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その24:魔王様の失踪?

「今日はいい天気だなぁ~」


 中庭にあるベンチに寝転び、空を見上げる。

 雲ひとつない空は蒼く澄み渡っていた。


「ん? ……あれは月か」


 視界の端に何が映ったが、すぐに正体が分かった。

 月か、……月ねぇ。

 久し振りに夜はあそこに行くか。この世界に来てからは一度も行ってないけど。


「ふふっ」


 特に理由はないけど小さく笑う。


『夜も今のまま晴れますように……』


 小さな願いを残し、俺は微睡みに身を任せた。




「魔王様、食後のお茶をお持ちしました……て、あれ?」


 魔王様の部屋にお茶をお持ちしたのに肝心の魔王様が居ません。

 何処へ行かれたのでしょうか。

 目の前に見慣れた紅が通り過ぎようとしていたので聞いてみる。


「あ、リファちゃん。魔王様を見掛けませんでしたか?」

「いや、見てないけど。……何かされたのか?」


 少し顔が怖いです。リファちゃん。


「いえ、お部屋に居ないので何処に行ったのかな、と」

「なんだ、そういうことか。とりあえずあたしは見てないけど見掛けたら連れてくるよ」


 そのまま歩を進めて去って行くリファちゃん。なんだって言った時の『ちっ』っていう顔は忘れませんよ。私をダシに魔王様を殴る――いえ、魔王様と戦うつもりだっていうのはバレバレです。


「……どうしたの?」


 思考がリファちゃん一色になりかけた所にクーロちゃんが話し掛けてきました。


「いえ、少し考え事を。それはそうと魔王様を見掛けませんでしたか?」

「……ううん、見てないよ」

「そうですか。では失礼します」


 探しに行こうと踵を返すと裾を引っ張られた。


「……待って。ボクも付いていく。……一人より二人の方が見つけやすい……と思う」


 確かにそれには同意します。


「では一緒に探しましょうか、クーロちゃん」

「……うん」


 新しい仲間が増えた。


 クーロちゃんと探すこと十数分。未だに手掛かりすら見つけられないでいた。


「……ねぇ、ティアちゃん」

「何ですか?」

「……アルに聞くのはどうかな?」

「アルさんですか……」


 確かに今まですれ違った人に聞くのと近くの部屋を片っ端から探していましたけど……。


「……アルなら本人が知らなくても黒水晶を使ってもらえば見つけれると思う」


 成る程。アルさん本人の情報より、魔法をアテにするんですか……。思い付きませんでした。


「では、アルさんに聞きに行きましょうか」

「……うん」


 アルさんの部屋を目指して歩き出す。一応、すれ違った人に聞き、近くの部屋をひとつひとつ調べながら。


 魔王様、何処に居るんですか?

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