トミーの縫物
朝九時半、ともみは洗面台で顔を洗っている、水道がいっぱいだ。
彼女は、友達綾子の縫物の店、『ブティック愛』を手伝っている。これから、いつものようにママチャリで通勤する。
店は綾子の旦那が配達を担当している。
と「昨日、自転車屋に行ったら、空気入れるだけなのに百円も取るのよ」
あ「まあ、それはぼったくりよ」
すると奥で聴いていた、綾子のん旦那亮太が半分怒ったように
「お、それどこや?」「今津よ」
「よっし金返してもらおうか?」
と「もういいって」
亮太「ええことあるかいや。」
綾子が口をはさんだ。
「兎に角本人が、行かなあかんわ」
ともみ「だからもういいって」
亮太「まあ、俺の友達に厳つい奴おるからな、そいつに頼んどくっわ」
カラン、カラン、
店のドアのカウベルが鳴る。お客さんだ。
「いらっしゃいませ」
客「黄色いジャンパーできてますか?」
綾子「縫い目があるのですね。出来てます。」
客「いくらですか?」
綾「2千円です」
「え?2千円??高いなあ。1500円って言ってたじゃない?」
綾「いいえ、ちゃんとここに明細書があります。そこに2000円と書いてますよ。」
客「そうだったかなあ?まあいいや。ご苦労さん」
そう言って、出て行った。
ともみ「何あれ?料金間違うわけないのに。」
綾「勘違いよ。」
ともみはゆっくりだが、ミシンを滑らせている。
亮太「そういやあ、ともみさん、前はコンピュータの仕事やってたんだろ?」
と「そうよ。」
亮太「それなら、コンピュータで縫い柄デザインしてもらおうか?」
と「いやん、私、デザインはやったことないのよ。」
綾「へえ。じゃあ、文章打ってたりしてたの?」
と「そうよ。デザイン知らんねん。『フォトショップ』とか『イラストレーター』っていうソフトはあるの。でも、使い方が分らない。フォトショップなら写真を加工したりできるから、まだわかるかも。」
綾「冊子とかのデザインとかならできるでしょ?」
と「まあ、その程度ならね」
亮太「じゃあ、少しずつでも手伝ってもらおうか?ギャラはずむよ」
と「それはうれしい。でも少しずつよ」
早速、綾子は店のパソコンにデザインソフトを入れた。
でもそこからわからない。
ともみは、ある程度はわかるようだ。
色も付けれるようだし。
しかし、みるみる上達して、パソコンを使いこなせるようになった。
綾子「うーん、これで前より思い通りの仕事ができるね。
日々のギャラ上げてあげるわよ」
ともみ「いくらぐらい?」
「2000円でどう?」
「ええええ?」
「安い?」
「いいわよ。上達したらまたアップしてもらおっかな?」
亮太は、修正品の配達に軽自動車で回ってた。
「こんにちは、ブティック愛です。」
顧客「ああ、ブティックさん、ご苦労様です。」
客は自転車の空気を入れている。
亮太「パンクですか?」
客「いえ、空気が減ったのよ」
「ちなみに、自転車屋で空気入れるのいくらですか?」
「いくら、って無料でしょ?」
「ですよね、ところがお金取る所があるんですよ。100円ですよ!」
「え、どこ?」
亮太「今津です」
「苦情言いに行ったんですか?」
「いえ、本人が行ってないから」
「じゃあ、だめでしょう」
店に帰った亮太は
「空気入れの100円の件な、本人が行かなあかんらしいわ」
ともみ「だから、もうええて。私もうあきらめたから。」
綾子「諦めたらあかんわ。よっし、今から自転車屋行ってこようよ、亮ちゃんお店みとってな」
ともみと綾子は二人で自転車屋に行った。
自転車屋にはおっさんがいた。
綾子「あのおっさんか?」
ともみ「うん」
綾子は自転車の空気を入れるだけで100円も取るのはおかしいと言った。。
すると、自転車屋はあっさり100円を返した。
「なーんだ、最初からそう云えばよかったのね」とともみは思った。
綾子「お店早めに閉めて、3人で焼き肉でも食べにいかへん?」
「うん」
3人は元気を出そうと焼き肉屋に行った。
綾子「ともみちゃん、パソコンにソフト入れてデザインに使いやすくなったわね」
と「そうね。案外簡単よ。模様も入れやすいし。
でも、編み物してる方が楽よ。気持ちが和らぐわ」
駅前の鐘がなった。
亮太「ともみちゃんの新しい門出に乾杯!」
「乾杯!」
と「裁縫ができて幸せよ」