その23:お悩み魔王様
微かな明るさが包んでいる部屋で、俺は光と居た。
一本の蝋燭が唯一の光源で、その灯りは頼り無いものだが、小さなこの部屋では十分と言える明るさだ。
さぁ、本題に入ろうか。
「なぁ、光。俺さ、最近自分の存在意義が分からなくなってきたんだけど、どうしたらいいのかな?」
剣技も魔法も特化してる奴がそれぞれいるし、両方出来ると言っても俺より上の奴が現れたし。
しかも遥か昔だが魔王だったらしいし。
俺の居場所無くね? コレはアレか? 俺に死ねっつてんのか?
「大丈夫だよ、お兄ちゃん! お兄ちゃんには『お兄ちゃん』って居場所があるから」
…………何て言うかな、その、あ~……えっと、うん、何でだろうな。素直に喜べない。
光の考えてることが、顔を見ただけで解ってしまって喜べない。
居場所が無いと悩んでるお兄ちゃんに『お兄ちゃん』という居場所を教えて、そのまま妹萌えにして、依存するように仕向けてやる。
って顔にでてるんスけど……。しかも、
依存するようになったらあんなことやこんなことを……ダメッ、お兄ちゃん! そんなことまでっ!! ってなるように…………エヘヘ。
……遠い地に居る父さん、母さん。どうやら私達は娘(妹)の育て方を間違えてしまったようです。更に残念なことに、真っ当な人間への矯正も無理な様子です。
父さん、母さん。俺はどうしたらいいのでしょうか? 『存在意義が分からない』という悩みが、ちっぽけに感じるほどに悩んでいます。
私自身、そこまで光を甘やかした覚えは無いのですが……。
勉強は解き方を教える程度で、一度たりとも光の宿題をやったことはありません。その他のことも、光が本当に無理だと感じたときにたまに手を貸す程度の筈です。
それなのに何故、光は超絶なまでのブラコンになってしまったのでしょうか?
しかも変態になってしまっています。世間一般から見て、ついでに兄の贔屓目を入れても変態だと認識される程のレベルです。本人は、1日に数十回お兄ちゃんの匂いを嗅がないと死ぬ。と豪語しています。立派な変態さんです。
遠い地の父さん、母さん。そろそろ本格的に私の貞操の危機です。血の繋がった妹に犯されるのも時間の問題です。もう一度言います。
私はどうしたらいいのでしょうか?
……………………。
さて、腹も減ってきたことだし、晩飯を食いに行くか……。
俺は逃げる様にして、光に気取られないように部屋を出た。
今日のおかずはなんだろな~♪ っと。