表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私、宰相閣下の抱き枕!?  作者: 朝姫 夢
本編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

109/117

109.今日もまた

「あぁ、ローラ。ここにいたのか」


 執務室で公爵領に関する資料と向き合っていたはずのエドワルド様が、フォルトゥナート公爵邸の中庭に立てられているガゼボの中へと入ってくる。

 今日は久々に晴れてあたたかいから、外でゆっくりしようと思っていると朝食の席で話していたことを、きっと覚えていたのだろう。


「書類は片付きましたか?」

「さすがにまだもう少しかかるが、休憩時間に癒しをもらうくらいならば構わないだろう? なぁ、レックス」

「わふっ」


 私が社交界デビューしたあの日の約束通り、エドワルド様は本当に犬を迎え入れた。真っ白で毛足の長い、優雅な雰囲気の男の子を。

 確かにあの時口にしていた通り、見た目は私の犬の姿にそっくりだった。とはいえ窓に映る自分の姿を見たのは一度だけだったから、正直そこまで正確には覚えていないけれど。

 それでも毎日のように目にしていたエドワルド様たちが、口を揃えてそっくりだと言っていたのだから、本当に似ているのだろう。

 ちなみに「賢いところもそっくりだ」と、迎え入れてすぐの子犬の時から親バカになっている屋敷の主の姿は、今もたびたび目撃されている。


「お前は本当に賢いな。大きな声で返事をしなかったのは、オリアーナが起きてしまわないように、だろう?」

「くぅん」


 今もこうして、愛おしそうに目を細めながらレックスの頭を撫でているのだから。

 けれどその言葉には、私も大いに同意する。確かにこの子は、とても頭がいい。親バカなどではなく、本当に。

 普段であれば、エドワルド様の姿を見かけるだけで尻尾を振って、嬉しそうに駆け寄っていくところを。今は、そうしなかった。

 その理由は明確で、レックスは私たちの護衛として側にいるから。私と娘のオリアーナが、この場所でゆっくりと過ごせるように。


「眠ったばかりだったか?」

「いいえ。お散歩中ご機嫌だったからか、この場所に落ち着いてすぐに眠ってしまったんです」

「それは、何とも可愛らしいな」


 そう口にしながらも、起こさないようになのだろう。オリアーナには触れず、優しい瞳で見守るだけに留めているエドワルド様。

 代わりに、というのも変だけれど。そっと私の肩に手をまわして、抱き寄せてくれた。

 結婚後、すぐにレックスを迎え入れてくれたのは、きっと私が寂しい思いをしなくていいようにという配慮もあったのだろう。そして今は、こうして休憩時間に会いに来てくれる。


「無理はしないでくださいね?」

「愛しい妻と子供に会いに来るのは、無理の内に入らないだろう?」


 娘に向けているのとはまた違う、けれど愛おしさを隠そうともしない青みがかったグレーの瞳が、真っ直ぐに私を見ていて。思わず、頷いてしまった。

 それに嬉しそうに微笑んだエドワルド様が、私の額にそっと口づけを落として。


「もう少しで、屋敷内でするべき資料の確認が全て終わる。そうしたら、久々に家族そろってゆっくりしよう」


 私の頭を優しく撫でながら、そう穏やかな声で告げる。

 現公爵様であり、宰相閣下でもある旦那様は、それはそれは忙しい。今でも時折、帰りが遅くなるほどには。

 とはいえ、最近では部下に任せられる仕事も増えてきたとかで、結婚する前よりは随分とそういったことが減ってきてはいるけれど。


「レックスも、遊んでもらえなくて寂しそうでしたよ」

「あぁ、そうだな」


 私もよく知っているから、仕方がないことだとは思っているけれど。忙しくなればなるほど、飼い犬との遊びの時間は削られてしまう。

 それに一番落ち込んでいるのは、他でもないレックス本人だから。エドワルド様の元飼い犬の先輩としては、フォローの一つもしてあげたくなってしまうのだ。

 事実、私たちの言葉を理解できたらしいレックスは、それはそれは嬉しそうに尻尾を振っていたから。エドワルド様に頭を撫でられたのもあって、とても上機嫌だった。


「そのためにも、今日の分は早めに終わらせなければならないな」

「本当に、無理だけはしないでくださいね?」

「もちろんだ。……あぁ、だが」


 休憩は終わりとばかりに、立ち上がろうとしたエドワルド様が。ふと、私の耳元へと唇を寄せて。


「今夜も、私を癒してくれないか?」


 控えている使用人にも聞こえないような小さな声で、呟きを落としていった。

 色気の混ざったその声に、思わずドキリとしてしまうけれど。実際はその言葉に、色っぽい意味合いは一切含まれていない。

 そのことを、私はよく知っているから。


「もちろんですよ、旦那様」


 とびっきりの笑顔で、そう答えるのだ。

 夫を癒すのは、妻の役目。それは当然だろう。

 ただ我が家においては、それは少しだけ特殊とも言えるかもしれない。

 まぁ、ようするに。


(まだまだ、抱き枕の役目は続きそう)


 それはそれで、今では嬉しいことだと思っているし、誰にもその役目を譲る気はないので。

 愛しい旦那様のため、今日もまた安眠を提供することにしましょう。



 本編はこれにて終了です!

 ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました!(>ω<*)


 そして明日からは、おまけ話を更新する予定です(・`ω・)b

 そちらもお時間のある方は、ぜひ!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ