親だ」


徹君ですか。

申し訳ない、記憶は全く戻ってこないな。


この次の母親は景山明日香だとわかっているのでちゃんと答えると、お医者さん曰く


「どうやら事故後の記憶に問題はないようですね」


だそうです。


中学生くらいの男の子を知らないというと「景山アキラ」という名前で舞さんの兄になることを教えてくれた。


最後に景山澪という名前答えると、嬉しそうに抱き着いてた。

澪ちゃんと舞さんは、やはり双子の姉妹で澪ちゃんは姉になるらしい。


なんとなくですがメジャーな地名以外は適度にぼやかしてます。

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