その19:同族同族〜
「倒したか……」
玉座に座り、黒水晶を見て呟く。
「まぁ、アレぐらいは倒してくれないとな。」
魔法で無理矢理言うことを聞かせていたから本来の力は出ていなかった訳だし。
……それにしても最後の技……アレは気を付けないとな。あの威力は我でも危ないからな。
「んー、んー」
音源に目を向ける。
「そうかそうか、そんなに構って欲しいのか」
音源に歩み寄る。
しゃがんで目線を合わせ、何かを訴えている眼を見つめる。
「成る程。それほどまでに笑いたいのか」
はっはっは、と笑いながらがら空きの脇腹に手を伸ばす。んー! んー! って聞こえるけど無視だ。何を訴えているかは容易に判るが今はそれをする訳にはいかない。
「んー! んー!」
隣も五月蝿いな……
そこまで構って欲しいのだな。やれやれ、人気者は辛いな……
片手をお隣の無防備な脇腹に手を伸ばす。
フハハハハ! 楽しいな!
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」
キッツー……いやマジで。大広間から四階に来るまでにエンカウントし過ぎだろ……
「はぁ……はぁ…………ふぅ」
呼吸が整ってきたな。
さて、後はこの部屋の中に居るボスを倒して終いだな。
「よし、行くか!」
勢いよく扉を開ける。
が、誰も居なかった。
「はい?」
え? 居ないの? あれ〜? 俺って魔王部屋でヤられたんだよな? あるぇ〜?
真剣に首を傾げた。
魔王部屋じゃないなら何処だよ?
ウンウン唸りながら魔王部屋を後にした。
廊下を歩いているとふとあることを思い出した。
「そう言えば同族って言ってたな」
同族から考えていけば何処に居るのか判るんじゃ……?
んー、同族、ねぇ。……もしかして俺の前の魔王とか……はないな。前魔王なら俺は必要じゃない筈だしな。
じゃあ……俺と同じ異世界人……もさっきと同じ理由でないな。召喚するのは魔王にする為だしな。
んー? マジで何が同族なんだ?
あー、もう!! 面倒臭ぇー!
もっとシンプルに考えろ。城に攻め込んできた奴は何処に向かう? 玉座だろ!
取り敢えず玉座に行って、居なかったらその時はその時だ。
いや〜居てくれて助かったよ。居なかったら魔法で城ごとブッ飛ばすつもりだったし。それよりも……
「何してんだよ? テメェは。返答次第ではグッバイ胴体にするぞ?」
漸く俺に気付いたのか、ヤツはゆっくりと振り返った。
「何って擽ってる」
「オーケーオーケー。グッバイ胴体にはしないでやる、よ!」
床を蹴り間合いを詰め、横に切り払う。
「血気盛んだな、同族」
「だから同族って何なんだよ!」
簡単にかわして距離をとったボス男くん(仮)に問い掛ける。
「なに、そのままの意味だよ。我と君は同じなのだよ」
だから意味解んねぇよ!