隣の席の君に、
席替えした。
隣の席に、話したことのない男子が座った。
クラスであまり目立たないタイプの男子。
特別イケメンとかじゃない、フツメン。
「話したことない男子だ」
彼が隣の席になった時は、そう思っただけで。
特に興味はなかった。
けど、私が教科書を忘れた日。
授業開始1分前に教科書がないことに気づいたから、別のクラスの友人に、今更教科書を借りに行くこともできず。
どうしようって青ざめてたら。
「あ……の、一緒に教科書見ませんか?」
おどおどしながら彼が言ってきて。
そんな、彼の優しさにドキッとした。
授業中。
彼と一緒に彼の教科書を見る。
いつもはなん10センチ離れている席を引っ付けて。
私の机と彼の机の間の小さな溝に教科書を開いて置いて。
ドキドキ、する。
彼が教科書を捲るたび。
彼の手が動くたび。
ドキッ!と胸が強く跳ねる。
席が近すぎて、彼の方なんて見れない。
視界に微かに見える彼の横顔が……なんだかカッコ良く見えて。
そう思ったら、余計ドキドキしてきて。
先生の声なんて、ろくに聞こえなくて。
ずっと、彼の方を意識しっぱなし。
────このまま。
このまま、授業が終わらなければ良いのにって思う。
初めてだった。
授業なんて嫌いだし、はやく終われば良いのにっていつも思うのに。
でも、今日は違う。
授業が続いてほしくて。
この時間が、終わってほしくなくて……