わたしの名は
「舞!
ちょっと大丈夫?
しっかりしなさい!
パパ! ママー!」
頭がズキズキと痛む。
目を開けると黒髪のとんでもないレベルの美少女が大声を張り上げて助けを呼んでいる。
はて?
ここはどこだ?
体を起こすと頭の上からポタポタと赤い血が白いシャツに流れ落ちた。
おかしい、俺の手が子供の様に小さいしなんで薄い水色のスカートなんて履いてるんだ?
「ま、舞ぃ!
す、すぐに救急車を呼べ」
「はいぃ!」
スーツ姿の若い男性と茶色いワンピースの若い女性が現れると、血相を変えて俺に近づき、かけてあったタオルを俺の頭に押し付ける。
「あの、ここはどこですか?
あなたは誰ですか?」
状況を把握した男性は大きく目を見開いたが、俺も同じように驚いていた。自分の声が、子どものものになっていたのだ。
「な、何を言ってるんだ?
パパの事がわからないのか?」
「パパ?」
俺の両親はとっくの昔に亡くなっているので首を傾げる
「ちょ、ちょっと舞!
私の事は分かるわよね!?」
どえらい美少女が涙目になって俺を顔を近づけてきた。
「知りません。
すみませんが、ちょっと離れて下さい」
事案になるんで近づかないでほしい。
俺はまだ社会的に抹殺されたくないんでマジで勘弁。
ただ、どえらい美少女さんはペタンと崩れ落ちるように座り、目が虚ろになっている。
「あ、なんかすみません。
どこかで会ったことありましたか?」
「う、うぁああああああん
舞が、舞がぁ」
どえらい美少女さんはパパさんにしがみつき大声で泣きだした。
どうしよう。
すると、若い女性がスマホで電話をしながら部屋に戻ってきた。
階段から落ちたとか、頭からひどい出血だとか、意識はあるとか話している。
「明日香!
舞の記憶がおかしい。
俺や澪の事がわからないみたいだ。」
明日香さんはかなり驚いたようだが冷静にパパさんの言った事もスマホで伝えた。
頭がズキンズキンと痛むが、どうやら速やかに状況を整理する必要がありそうだ。
まずは手を動かすと俺のであろう小さい子供の手が動きだす。
つまり子供の体になってしまったということか?
次は俺の名前だが思い出せない。。
いや、何故か「景山舞」という名前が自然と頭に浮かんできた。
いやいや違うだろ。
この名前じゃない。
「舞。
ママの事は分かる?」
うん、わからん。
ただ今までの会話を聞いていると目の前の若い男女は夫婦で俺の両親という事だろうか。
どえらい美少女は澪ちゃんという事か。
どうしよう、この人が母親だとは思えないのだが、泣きそうな明日香さんの顔を見ると知らないとは言いづらい。
こういう時って都合よく意識を失ったりするものだが、頭がズキンズキンするだけでまだまだ意識ははっきりしている。
困ったな。
よし!
意識を失ったふりをしよう。
困った時は逃げるに限る。
俺は目を閉じてガクッと意識を失ったふりをした。
「舞!
しっかりしてぇ!」
すると、明日香さんの悲鳴が聞こえる。
これはものすごく罪悪感を感じるな。
じーっと意識を失ったふりをしていると、色々人が集まってきたのが分かる。
まずは明日香さんがお父さんと呼んでいる人が来た。
ものすごく威厳のある声で高天大学病院というものすごく有名な病院に受け入れるように依頼している。
パパさんがお母さんと呼んでいるハリのある女性は知らない女性の声の人に入院させるから準備をするように指示をだしている。
なんかすみません。
本当にすみません。
でも入院なんて大事すぎませんか?
あ、でも最近は入院しないと救急車利用料金取られるんだっけ。
なるほど、しっかりした人だな。
しばらくすると救急車のサイレンの音が聞こえた。
そして担架っぽいものに乗せられて移動している時に感じたのだけど、この家、ちょっと広すぎませんか?




