悪役令嬢に仕立て上げられたので、特大のお返しお見舞いします!
「リーリア、ここにいるレイラ・バグズディア伯爵令嬢より、君からの数々の聞くに堪えない行いの訴えを聞いて私はもう我慢ならない!今この場所を借りて断罪を行う!覚悟したまえ!!」
はい、皆さま突然ですがこんにちは。
今お名前を呼んでいただきましたリーリアこと私リーリア・ベアーズ侯爵令嬢は、ただいま断罪を宣言したこの国の第一王子のレオンハルト殿下の婚約者でございます。
「レオンさまぁ〜うっぐ…あたしほんとにこわくてぇ〜」
あらあら、伯爵令嬢なのにも関わらず婚約者以外の男性を愛称で呼ぶなんて…なんておつむの弱い方なのかしら。
(さすがリーリア様、顔色ひとつかえないな。…今日も迫力あるお顔をされてる。…威圧感がすごいですわ。…ヒソヒソ)
聞こえておりますわよ(スマイル青筋)
顔が怖いのは元よりです、威圧感なんて出さなくたって出てしまうのよもう!
「リーリア、私はいずれ国王になる人間。一方的に断罪などせぬ、公平でありたい故今から罪を上げていく。何か申し開きがあれば聞こうではないか!」
「えっリーリア様にも発言があるの?レ、レオンさまぁ、私の言うことだけでは信用ならないのですかぁ?証拠も沢山ありますぅ」
「レイラ嬢、罪人にも弁解する余地はあるゆえ、もし万が一冤罪では私の信用は地に落ちてしまう。下手したら廃嫡もあるだろう……それでもよければ弁解の時間はとらぬがどうするか?」
「えっは、廃嫡?王子様じゃなくなっちゃうの?やだやだむりむり、あっ……えっと……そ、そうですよねぇ〜証拠はあるのでいちおう話は聞かなきゃですよねぇ〜」
おいおい、聞こえてるんですけど、肩書きにしか興味ないってモロに言ってるじゃないの。この伯爵令嬢頭沸いてるのかしら…ため息しか出ないわ。
「リーリア、では今から罪を挙げていく。その後でそなたの時間を取ろう。ライアス!頼んだ!」
「はい、畏まりました。それではリーリア様、これより罪状を読み上げていきます。全て読み上げた後、発言の許しが出ておりますのでご了承ください」
殿下の右腕とも呼ばれるライアス様が出てきたってことは…そう全てはもう決まってることなのね。
「…レオンハルト殿下の仰せのままに」
「まず初めに教科書をボロボロにされたとのこと。二つ目は学園パーティーに着ていくドレスがボロボロにされたとのこと。三つ目は殿下の寵愛を受けてるからと平手打ちをされたとのこと。四つ目以降はこちらにまとめてありますのでご覧ください」
私は紙を受け取る。何と総勢5枚。事細かに書いてあるけれどもまぁそこには全く身に覚えのない内容ばかり。頭が痛くなるわ…
「ではリーリア様、こちらへ」
私は受け取った紙の内容全て目を通し、レオンハルト殿下と伯爵令嬢の元へと顔を上げる。
「発言を許そう」
「ありがとうございます。レオンハルト殿下、まず初めに申し上げますが、私はここに書かれていること全てに身に覚えがございません。」
「うっうそよ!リーリア様嘘つかないで!」
「レイラ嬢、お静かに」
「まず、教科書とドレスの件ですが…その現物はございますか?あるのであれば、魔力辿りをした結果を教えていただきたいです。」
そう、私が暮らすこの国は魔力を使い生活をしている。そして魔力辿りというのは、人の魔力は色々なものに痕跡を残し、思念が強ければ強いほど残りやすい。その魔力を分析し人を割り出すというものなのだが、自分よりも魔力が高い者の魔力の分析が出来ないという側面がある。今この学園にいる者の中でレオンハルト殿下よりも魔力が優れているものはほんの一握りしかいない。なのでレオンハルト殿下が魔力辿りをすれば大体の犯人が割り出せてしまう。
「うむ、勿論現物は残っていたため魔力辿りを行った。しかし私には分析ができなかったのだ」
(えっということはつまり……そんなことってある?……本当にリーリア様が犯人なのか……)
会場中が騒めきだす。それもそのはず、この学園でレオンハルト殿下よりも魔力が高いのは学園長を除くとただ1人。今ここにいる私リーリア以外いないのですから。
「ね?レオンさまぁもう確固たる証拠はあるんですからこれ以上続けてもむだですよぉ」
「うむ…リーリア、君に覆せるほどの証拠がないのであれば今後のことを進めさせてもらうが」
レオンハルト殿下の横で伯爵令嬢がニタリと笑う。
やっていない事を示す証拠なんて『私』は持ってない。
「…レオンハルト殿下の…仰せのままに…」
「レオンさまぁ〜はやく処遇を決めちゃいましょう〜」
あらあらさっきまで泣いてたのにもうお花畑になってるのかしら。しかも何で伯爵令嬢に決定権があるのよっ頭沸いてるのかしら。
「うむ、ではこれよりレイラ・バグズディア伯爵令嬢の断罪を行う!!!」
「……は?レオンさま?間違ってない?断罪されるのはリーリア様でしょう…?」
はぁぁぁぁぁホントに頭沸いてる伯爵令嬢ね。おっと大変顔がにやけてしまう扇子で隠さないと…
「違うことなどあるものか!私の大切なリーリアをこれ以上茶番に突き合わせるなど言語道断。リーリアが証拠を持ってなくとも私がこの謂れのない罪を覆す証拠は持っている!」
だから言ったじゃない。『私』は証拠を持ってないって。
聞いてた?伯爵令嬢様?
「えっえっどゆこと?なに?なんで?」
「レイラ嬢、レオンハルト様は次期国王、リーリア様は次期王妃、お二人には常に監視という影がついております。それ故お二人の行動は全て記録に残されております」
さぁっと青ざめる伯爵令嬢。そりゃそうよね、本来なら影の存在は明かしてはいけないこと。
レオ様、大丈夫かしら。お義父様からお咎めないかしら?
「リーリア、大丈夫だ。父も母も大好きなリーリアを虐める奴は完膚なきまでに叩き潰せ!と言われている!心配するな」
そう言ってレオ様は眩しいくらいのお顔を私に向ける。
「こんなのおかしい!レオン様、さっきの魔力辿りの件はどう説明するんですか!」
あら、口調が元に戻ってますわよ、伯爵令嬢サマ?
「先程レイラ嬢が挙げたリーリアへの罪だが、王家の影の証拠だけで覆すことは充分である!レイラ嬢、リーリアへの侮辱行為、王家への反逆とみなす!連れて行け!」
「いやよ!納得いかないこんなの!おかしい!途中までうまくいってたのにぃー!!」
そう言って伯爵令嬢は会場から連れ出された。
当然ダンスホールは騒然となっている。
「皆のもの、騒がせてしまって申し訳ない。先程伯爵令嬢が言っていた魔力辿りの件だが実に簡単なことだ。彼女の自作自演ゆえ魔力が辿れなかっただけのこと」
そう言い終わる前にレオ様に抱き寄せられる。
うぅ、本当にこの人私の事が…
「リーリアすまない、君を疑うような場にしてしまい。伯爵も巨額詐欺の疑いがかかってた故、娘もろとも潰してしまおうと父上から持ちかけられてな。あの令嬢がリーリアの有る事無い事吹き込んでくるから私も父も母も我慢の限界だったよ(青筋ニコニコ)」
うっわぁ〜めっちゃ怒ってるぅ〜
腰を引き寄せられ金髪青眼眼福すぎる…おっとと、こんなに見つめられたら恥ずかしくて顔が真っ赤になってしまいますわ
「ゴホン…私はレオンハルト殿下…レオ様を幼少期よりお慕いしております。ですので今回もレオ様のことを信じておりましたわ。それにレオ様は、一回も私を名指しで断罪するとも、婚約破棄するとも、おっしゃりませんでしたもの。全て伯爵令嬢に向けたものだとわかりましたわ」
とニッコリ笑って見せるとビックリした顔をしたレオ様。
「……?」
「……リーリア!!!君にレオンハルト殿下と呼ばれるたびに胸が締め付けられる思いだったが今小さき頃の愛称で呼んでくれたね!リア…可愛いだけでなく頭のキレもピカイチだなんて私は本当に幸せ者だ!リア!愛してる!」
と言って抱きしめクルクルと周りだす。
周りは普段は物静かなレオ様が私を抱き上げてニコニコ笑ってるので周りは騒然となる。
「はっ………恥ずかしいのでおやめください!」
こうして悪役令嬢に仕立て上げられた私でしたが愛する人が特大のお返しをしてくれたおかげて顔が怖くて威圧感が凄い令嬢という肩書きも払拭され、幸せに暮らしましたとさ。
おしまい
初投稿作品です。
誤字脱字、話の構成などまだまだ未熟ですが、ここまでお読みいただきありがとうございます。