プロローグ 無人島に持って行くなら?
「無人島に一つだけ持って行くなら何にする?」
ありふれたよくある質問だ。ある人はナイフと言い、ある人はライターと言う。そんな正解のないありふれた質問。
だが、ここに私は正解を見つけ出した、というより体験した。それは…
「俺は魔法かな〜」「いや、リアルにあるもので答えろよ!」
そうツッコまれた俺は佐藤島流。なかなか変わった名前をつけられた大学一年生だ。
大学の入学式も終わり早一週間。新たな友達も何人かでき始めた頃、特に仲良くなった三人
「佐々木刃」「水城洋太」「斎藤ほむら」と大学内の食堂で雑談していた流れで今に至る。
「普通はナイフとかだろ。魔法って、ずるいを超えちゃってるじゃん」刃は笑いながら俺にツッコむ。
「僕は水かなー。水ないと人間って4日しか生きられないとか言うしね」洋太は無難な回答だ。
「私はライターかな。何にでも使えるし、ご飯作る時も困らなさそう。」斎藤さんも無難な回答だ。だが、洋太とは違いなぜか正しいような感じがする。
「魔法があったらなんでも出来るよ?火をつけることも水を出すことも。なんでも一つだけならリアルじゃなくても良くない?」
「いや普通リアルだろ。てか一つだけなら火を出せる魔法とか水を出せる魔法とかそれぞれ一個カウントだろ。」
「刃は分かってないなー。魔法って全てだから。一は全。全は一よ。」
「それ使い方あってるの?」斎藤さんにもツッコまれたところでズボンのポッケの中が震え出した。
ポッケに入れていたスマホに電話がかかってきたのだろう。ポッケからスマホを取り出し誰からの電話か確認すると
「案内人」と書かれていた。
普段なら即切りするが、俺は「なんか変なのから電話かかってきたんだけど」と言って興味本位で通話ボタンを押してしまった。
「私は案内人です。あなた様は無人島に一つ持っていくとすれば何を持って行きますか?」
案内人という声の主はタイムリーなことにそう告げた。
「俺は魔法ですね」そう言った瞬間、スマホからまばゆい光が放たれ、目の前が真っ白になった…
「あぇ?」みっともない声を出しながら俺は目を覚ました。
口の中が気持ち悪く、いつものように洗面台で口をゆすごうとして立ち上がった。 あれ学校は?てかみんなは?
当然の疑問が頭を駆け回ろうとする中、その疑問は一瞬にして別の疑問にかき消された。
「ここ…どこ?」
目の前に広がっているのは広大な海、そして砂浜。後ろを振り返ると実際に見たことがなかったジャングルの木々のようなものが広がっていた。
「俺、食堂にいたよね?それで…そうだ電話がかかってきて、無人島の質問されて、それで…えぇ?」
理解が追いつかない俺を嘲笑うかのように、ポケットの中のスマホがまた震え出した。
スマホは圏外、Wi-Fiもなさそうなのになぜか案内人から電話がかかってきた。
「もう訳わかんねぇ」そう思いながら電話に出ると案内人はこう告げた。
「佐藤島流様。あなた様が今いらっしゃるそこは無人島です。まああなた様のお友達もいらっしゃるので正確には無人島とは言えないかもしれませんが、あなた様にはそこから脱出していただきたいのです。
元の場所に帰れる出口となる場所はどこかに存在しています。生き延び、探し出してくださいね。」
「は、はぁ!?」無人島?出口?意味がわからなかった。
「あぁ、それともう一つ。あなた様が無人島に持って行きたいものは魔法でしたね?今からそちらにお望みのものをお送りします。海の方をよく見といてください。それでは頑張ってくださいね。」プツッとそこで通話は途切れた。
俺はどうやら無人島に来てしまったらしい。意味がわからないがそれより…
「あいつ魔法が送られてくるとか言ってたよな?」案内人に言われた通り海の方を見ていると木箱が流れてくるのが見えた。あれか?と思いながら砂浜から海に近づき、木箱を手に取る。浅瀬にあった貝殻で殴ってみると思いのほか簡単に開いた。中を確認すると赤い石?のようなものが入っていた。
「なんだこれ?」そう思い手に取った瞬間、石は消え頭の中にファイアという言葉が浮かんだ。
「ファイア」そう呟くと手の先から火の玉が現れ、目の前にあった木箱がパチパチと音を立てて燃え上がった。
「マジ…かよ…」
無人島という非現実的な場所で俺はもっと非現実的なものを一つ手に入れてしまった。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
初めての投稿で至らぬ点も多くあると思いますのでよろしければ評価、感想などよろしくお願いいたします。