追放
アダムによって、楽園であった神の国を追放されたイブがとぼとぼと歩いている。行く宛てもなくただ神の国から遠のくように歩いているだけの姿は哀れとしか言いようがない。そこへまた蛇が現れた。
「大変な目にあってしまいましたね。まさか、あなたのおかげで真実を知り理解する力を得たのに、感謝もせず追い出すとは驚きです」
「アダムも実を食べたことに変わりはない。それなのに何故私だけこんな目にあわなければいけないのでしょう」
「きっとそれが運命と言うものでしょう。しかしそう決めつけるのはまだ早い。私にも多少の責任があります。ですからあなたを助けてあげましょう」
「助けると言っても何ができると言うの? あなたはただのずる賢い蛇なのでしょう?」
「私はサタン、光を産み出す神の対極に産まれたものです。光がいくつも作られれば、その数だけ闇が産まれると言うことです」
「そのことが私となんの関係があるのでしょうか」
「私の国へいらっしゃい。あなたは神の国を追放された、つまり光の対極になったのです。そしてそれは闇、あなたはこれから闇の世界で暮らせば良いのです」
「そこへ行くと何かいいことがあるのですか? 今までのあなたの言動からはとてもそうは思えません」
イヴは正直な気持ちを蛇へぶつけるように吐き出した。すると蛇はまた、さらなる誘惑をしてきます。
「いいですか? 光は闇を作り消すことはできない。しかし闇は光を消すことができるのです」
「それがどのような事なのか私にはわかりません」
「あなたは神に作られた存在です。そのあなたが闇の力を手に入れたなら、きっとこの世から光を消し去ることができるでしょう。どうですか? その力で神やあの男に仕返しをし、ざまぁと言ってやりませんか?」
それを聞いたイヴの口元に怪しい笑みが浮かぶ。
「ふふ、うふふふ、それは楽しそうね。いいでしょう、私を闇の国へ案内してくださいな」
こうしてイヴは、サタンと言う名の蛇に連れられて闇の国へと消えて行った。