その17:廊下での戦闘
「よくあるよな、兵士達が敵になることって」
そう呟きながら前から押し寄せてくる兵士達を見た。
「でも流石にこの数は多いだろ……」
軽く呆れつつ、刀の切っ先を後ろの床に触れさせる。
この城の兵士だし、多くの奴等と話をするようになったから余り使いたくないんだけどな……。しょうがないか。
「我刀戦技・走火!」
切っ先を床に擦りながら一気に刀を振り上げる。
切っ先が通過した場所から火が点き、刀を振った時の風圧でそのまま前に居る兵士達目掛けて伸びていった。
直撃したヤツ、かすったヤツ、避けたヤツ、範囲外に居たヤツと様々だが全員が床を走る火を見て怯み、俺はその隙に兵士達の間を走り抜けた。
「はぁ……」
嫌だなぁ。知り合いに使うのも嫌だけど、何よりアイツに知られるのは嫌だなぁ。だって俺の事を何らかの手段で知った訳だしさ、多分、同じ手段で走火も知られた訳だろ? ズリーよ。俺は知らないのによ。
なんてことをグチグチと思いながら進んでいくと、小さい影が前方に確認できた。
うん、嫌な予感しかしないんだけどさ。
影の正体が見える前に無数の水の弾が飛んできた。
「くっ!」
避けつつ幾つかの水弾を斬っていく。だが、一向に弾が減る気配がない。
「ちっ!!」
舌打ちをして一度廊下の角まで退く。こういうときの嫌な予感って全人類共通で当たるよな。
やっぱり魔法ってエグいな。何あの強さ? さっきの兵士達よりやりにくいんですけど。攻撃のモーションすらとれない。一体俺はどうしたらいいの?
なんて考えた所で何も変わりやしない。
「あー!! もう!」
ノーダメージで通ろうとするのは諦めるしかないな。
ボス男くん(仮)の処まで辿り着いた時、回復させてくれると嬉しいけどな。まぁ、有り得ないけどな。
腹を括りもう一度水弾が飛びまくっている廊下に出る。
半身になり、刀を水平にしながら腕を矢を引き絞るかのように限界ギリギリまで後ろに引く。
その間にも水弾は幾つも俺に中り、衝撃とダメージが俺を襲うが、体制を崩さないように踏ん張り、痛みに耐える。
「我刀戦技・弾風!」
勢いよく刀を前に突き出す。刀身が空気の塊を高速で前方に撃ち出した。
数瞬後、無数の水弾はパタリと止んだ。
俺は急いで駆け出し、前で倒れている人物に近づいた。
大丈夫か? と声を掛けようとしたが、気を失っているらしく、声を掛けずに怪我が無いか簡単に調べた。
「よかった……」
大した怪我は無く、弾風も痣になっていなかった。…………まぁ、何処に中ったかは判らないけど。
「ごめんな」
聞こえていないと解っているが耳元で呟き、廊下の隅に寝転がした。
「先を急ぐか……」
また兵士達に追われたくないからな……
ごめんな、クー。コレ終わったら何か一つ言うこと聞くから。今は放置することを赦してくれ。
俺はその場を後にした。