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その27:これは面白そうなことになってきたのか?

「おいセイヤ、手紙が来てるぞ」

「手紙? 内容は?」

「『マーノ地区魔王に通達。ナマナルナ地区魔王城に来られたし。用件はナマナルナ地区魔王城会議室にて』だとさ」

「あー、アルセン。代わりに行ってきてくんねぇ?」

「魔王はお前だろ?」

「いや、だってまだこの世界の地理は知らねぇし。マーノ地区(ここ)の地理を今現在勉強中なんだぞ?」

「いや、でもな……」

「それにお前だって外に行きたいんだろ?」

「…………」

「場外に出てはいけないなんてルールは無いのに城から出ない。そのくせ偶に窓やベランダ等で外を見てる。そんなお前を見るのが鬱陶しくて堪らない」

「…………」

「だからお前が行け。これは決定事項だ。異論反論は認めねぇ」





 そんなやり取りがあり、オレは今、ナマナルナ地区魔王城に来ている。


「お前がマーノの新しい魔王か?」


 身長的な意味でオレを見下してくる何処かの魔王。

 いやいやいやいや、ないないないない。こんな雑魚が魔王? 止めてくれよ、魔王の格が下がるって。


「いや、オレは代理さ」

「フン。こんな代理を遣すとは、新しいマーノの魔王は凡愚なのか?」


 笑わせてくれるな。相手どころか自分の力量チカラすら分かってない奴が凡愚なんて言葉を使うとは。

 セイヤが凡愚ならお前は存在価値すら無くなるぞ?


「ム? 貴様はアルセナイトか?」


 雑魚の反対側から声を掛けられ、オレの事を知っている奴がこの時代に居るのか? と思いつつ、何処かで聞いたことがあるような声を発した奴へと視線を移す。

 そこには一人の老人が居た。そしてその老人はオレも知っている人物だった。


「久しぶりだな、ジジイ」

「口の悪さが直っておらんようじゃのう? 若造」

「お前だって同じだろうが」

「はて? 何の事やら?」

「まぁ、お前がしらばっくれて猫を被り続けようがオレには関係ないがな」

「ほっほ、確かにそうじゃのう。それより何故貴様が此処に居る?」

「マーノの魔王の代理だからさ」

「クック、永いこと封印されていたから身体が鈍って新しい魔王に負けて飼犬に墜ちよったか? んん?」

「ハッ、飼犬になった覚えはねぇな。それに身体も鈍ってなんか無いぞ?」

「言いよるな、若造」

「なんならその身体で直に試してみるか?」

「儂に一度も勝った事無いくせに吠えるか」

「今は衰退期で後は死ぬだけの老骨おまえと封印されていたお陰で未だ全盛期のオレ。どちらに分が有るかは言わなくてもお前なら分かるだろ?」

「儂をそこいらの老骨だと思うなよ?」


 周りの空気は張り詰め、オレとジジイの間で互いの溢れ出た魔力がぶつかり合う。


「クック、久しいのう。この緊張感」

「…………」


 お互いの魔力の錬度が高まり、一触即発の状況の中、それはいきなり起きた。


「おーいお前らー席に着けー」


 扉が開き、姿を現した人物は大魔王の一人で最も面倒臭がりなアノ人だった。

 あらゆるものをグダグダな雰囲気で覆い、張り詰めていた空気を弛緩させた。


「……命拾いしたのう? 若造」

「それはこっちの台詞だ」


 どちらからともなく高めた魔力を霧散させ、戦意が無くなった事を表した。

 そのまま互いに一瞥する事無く宛がわれた席に着く。


「さて、今日お前らに来てもらったのは今まで決まっていなかったセラルドフィ地区の魔王が決まったからだ。ほら、入って来い」


 会議室の扉が開き、一人の男が入ってきた。


「皆さん初めまして、アルセウス=セイグリットです。以後お見知りおきを」


 丁寧に礼をした後、アルセウスは自分の席へと腰を下ろした。

 見たところセイヤより少し年上か。漆黒の髪は腰の辺りまで伸びていて、それを一つに纏めているようだ。顔は一言で言うなら「優男」か。野郎の外見に興味は無いが、ヤツの魔力には驚いた。今の魔力を全く練っていない状態なのに魔力の質がとても良い。しかも魔力自体に様々な属性が宿っている。……コイツは間違い無く今の魔王達の頂点に立つ力量チカラを持っている。いや、大魔王をも超えているか? まぁ、取り合えず今のオレとセイヤの二人掛りでも分が悪い。

 あぁ、さっき身体が鈍っていないと言ったがアレは嘘だ。鈍ってなかったらセイヤに負けることは無いから。でもあのジジイもオレが嘘を吐いているのは気づいているだろう。なんせあの老獪ジジイだしな。

 それにしても、


「……アルセウス=セイグリットか。出来る限り敵に回したくないな」


 さて、用件も終わったことだし、何か土産でも買って帰るか。

 ジジイとアルセウス以外眼中に無いオレはさっさと城を後にした。

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