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「あ、ここは来た事あるな」


 2時間くらいガッツリ街を歩き買い物をすると、ようやく辿り着いたのは夕食の店。

 洋食店だ。いつだか忘れたが、中学の時に篠崎たちと来た記憶がある。


「あっ、そうなの?」

「ひなたはよく来るのか?」

「って言っても、数回だけど……、コスプレのアフターで使ってね」

「……あのちっさい人とおっきい人の?」

「そうそう、亀崎さんとか他の人も居るんだけど、いっつも秋葉に居るのは今日の二人くらいかなぁ」

「…………そうか、充実してんな」

「そーまくんは完全にインドアだもんね」

「そうだな」


 否定は出来ないな。昔はもっと外で遊ぶタイプだったんだけど、篠崎たちと遊んでたりそれから色々あったりで、完全に室内、それも自分の部屋の中で完結する趣味だけで生きるようになってしまった。

 といっても最新ゲーム機とかはないのでほとんどスマホゲームとか漫画読んだり動画見たりとかそんな程度ではあるが。スマホがなくなったら死ぬ。


 席に着くと流石に夕飯時か、お酒を飲んでる人の方が多い。それでも洋食屋らしいメニューの中から腹に溜まりそうなものをいくつか注文し、しばらくコスプレの話を聞いてるうちに料理が揃うので、それを食べながらまた話を聞く。


「……なるほどな、ネットでは前から知り合いだったのか」

「そうそう、流石にボクでも日本来て半年でそんな友達出来ないよ」

「いやひなたなら余裕だろ……」


 クラスでいっつも人に囲まれてるしな。しかし、ひなたにとってはそうではないようで「違うんだよねぇ」と答えられる。


「クラスで仲良くできる人とネットで仲良くできる人、結構違くない?」

「……そうなのか?」

「うーん、あんまり同意されないか……、そーまくんネットでも割と狭い範囲でしか交流してないもんね」

「悪かったな」


 こいつ俺のアカウント見てるっぽいんだよな。たまにツイートした内容について話されるし。ただフォローはされてないので、止めようがない。


「んで、さ」

「うん?」

「今日はずっと付き合って貰ったけど……、どうだった?」

「どう、とは」

「外でのボク、どんな感じか伝わったかなーって」

「あぁ、そういうことか。……そうだな、」


 ほとんど家でしか話さなかったひなたの、外での姿はちょっと想像と違っていた。好きな本やグッズを見ている時、コスプレ衣装を見てる時、人と話してる時――、どれも、家や学校とは違う姿だった。


「まぁ割と面白かったぞ」

「そ、そう? なら良かった」


 ほっとした様子で、カラフルなノンアルコールカクテルを飲んでいたひなたは、遠くを見上げるような仕草をする。


「でも、どうしたんだ?」

「……うん?」

「これまで今日みたいな店に連れてこなかったし、話もしなかったろ」


 ――そう、これが気になっていた。

 同じ家で生活していても、いつも話してるわけでもないし、ずっと一緒に居るわけでもない。それでも最近は俺が勉強のためにリビングに居る時間が長かったので話す機会も多かったが、趣味の話をすることはほとんどなかったのだ。

 それなのに、どうして急に俺を連れて行こうと思ったのか、それが知りたかった。


「うーん……、普段の、そーまくんが知らないボクを見て貰いたかったってのと、あと」

「あと?」

「……幻滅、しないかなぁって」


 さっと目を逸らし、頬を少しだけ赤らめ恥ずかしそうに言われると、ドキリと、胸が痛むような気がした。


「幻滅?」

「だ、だってほら、そーまくん、オタクの子あんまり得意じゃないでしょ?」

「…………あぁ、そういうことか」

「一緒に暮らしてたら隠しててもそのうちバレちゃうし、なら自分からオープンにした方が良いって……亀崎さんが」


 亀崎さんが。ってあれ、バイト先の店長だよな。

 ひなたがオタク気質なことは前から察してはいたけど、あれでも隠してるつもりだったのか。別に気にしないのにな、俺だってインドア人間だし。


「別に、趣味にとやかく言うことはないし、好きにすればいいだろ」

「そ、そう?」

「そうだよ。ただま、……部屋は欲しいよな」

「……そうだね」


 今日結構色々買ってたけど、ひなたが買い物をしても家の私物が増えてる様子はほとんどない。つまり毎回買ったものは隣の家に置きに行ってるということだ。


「……俺の部屋、使うか?」

「いいの!?」

「まぁ、知っての通り大して何も置いてないからな」


 小さい本棚(昔中古で買った古い漫画しか入ってない、ぶっちゃけもう読んでないから捨てても良い)に小さいテーブルと椅子、あとテレビとゲーム機がある程度。

 普段はベッドの上で過ごしてるから、ベッドがどけられない限りは全く困らないのだ。


「……でも、ボクの私物置いたら結構狭くなっちゃうと思うけど、大丈夫?」

「ベッドがありゃ問題ない」

「……ん、じゃあ夏休み中に動かしちゃうね。手伝ってもらっていい?」

「あぁ、力仕事なら任せろ」


 別に力持ちってわけでもないがな。なにしろ万年帰宅部だ。

 それでも流石に小柄なひなたよりは力があるから、多少の荷運びくらいは手伝えるはず。


 そして後に、軽率に部屋の共有を提案したことを後悔することになるのだが――

 その時は、想像もしていなかったのであった。

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