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その5:あぁ、いいにほい

 とりあえずは元の世界に戻る方法を探すってことを方針に頑張りますか。


 さてはてこんなことを言ったのは誰だったっけ?


「お兄ちゃんだよ」


 五月蝿い、今はモノローグっぽい雰囲気を醸し出しているところなんだぞ。邪魔をするな、妹よ。


 ……え〜と、あれ? 何処まで話してたっけ?ほら光、お前のせいで忘れただろ!? どうしてくれんだよ!? あぁー、もういいや面倒臭ぇ。


 城の書庫にある文献を全部読んだが、何一つ手掛かりがなかった。ド畜生が。

 しかも勇者が城に近付いてきているらしい。ざけんなよ。

 絶望だね。この世の中には失望したよ。帰る方法がない、勇者は攻めてくる。ダルいっての。


「お兄ちゃんの匂いだ〜」


 ええい! 離れろ! ベッドの上に昨日着ていた服があるからそれでも嗅いでろ。


「やだ! お兄ちゃんの匂いはリアルタイムで嗅ぐと威力が2倍になるの!」


 威力ってなんだよ、威力って。


「お兄ちゃんの匂いを嗅ぐとHPゲージが一気に減って赤くなるの」


 それはお前だけだ。


「じゃあ試してみる? ティアさん、お兄ちゃんの匂いを嗅いでみてください」


 いきなりティアに振る光。

 あまりの無茶振りに注いでいたコーヒーを(こぼ)してしまったティア。


「わ、わたしですか?」


 別にやんなくていいぞ、ティア。光の戯れ言はスルーがデフォルトだ。


「では、失礼して……」


 っておいっ!? 嗅ぐんかい!?


「………」


 あ、あの〜……ティアさん? 何か言ってくれませんか? ちょっ! 段々登ってくるな!! てか光もさっさと離れろ!


「あ、ここ、凄く良い匂いがします」


 やめて、そんなとこ嗅ぐな。息が、吐息が鎖骨の周辺に掛かって(くすぐ)ったいから。やめて、ちょっ! マジでやめて、やめ……やめろって言ってんのが聞こえねぇのか!? ………え? マジで聞こえてないの? え? 全くやめる気配が無いのは聞こえてないからだよね?


「凄いです。魔王様のココ、良い匂いです。あぁ、もうわたしはこの匂いがないと生きていけない体になりました」


 はぁっ!? 何言ってんだよ、ティア!? どうしたんだよ?お前も光みたいにならないでくれよ。俺の癒しだったのに。匂いフェチは一人でも十分なんだよ! 目を覚ませ、ティア!!


ガチャッ


「……お楽しみ中?」


 ノックもなしに入ってきたのはリファだった。


 違うっ! 断じて俺は認めない! 光とティアにとってはお楽しみかもしれないが、俺にとっては全然お楽しみじゃねぇっ!! つーか(むし)ろ助けて! 光とティアを引き剥がしてくれ! 頼む、リファ!


「しょうがないな…」


 やれやれ、と頭を一度掻き、面倒臭そうな顔をしながらも引き剥がしてくれた。


 助かった。ありがとな、リファ。


「さて、報酬として…」


 スススと近付いてきたかと思えばいきなり抱きついてきた。


 何してるんだよ、リファ!?


「いや、ね。二人がずっと嗅いでたからちょっと気になっちゃって。すぐやめるから」


 すぐなら、と油断したのが失敗でした。リファも他の二人と同様にずっと嗅ぎ続けていた。


 もうヤダ。誰か助けて。


 俺の願いは叶わなかった。あぁ無念。

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