その16:気が付けば……
「……ん」
目を覚ます。
立ち上がり、周囲を確認する。
「んん?」
何処だ? 此処は。何か牢屋っぽい感じがするけど。
「う〜ん……」
脳をフル稼働させて記憶を辿っていく。
え〜っと……朝起きて……ってそこは要らんな。てことはクシャミして、言葉の暴力を受けた仕返しにちょっとお仕置きして、腹が減ったから食堂に行って昼飯食って、部屋に戻るときに四人とすれ違って、「あぁ、簀巻きから解放されたんだ」って他人事の様に思って、部屋で一息入れて………………あ、そうか。そこでアイツが来たんだったな。「よう、同族。来てやったぜ」って。その後、俺が言葉を返す前に何らかの魔法で意識を奪われたんだったな。
あ〜、そうだった。そうだった。
さて、疑問も解決したことだし、行きますか。アイツの処へ。
「あぁ、ヤバイな。テンションが揚がってきてる。俺」
無意識の内に呟く。
「とりあえずはこの牢屋から出ないとな。」
右手で魔力の塊を放つ。
豪快な音とは裏腹に、扉は全くの無傷で少しカチンときた。
クソが! ……こうなったらアレを使うか。
魔力を指先に集めて陣を宙に描く。
「イイヤツ出てくれよ〜」
右手の前に掌より少し大きな黒い穴が現れた。
俺は躊躇い無く左手を穴に突っ込んだ。
「ん〜……」
コレか? いや、コッチか? コイツか?
左手で色々なモノに触れながら目当てのモノを探っていく。
「おっ!?」
コイツじゃないのか? 左手にいい感じの触り心地のするモノを捕らえ、ソレを一気に引き抜いた。
「おぉっ!? きたきたきたぁ!!」
黒い穴から出てきたのは漆黒の刀身の刀だった。
鞘が無いのは残念だが、まぁ、いいか。
「今日の俺はツイてるな」
今の魔法は“ブラックウェポンズ”と言って、黒い穴の中に在る様々な武器を取り出す魔法だ。因みにこの魔法で取り出した武器はこの世界に在る限り、取り出した者の魔力を少しずつ吸収していくのだ。まぁ、解りやすく言えば維持コストだな。
さて、武器を手に入れたし、さっさと親玉に会いに行くか。
ついでに俺の力量も計れるだろうしな。………………それによって魔王をこれからもやっていくのか、辞めてこの世界を旅してみるかを決める判断の材料になるしな。
「待ってろよ、…………アイツの名前何だっけ? てか、その前に名前聞いてないじゃねーかよ。あー面倒臭いから『ボス男くん(仮)』にする。待ってろよ、ボス男くん(仮)! …………あ、やっぱヤバい。滅茶苦茶テンション揚がってきてる」
牢屋の扉を切り落として牢屋を後にした。