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味噌味

「さて、授業も終わったし、帰るか」


 元々どっかに寄ったりなんかしたくないが、一刻も早く帰ってあの【インスタント美少女】を楽しみたい。今日は何の味にするか、味変ならぬ属性変はどうするか、帰りながら考えるとしよう。


「涼二君、今日も家に直行?」

「そうだが?」

「ちょっとどっかに寄って行こうよ、少しだけでいいから」

「お断りだ、他の奴を誘えばいいだろ?」


 姫花はクラスのアイドルのような存在だ、男子連中に人気があるだけじゃなく女友達も多い。姫花に誘われて断る奴なんかいないだろうに、どうして俺にこだわるのか。


「私は……涼二君と行きたいの」

「気使う必要なんかないんだぞ、何だかんだで姫花にはお世話になってると思ってるし」

「そういうことじゃなくて」

「んじゃ、またな」

「……馬鹿」


***


 家に帰り、速攻でお湯を沸かし、【インスタント美少女】の用意をした。今日はどの味にするか考えたが……


「醤油の次に定番のラーメンと言えば……まあ、味噌だよなあ」


 味噌味の【インスタント美少女】にお湯を注ぎ、蓋をした。そういえば、お湯を入れて待つ時間によって子供っぽくなったり大人っぽくなるんだったな……今回は試しに早めに2分間待って食べてみるか。


「属性変は……油子が言っていたバターにしてみるか、味噌味にも合うしな」


 2分経ってから蓋を開け、バターを入れて食べてみた。さすがに王道の組み合わせ、美味いな。食べ終えると前回同様、カップ麺の容器が光だし……パッケージに描いてある美少女キャラが現れた。


「こんにちは、涼二先輩」

「せ、先輩……」


 これまた非常に可愛い子だ。年齢は中学1年くらいだろうか、確かにパッケージのキャラより幼くなっている。着ている服は振袖の着物で、黒髪ボブカット、まさに大和撫子だ。


「私、味咲噌花(みさき そうか)です。以後、お見知りおきを」

「味噌味だから、和風少女なのか」

「はい。加えてバターを加えて下さったので、まろやか風味な後輩ですよ」

「ちなみに、入れる量によって更に変わったりするのか?」

「はい、ですから入れすぎ注意です。唐辛子を誤ってドバっと入れたりすると、氷のようにキツイ性格になってしまいます」


 氷のようにキツイ性格ね……試しに氷のようにキツイ姫花を想像してみた。いや、これはこれでアリなのか?


「……何を想像しているのですか?」

「ん、氷のようにキツイ姫花を」

「油子さんから聞いてはいましたが……姫花さんのこと、随分気に入っているんですね」

「まあ、幼馴染だし」

「それだけとは到底……何にせよ、今目の前にいるのは私ですから」


 なぜか頬を膨らませながら噌花は正座で座り、どこから取り出したのか茶を点てる道具でお茶を入れてくれた。さすがに振袖の大和撫子、絵になる上に中学生というまだあどけない少女がやっているのが妙に癒される。


「はい、お茶です」

「……うん、美味しい」

「和菓子もどうぞ」

「……やっぱ良いなあ、この組み合わせ」


 魅力的な和風少女が入れてくれる美味しいお茶と和菓子、日本人でこれを喜ばない男などいないだろう。噌花は穏やかな笑みを浮かべた後、両手を広げた。


「さあ涼二先輩、こちらにいらしてください。私の胸の中で、ゆっくりしてください」

「あ、ああ……」


 俺は遠慮なく、噌花に抱きしめてもらった。暖かくて落ち着く……後輩の胸の中でというのが妙な背徳感があって、何だか癖になりそうだ。


「……残念ですけど、時間切れですね」

「もう3分経ったのか?」

「はい、残念ですが」

「楽しい時間は経つのが早いなあ」


 まろやか風味な和風の後輩、想像以上に良かったなあ。後輩という幼さに包容力が合わさって、まさに癒しの極みだ。


「それでは、涼二先輩がまた味噌味を選んだ時にお会いしましょう!!」


 そう言い残し、噌花は消えた。うむ、今回も良かったなあ。


「でも、前回もそうだし今回もだけど、良いところで終わっちゃうんだよなあ。まあ、3分間だから仕方がないけど」


 動画だってそのくらいの時間が丁度いいし、変なこと考えるのはやめやめ。面倒臭くなってきたので、俺は自室に戻ってベッドに横になった。

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