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豚骨味

「やっと放課後か。じゃ、さっさと家に帰って『インスタント美少女を』」


 授業が終わって光のごとく速さで家に帰り、『インスタント美少女』を楽しむ。最近はこのサイクルが定着してきた感があるが、今日はなんだか心に何かが挟まっている感じがする。


「姫花に甘えすぎないように、ね……まあ、気にしてもしょうがないか、面倒だし」

「涼二君、また家に直行?」

「ああ、だから一緒にどっかには行けないぞ」

「……涼二君さ、昔はそんなんじゃなかったよね」

「昔?」


 姫花は何を言っているんだ? 俺は昔から物臭だ、長い付き合いの姫花だからそんなことは分かっているはずなのだが。


「そりゃ元々面倒臭がりではあったけどさ、ここまでじゃなかったでしょ?」

「ガキの頃と一緒にするなって、子供なんて好奇心の塊なんだから」

「でも……やっぱり違うよ。何だか……寂しい」

「……俺は行くぞ」


 面倒臭い、下手に俺のことを良く知っているだけに猶更だ。でも……それだけか? そう自分に言い聞かせているような気もする。途中で話を無理矢理遮った本当の理由……


「あんな顔で、あんなこと言うなっての……」


***


 家に帰っても、昨日までのような高揚感がない。まあ『インスタント美少女』もこれで4回目だ、最初の頃のような新鮮さはもうないのかもしれないが。


「……考えてもしょうがないか」


 こういう時こそ、お手軽に楽しめる美少女に気分を晴らしてもらおう。残りの味は……豚骨か。見たところ味は醤油・味噌・塩・豚骨の4種類みたいだ。まあ、今は多種多様な味があるとはいえ、ラーメンは基本この4種類だろう。あとは属性変して楽しめばいい。


「お湯を注いでっと。今回は基本通りの3分で、属性変は……唐辛子とバターを入れてみるか」


 複数の属性を混ぜることもできると言ってたし、今回はそれを試してみよう。量の塩梅は50%50%で、と。食べ終え、お約束になってきたがカップ麺の容器が光だし……パッケージに描いてある美少女キャラが現れた。


「はいは~い、こんにちは涼二!!」

「お、おう」


 のっけから妙にハイテンションで思わずびっくりしてしまった。今回の子は、何だかギャルっぽい。学園でも陽キャのグループの中心で楽しく喋っていそうな感じだが、とっつきにくい雰囲気はない。もちろん、文句なしの美少女である。


「私、頓野骨奈(とんの こな)っていうの、よろしく」

「豚骨味だから、濃いキャラなのか」

「そういうこと。ちなみに唐辛子とバターを淹れてくれたから、ツンデレ風味よ」

「その割にはツンデレっぽくないんだが?」

「こ、これからよ。まったく、せっかちな男ね」


 何だろう、このファッションツンデレみたいな感じは。しかしツンデレか……試しにそういう感じの姫花を想像してみた。姫花はそういうのもソツなくこなしそうだな、良いかもしれない。


「姉さん達から話は聞いてるから何となく想像は出来るけど……何を考えてるの?」

「ん、ツンデレ風味の姫花を」

「やっぱり!! そ、そんな浮気なあなたのことなんて、好きじゃないんだからね!!」

「やっぱりファッションツンデレじゃん……てか、姉妹設定なの?」

「そうよ、私は四女。長女は油子姉さん」


 何だか設定に妙にこだわりを感じるな……てか、頓野って。


「豚骨味だから、豚野じゃないの?」

「あのねえ、私も一応花も恥じらう乙女よ、気にするに決まってるじゃない」

「牛も鳥も苗字に普通に使われてるじゃん」

「それはそれ、これはこれ!! まったく、デリカシーの欠片もないんだから」


 何だか妙な会話になってきたが、こういうのも案外楽しいかもしれない。姫花は優等生だから、こういうはっちゃけた話ってあまりしないし。


「……まさか、また姫花さんのこと考えていたり?」

「その通りだが」

「はぁ……あなたって本当に面倒臭がりなの?」

「誰がどう見てもそうだろ?」

「その割には、事あるごとに姫花さん姫花さんじゃない。こだわりすぎでしょ」


 ……言われてみるとそうだ。仲良い女子が姫花くらいしかいないとはいえ、別に想像するのは身近な人じゃなくても良い、好きなアイドルでも好きなアニメキャラでもいいはずだ。


「ま、一番想像しやすいからな、手軽だし」

「何だか姫花さんが少し可哀想になってきたわ……」

「どういう意味だよ」

「自分で考えなさい。あ、そんなこと言ってたら3分になっちゃったわ」


 もうそんな時間か。今回は今までみたいに萌えるスキル発動って感じじゃなかったけど、この会話スキルがそうと捉えることもできるか。


「それじゃ、涼二がまた豚骨味を選んだ時に会いましょう」

「おう」

「……軽く考えるのは、私に対してだけにしておきなさい」


 そう言って、骨奈は消えた。何だかんだいって、親身になって話をしてくれたような気がする。もしかして……ファッションじゃなかったのかも。


「別に姫花を軽く考えているつもりはないんだが……」


 そう言いつつも、どこか自信を持てない自分がいた。『寂しい』……姫花のあの言葉が今も心から離れない。俺は……姫花に嫌われたくないんだろうか?


「ゲームでもするか……ん?」


 俺が面倒臭がりって、どうして骨奈が知っているんだ?

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