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私、宰相閣下の抱き枕!?  作者: 朝姫 夢
本編

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52/117

52.上下関係は明確

 とはいえ、そんなことを知る(よし)もないし想像すらしていない二人は、明日の予定について話しながら、食堂へと足を向ける。

 もちろん私も、その後ろをしっかりとついていく。

 仕事の話の時には邪魔をしないように、エドワルド様の横には並ばないようにしているけれど。


(今日って、お休みじゃなかったっけ?)


 そう思って、少しだけ二人を睨んでみた私に。二人が気付くことは、当然なく。

 そのまま普段と同じように、全員で食堂へと足を踏み入れて。まずは、エドワルド様の食事が始まった。


(そういえば、これが当たり前になってたけど……)


 私のごはんは、エドワルド様の食事が終わってからだと決めたのは、確かマッテオさんだった気がする。

 犬についてすぐに調べて、食事は必ずリーダーが終わってからでないといけないからという理由で。


(エドワルド様が一番偉いから、預かっているだけとはいえ上下関係は明確にするべきって言ってたなぁ)


 当時の私はそれどころじゃないくらいに、混乱と不安の中にいたから。そんなこと、気にしていなかったけれど。

 今にして思えば、そこからすでにマッテオさんの優秀さは滲み出ていた気がする。

 そして、実際に飼い犬として迎え入れてもらう形になった今だからこそ。マッテオさんの言葉は正しかったとも思える。


(これが本当に、ただの犬だったら)


 この時点で、しっかりと上下関係が形成されていたということだから。

 そう考えると、フォルトゥナート公爵邸に迎え入れられる犬は、とても幸せなのではないか。

 犬として考えれば、しっかりとしたリーダーがいる上に、それを支えるための群れが形成された状態で、仲間として迎え入れられるわけだから。

 これ以上の幸せは、ないのかもしれない。


(大型犬の運動量でも問題ないくらいの、広いお屋敷が王都にあって)


 毎日しっかり遊べて、新しいおもちゃも定期的に買ってくれて。

 何より、ごはんが美味しい。とても美味しい。


(この生活も、幸せではあるんだけど、ね)


 でもそれは、あくまで私が本物の犬だったら、の話で。

 私はやっぱり、犬のエリザベスではなくて。パドアン子爵家の、アウローラだから。

 豪華で優雅なこの生活を、犬として続けるよりも。貧乏でもいいから、人として、令嬢としての生活に戻りたい。


(そのためには、やっぱりもう一度森の魔女に会いに行かないとダメなのかなぁ?)


 私をこんな姿に変えた、元凶に。

 できれば、二度と会いたくはない。そう思うのは当然だし、仕方のないことだけれど。

 ただこうして生活しているだけでは、何の手掛かりも得られないから。


(どうにか、方法を考えないと)


 あの森に行ったからといって、会える保証はない。けれど、行ってみなければ分からないから。

 問題は、どうやって行くのか。

 説得する以前の問題で、森に行きたいと伝える手段が存在していない現状は。私にとっては、かなりの不利。


「エリザベス、夕食ですよ」

「わふ!」


 とはいえ、今はそれよりも。


(やっぱり、今日の夕食は豪華だ!)


 目の前のお肉たっぷりなご馳走を楽しむことのほうが、大切だから。頭を使うことは、あとでもできる。

 考え事をしていたら、思っていた以上に早く時間が経っていたらしく。すでにエドワルド様は食事を終えて、食後の紅茶を楽しんでいるのが目の端に映ったけれど。

 それ以上に私の視線は、マッテオさんが持ってきてくれたお皿の中身に釘付けで。


(いっただっきまーす!)


 心の中で感謝をしてから、楽しみにしていた食事にかぶりつくように口をつけた。



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